Contents
- リベラルアーツとは「自分の頭で考えるための技術」
- リベラル・アーツを学ぶために読むべき15冊
- 1. 『人生を面白くする 本物の教養』
- 2. 『池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇』
- 3. 『大人になるためのリベラルアーツ: 思考演習12題』
- 4. 『新編・おらんだ正月』
- 5. 『アースダイバー』
- 6. 『生物と無生物のあいだ』
- 7. 『「いき」の構造 他二篇』
- 8. 『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』
- 9. 『ロンリのちから: 「読み解く・伝える・議論する」論理と思考のレッスン』
- 10. 『論理思考力をきたえる「読む技術」』
- 11. 『ソクラテスの弁明・クリトン』
- 12. 『日本という方法―おもかげ・うつろいの文化』
- 13. 『これからの正義の話をしよう』
- 14. 『反哲学入門』
- 15. 『漱石文明論集』
- リベラルアーツを手に入れろ
リベラルアーツとは「自分の頭で考えるための技術」
近年、企業研修でリベラルアーツ研修を実施したり、「ビジネスパーソンにリベラルアーツは必要不可欠」と言われることもあるほど、リベラルアーツは重要視されています。
リベラルアーツ(日本語訳は「教養」)は言語系3学(文法・論理・修辞)と数学系4学(算術・幾何・天文・音楽)の「自由7科」で構成されますが、元来の意味は「人間を良い意味で束縛から解放する知識」「生きるための力を身につける手法」です。ここではこのリベラルアーツを「自分の頭で考えるための技術」と位置づけ、これを学ぶために読むべき15冊の本を紹介します。
リベラル・アーツを学ぶために読むべき15冊
1. 『人生を面白くする 本物の教養』
著者:出口治明
画像出典:Amazon
ライフネット生命の設立者であり、無類の読書家として知られる著者が「教養」についての考え方や身につけ方を説いた一冊です。本書で出口氏は教養を「人生における面白いことを増やすためのツール」「グローバル化したビジネス社会を生き抜くための最強の武器」と位置づけ、その核として「広く、ある程度深い知識」と「腑に落ちるまで考え抜く力」を挙げています。リベラルアーツの入門書として読むことができる良書です。
2. 『池上彰の教養のススメ 東京工業大学リベラルアーツセンター篇』
著者:池上彰
画像出典:Amazon
このうえないわかりやすい解説力に定評のある著者が、同僚である東工大の教諭陣に聞く「教養の実践例」をまとめた一冊です。「哲学を使って公共事業の住民問題を解決する」「ナマコの生物学」を使って人間の定義を浮き彫りにする」などリベラルアーツがどのように実社会に役立つのかを目の当たりにすることができます。池上氏のわかりやすい解説のおかげで、リベラルアーツの面白さが実感できるはず。
3. 『大人になるためのリベラルアーツ: 思考演習12題』
著者:石井洋二郎・藤垣裕子
画像出典:Amazon
「コピペは不正か」「グローバル人材は本当に必要か」などの具体的な問題から、「芸術作品に客観的価値はあるか」「絶対に人を殺してはいけないか」などのきわめて哲学的な問題まで、全12題をもとに自分の頭で考えるトレーニングができる一冊。「そんなものに答えはない」とするのは簡単ですが、それをどこまで突き詰めて「腑に落ちるまで考え抜く」ことができるかが重要です。
4. 『新編・おらんだ正月』
著者:森銑三 編集:小出昌洋
画像出典:Amazon
ここから紹介する4冊は「科学的に思考するとはどういうことか」を学ぶためのテキストです。1冊目のこちらは江戸末期初期から末期にかけて活躍した伊能忠敬や平賀源内、高野長英などの医学本草家や探検家、発明家や思想家など50余名の伝記や逸話を集めたもの。
現代から見ればおよそ科学的とは言えない時代に、当時の教養人が持てる力をフル活用して諸問題を考え抜いた様子を描いています。もとは自動啓蒙雑誌「子供の科学」から依頼されて書かれたものなので、非常にわかりやすい文体も魅力です。
5. 『アースダイバー』
著者:中沢新一
画像出典:Amazon
気鋭の宗教人類学者・中沢新一氏が書いた「アースダイバーシリーズ」の第1作目。縄文時代の地図をもとにして現在の東京を分析する「アースダイバー」という手法を実践した一冊です。
「なぜ銀座と新橋はひとつながりの場所にあるのか」「どうして渋谷や秋葉原はこんなにラジカルな人間性の変容を許容するような街に成長してしまったのか」などがテーマとなっています。現代に残されたものを手掛かりに、「歴史学」や「地学」だけでは解き明かせない謎をアースダイバーという手法で分析していく著者の姿勢は、まさにリベラルアーツの実践者と言えるでしょう。
6. 『生物と無生物のあいだ』
著者:福岡伸一
画像出典:Amazon
「生命とは何か」という生命科学最大の問い。それを分子生物学の見地から、数々の天才科学者の思考とともに探った一冊です。生命の定義を探るために、慎重に研究を重ねる科学者たちの姿勢からは「科学の手法とは何か」を学ぶことができます。
学術系の内容でも面白く読ませる作品が多く選ばれる第29回サントリー学芸賞「社会・風俗部門」を受賞するほどの名著なので、非常に面白く、わかりやすく読めるのも大きな魅力。「科学ってあれでしょ?実験とかするんでしょ?」程度の認識しかない人は必ず読むべき本です。
7. 『「いき」の構造 他二篇』
著者:九鬼周造
画像出典:Amazon
日本独自の美の概念「いき(粋)」。この「なんとも言えない」概念をどうにか定義づけようとしたチャレンジ精神溢れる論考「『いき』の構造」ほか、「風流に関する一考察」「情緒の系図」の二篇を収録した一冊です。
