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ITコンサルには「事業会社に戻りたい」という人も多い
IT業界で働く人のなかには「ITコンサル」に憧れを抱いている人も多いのではないでしょうか。
しかし実際に新卒でITコンサルファームに就職した人たちや、エンジニアからITコンサルにジョブチェンジした人のうち、「事業会社でしかできないことがある」「事業会社に戻りたい」と言う人も少なくありません。
これはいったいなぜなのでしょうか。ここではITコンサルの仕事内容、その醍醐味を踏まえたうえで、「ITコンサルはやりがいがある」の落とし穴について考えます。
ITコンサルの仕事とは?

ITコンサルの仕事をひとことで表現するとすれば、「ITにまつわる問題発見から問題解決まで」と言えます。
このうち、現場で手を動かす職階(アソシエイト、コンサルタントなど)では、クライアントの現場の人たちにヒアリングをしたり、上司(クライアント)からの指示をもとにエクセルやパワーポイントの資料を作成したりといった仕事がメインになります。
これに対して、マネージャークラスになると、クライアントの経営者やIT統括責任者などと直接やりとりをしたり、チームメンバーが作成した資料をもとにプレゼンをしたり、集められた情報から総合的に判断して、ソリューションの方針を決めたりすることが仕事になります。
企業が抱える課題に対して、最適なシステムを提供するのがITエンジニアの仕事だとすれば、企業が抱える課題を見極め、最適なシステムとは何かを定義づけるのがITコンサルの最も重要な仕事です。
ITコンサルの醍醐味は「経営=本来の課題との近さ」
ではITコンサルという仕事の醍醐味はどこにあるのかと言えば、それは「経営=本来の課題との近さ」でしょう。
多くの場合、ITエンジニアはクライアントの経営とはかなり遠いところにいます。そのため企業の本来の課題設定が不明確だったり、的外れだったりすれば、結局あとから仕様変更が入る、せっかく作ったのに現場では使ってもらえない、といった問題が発生するわけです。
しかしITエンジニアが課題設定の部分まで入り込めるケースは稀なので、こうした問題はなかなか解消されません。
一方でITコンサルになれば、企業が抱える課題の洗い出し段階から関わることができます。だからITコンサルの仕事の方が、クライアントに対してインパクトの大きなソリューションを提供できるので、「役に立っている」という実感を得やすいのです。
たとえるとすれば、船の底に穴が開いて海水が流れ込んできたとき、「最適な排水方法」を考えるのがエンジニア、「最適な穴の閉じ方」を考えるのがITコンサル。後者の方が、圧倒的に本来の課題と近い場所にいるのです。
船=企業に与えるインパクトの大きさは、比べるまでもないでしょう。
「ITコンサルはやりがいがある」の落とし穴

このように考えてみると、ITコンサルは明らかに「やりがいがある仕事」です。ところが冒頭で触れたように、ITコンサルになった後、「事業会社でしかできないことがある」「事業会社に戻りたい」という人はけっこう多いのは事実です。
原因はITコンサルのビジネスモデルそのものにあります。というのも、ITコンサルがクライアントから請け負うプロジェクトの大半は、短ければ1ヵ月、長くても半年程度で終わってしまいます。
ITコンサルの役割はプロダクトやサービス、あるいは社内システムの「改善」がメイン。ゼロからアイデアを捻り出すような案件は稀で、ましてやローンチ後も売上責任を持ってサービス終了まで見届けられるようなプロジェクトはほぼありません。
もちろんITを使った問題解決そのものを楽しめる人なら、これ以上ないやりがいのある仕事です。
しかしプロダクトやサービスについて試行錯誤を繰り返しながら作り上げていくプロセスや、そこから利益を出して成長させていくような仕事にやりがいを感じるような人の場合、事業会社での仕事の方がより楽しめるはずです。
今漠然とITコンサルの仕事に憧れている人は、この「落とし穴」の存在をあらかじめ理解したうえで判断することをおすすめします。
キャリアプランに基づいた慎重な選択を
ITコンサルというキャリアを選択するのであれば、自分がどんな仕事にやりがいを感じるのかを考えるのも大切ですが、キャリアプランに基づいて判断するのも一つの方法です。
事実、「事業会社のより経営に近いところでITの知見を発揮したい」というビジョンのもと、一度ITコンサルとして上流工程に関わったあとで、経営企画として事業会社に戻る人もいます。
あるいはITと経営の知見を組み合わせたキャリアを築きたいのであれば、必ずしもITコンサルになる必要はありません。
例えばMBAを取得して経営に関する知見を蓄える、という選択肢もあるからです。今勤めている会社でMBA留学制度などがあるのであれば、それを活用するのも手です。
激務に耐える自信があるのなら、スタートアップ企業に参画するのも立派な選択肢。スタートアップは人手が足りないので、ITエンジニアとしてだけでなく、ほかのメンバーと一緒に経営上の意思決定に関わる機会もあるはずです。
キャリアのゴールへの道は一つではありません。自分のゴールに到達するためにどうしてもITコンサルへのジョブチェンジが必要なら仕方ありませんが、別にも手段がないかどうかは事前にきちんと確認しておきましょう。
あなたは何を成し遂げたいか?

22歳から65歳まで働くとして、仕事人生は43年間もあります。今後健康寿命が伸びていくと定年は70歳、75歳とズレていき、仕事人生はもっと長くなるでしょう。
この長い時間のなかで、あなたは何を成し遂げたいでしょうか?それが明確になれば、次自分がどんなキャリア選択をするべきかがきっと見えてくるはずです。
転職が一般化し始めているとはいえ、まだまだ日本では転職はリスキーです。
なんとなくで行動せず、じっくりゆっくり考えたうえで、ITコンサルへのジョブチェンジが自分にとって本当にベストの選択なのかを判断しましょう。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部