デキる人ってどういうこと?具体と抽象を使いこなそう

デキる人の説明はなぜわかりやすい?

仕事がデキる人ほど、プレゼンにしろ、世間話にしろ、何事もわかりやすく説明してくれるものです。

「相手の立場になって解説できる」「論理的に整理して話している」など、要因はさまざまですが、総じていえるのは、具体的な話と、抽象的な説明の使い方が上手いこと。

ではどうすれば、具体と抽象の使い方が上手くなるのでしょうか。

ここではデキる人の頭の中で起きていることを分析したうえで、具体と抽象を使いこなすための3つのエクササイズを紹介します。

デキる人はこう考えている

●具体?抽象?

日常生活で「具体的」「抽象的」という言葉を使っていても、それぞれの意味を言葉で説明するとなると、思ったよりも難しいもの。

そこでまずは「具体的」「抽象的」の意味を簡単に整理してみましょう。

たとえば具体的な思考が得意な人は、目の前に困っている様子の部下がいると、すぐに声をかけます。

何に困っているのか、自分に何ができるのかをたずねて、その場でどんな対応をするべきかを判断していきます。

これに対して、抽象的な思考が得意な人は、部下の様子をじっくりと観察します。

何に困っているのか、自分は相手を助けるべきか、助けることによって成長のチャンスを奪ってしまわないか……といったことを考えてから、どう行動するべきかを判断しようとします。

●「いま、何をするのか」と「これから、どこへ向かうのか」

デキる人は、具体的な思考と、抽象な的思考を何度も行ったり来たりして、どんどん思考を深めていくことができます。

「いま、何をするのか」と「これから、どこへ向かうのか」という自問を絶えず続けているのです。

先ほどの「困っている部下」の例でいうと、デキる上司は、以下のような思考と行動のステップを踏んでいます。

まずは「困っている部下を助けたい」という、「いま、何をするのか」を考えます。

しかしここでいきなり行動に移すのではなく、「ちょっと待てよ。これから彼が一人前になるには、すぐに助けていてはダメだぞ」と「これから、どこへ向かうのか」を考える。

わかりやすくするために単純な例をあげました。デキる人は、もっと複雑な状況でも、「いま、何をするのか」「これから、どこへ向かうのか」を繰り返し考えています。

的確に問題へ対応できたり、部下や上司にわかりやすく説明できたりするのは、こうやって具体的な思考と抽象的な思考を繰り返して、状況を整理しているからなのです。

具体⇔抽象の思考力は「肩書きシフト」で鍛える

しかしこれまで仕事のなかで具体的な思考=「いま、何をするのか」と、抽象的な思考=「これから、どこへ向かうのか」を意識してこなかった人にとって、デキる人をいきなり真似するのは難しいでしょう。

そこでおすすめの思考エクササイズが「肩書きシフト」。つまり、視点をいろいろな肩書きの人にシフトさせてみるのです。

自分が平社員なら係長、課長、部長、取締役、社長、会長でもかまいません。

営業部長、総務部長、人事部長、製造部長と部門をシフトさせてもいいでしょう。部下や後輩、同僚でもOKです。

たとえば自分の部下が客先とトラブルを起こしたとしましょう。このとき、部下・自分・直属の上司・経営者クラスで考えることはまったく違います。

立場が上の人ほど「これから、どこへ向かうのか」について考えます。逆に現場に近い人間ほど「いま、何をするのか」に一生懸命向き合います。

この場合なら部下は自分が起こしたトラブルへ必死に対応しようとするでしょうが、直属の上司は「彼の成長には必要な失敗だった」と考えるかもしれません。

経営者クラスになると「1年後、3年後の経営には何の影響もない」と考える可能性もあります。

同じ問題でも、具体レベル・抽象レベル(=立場)を変えるだけで見えてくる世界は大きく変わります。

こうした体験を積み重ねていくことで、具体的な思考と抽象的な思考を繰り返す力が鍛えられるのです。

また「肩書きシフト」には別のメリットもあります。

エクササイズを通じて上司や部下が考えていることを理解できるようになるので、コミュニケーションもスムーズになり、仕事もしやすくなるのです。

上司に評価されるような仕事、部下に慕われるような言動や、どんなふうに説明すれば理解してもらえるかもわかるようになります。そうなれば周りからの評価も「デキる人」になっていくはず。

肩書きシフトは、まさに一石で二鳥も三鳥も得られる思考トレーニングなのです。

思考力を鍛えれば「デキる人」になれる

デキる人の頭の中では、絶えず具体的な思考と抽象的な思考が交互に行われています。

慣れない人にとっては何が具体的で何が抽象的なのかといった判断は難しいかもしれませんが、「肩書きシフト」を日常的に繰り返していけば、少しずつ身についてくるものです。

特に意識しなくても「いま、何をするのか」「これから、どこへ向かうのか」を考えられるようになれば、考えていることを周りに理解してもらえるようなるだけでなく、より組織に評価される仕事ができるようになったり、部下から慕われるようになったりと、その効果を実感できるようになるはずです。

まずは騙されたと思って、自分の部下・上司の視点で仕事を考え直してみてください。

Career Supli
意識するとうまくできるようになります。試してみてください。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部