答えがない問いに答えを見つけるための手法がリベラルアーツだとすれば、著者が1930年に書いたこれらの論考はまさにリベラルアーツの実例と言えるでしょう。同じ著者の本では『偶然性の問題』などもリベラルアーツの実例と言えますが、本書は1つ1つが短く、とっつきやすいのが魅力です。
8. 『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』
著者:細谷功
画像出典:Amazon
ここから紹介する4冊は科学的思考について考えるここまでの4冊に対して「論理的に思考するとはどういうことか」を学ぶためのテキストです。1冊目は東芝で約8年間原子力技術者として働いた後、ビジネスコンサルタントとして活躍する著者が書いた「具体と抽象の往復思考」についての本。
具体的に考えることと抽象的に考えることの間にはどんな違いがあり、どう使うべきかを、気鋭の漫画家・一秒による四コマ漫画つきで解説しています。「話がぼんやりしすぎて何を言っているかわからない」「もっとレベルの高い話をしよう」と言われる人は必読です。
9. 『ロンリのちから: 「読み解く・伝える・議論する」論理と思考のレッスン』
著者:NHK『ロンリのちから』制作班 監修:野矢茂樹
画像出典:
Amazon
NHK・Eテレ『高校講座』人気番組を書籍化したもので、ドラマ仕立てで論理の仕組みを学べるようになっています。取り上げられているのは「三段論法」「接続表現」「否定」などの基本的なもの。
しかしこれらの基本を理解していなければどんな知識もリベラルアーツにはなり得ません。「どう読むべきか」「どう伝えるべきか」「どう議論するべきか」そして「どう考えるべきか」を知るうえで読んでおくべきロジカルシンキング超入門書です。
10. 『論理思考力をきたえる「読む技術」』
著書:出口汪
画像出典:Amazon
元「代々木ゼミナール」及び「東進ハイスクール」のカリスマ国語講師であり、教材開発・出版を目的とした「水王社」の会長を務める著者が書いた、論理力を読書に役立てるためのポイントをまとめた本です。論理の基本を「イコール」「対立」「因果」の3つの関係に絞り込み、それをもとに文章を読む方法が学べます。これからリベラルアーツをより深く学んでいくためにも、読んでおきたい一冊。
11. 『ソクラテスの弁明・クリトン』
著者:プラトン
画像出典:Amazon
池上彰氏の前掲書でも登場する東工大大学院社会理工学研究科教授・桑子敏雄氏が東京工業大学リベラルアーツセンターの読書ナビでおすすめしている一冊。
哲人プラトンの最初期の作品であり、最初の哲学者ソクラテスが「よりよく生きるとは」という問いについて、徹底して論理的に考える様子を描いた作品です。対話編なので哲学の読み物としては読みやすく、論理の筋道を追うのにも適したテキストと言えます。
12. 『日本という方法―おもかげ・うつろいの文化』
著者:松岡正剛
画像出典:Amazon
出版社「工作舎」の設立者であり、現在は編集を社会に適用できる技術として構造化した「編集工学」を研究する編集工学研究所を主宰する著者による日本論。日記や短歌、連歌などの文芸だけでなく、政治・経済システムや建築など様々な分野に根付く「日本的編集方法」を掘り起こそうとした一冊です。
テーマやコンセプトが方法を作るのではなく、方法がテーマやコンセプトを作るとする考え方が刺激的なのはもちろん、「日本とはどんな国か」を自分の頭で考え直すにはぴったりの内容となっています。
13. 『これからの正義の話をしよう』
著者:マイケル・サンデル 訳者:鬼澤忍
画像出典:Amazon
『ハーバード白熱教室』で話題になった一冊です。哲学史上に登場する様々な「○○主義」の考え方を具体的な例を使いながら学ぶことができると同時に、「1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 」などドキリとするような問いを自分で考えることで、リベラルアーツの真髄を体験することもできます。
1つの物事を複数の価値観で考えられるようになる本です。ハードカバーのほか、文庫版も出ています。
14. 『反哲学入門』
著者:木田元
画像出典:Amazon
2014年に惜しくも没した哲学者・木田元氏によるニーチェを哲学のターニングポイントに据えた哲学入門書。プラトンやアリストテレス、デカルトやカントなどの哲学の流れを断ち切ろうとしたニーチェの試みと、それを受け継いだハイデガーの哲学について、非常にわかりやすい文章で書かれています。
それもそのはず、本書は哲学とは縁遠い若い女性編集者に語った録音を書き起こしたものなのです。プラトン以降の既存の哲学を覆したニーチェの方法は、リベラルアーツの見事な実践例として読むことができます。
15. 『漱石文明論集』
著者:夏目漱石 編集:三好行雄
画像出典:Amazon
小説家としてあまりにも有名な漱石は、実は一流の文明論者でもありました。近代化著しい明治の日本を冷静に分析する漱石の視線は、漱石没後の戦争や高度経済成長、バブル崩壊などの日本史を見透かしています。
日本近代が誇る「教養の人」がいかに国家を見ていたのかを知ることができます。グローバル化がどんどん進む現代において、「国」「個人」を考えるために読んでおきたい一冊です。
リベラルアーツを手に入れろ
「自分の頭で考えるための技術」はリベラルアーツ、つまり教養を手に入れなければ身につきません。そしていくらビジネスで成功しても、そこにリベラルアーツがなければ必ず腐敗していきます。読書は他の方法よりもコストもかからず、時間もかからない、最良のリベラルアーツ習得法です。ぜひここで挙げた15冊の中から気になるものを選んで読んでみてください。
[文・編集]サムライト編集部