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“政治”を知ることは、会社を知ること
毎日を忙しく過ごしていると、つい日本や世界の動向を知らないまま過ごす日々が続いてしまっていませんか?今の政治や経済を知らなくても、生きていける!確かにそうかもしれません。
けれど、社会を知り、今がどのような時代なのか知ることは、自分が今いる状況や、会社の動向を知ることにもつながるのです。
「会社は政治の縮図である」と言います。「社内政治」という言葉があるように、社内の政治を制する者は出世すると言われています。では、どのように社内の政治を読み解けばよいのでしょうか。
それは、「今、会社がどう動いているのか」を気にするのではなく、「誰が、どういう目的で動かしているのか」を見ることです。それはまさに、日本あるいは世界の“時代を見る目”と同じです。
あなたは、会社を見る目=時代を見る目、鍛えていますか?今回は、時代を読み解くポイントを三浦瑠璃さんを例に挙げて解説します。
鮮やかに時代を読み解いた、三浦瑠璃さんの心得
国際政治学者の三浦瑠璃さんは、2016年のアメリカ大統領選挙の際に、多くの人がヒラリー氏優勢と述べている中で、トランプ氏の可能性を示唆し続けてきました。
投票5日前の11月4日収録のテレビ番組「橋下×羽鳥の番組」にて「トランプの可能性は全然捨てきれない。開けてびっくりの可能性はある。隠れトランプは相当いる」と発言されていました。
三浦瑠璃さんは、多くの人が反対意見を投じるなか、なぜ自分の意見を貫き通し、予期することができたのか。それは、次の3つの点に特化して時代を読み解くことができたからだと考えられます。
1.自分の頭で考えるために、広く情報を集める
三浦さんは、自身の公式メールマガジンの冒頭で、以下のように述べています。
政治の世界には、元々「正解」なんてありません。思想があって、利害があって、思い込みがある。自分で考えるためには、多くの情報と視点に触れる以外にないのです。
引用:メールマガジンMessage「三浦瑠璃の自分で考えるための政治の話」
政治の世界に答えはなく、誰かが正しい答えを導いてくれるわけでもなく、あくまで予測にしか過ぎません。それをより正確に判断するためには、あらゆる情報をあらゆる視点から触れる必要があります。
では、広く情報を集めるとは、どういうことなのか。その一例を三浦さんが著書『国民国家のリアリズム』のなかで挙げています。現在、日本人の多くがIS(イスラム国)に対して恐怖感を抱いています。
ニュースや新聞などでは、こぞってイスラム過激主義と先進各国の対立だと報じていますが、歴史を遡ってみれば、それがかつての戦間期における共産主義者や無政府主義者に対する恐怖感と酷似していることがわかります。
つまり、過去の人類の歴史を遡ることで、現在、多くの人がISに対して抱いている恐怖心とは、「国家を破壊するものに対する恐怖」と考えられます。
社会的歴史観は広く持つこと。そのために歴史を紐解き、国をまたぎ、故人の本を読み解く必要があります。
2.政治も時代もクロ・シロで判断しない。グレーが当たり前
正しいか、正しくないか。価値があるか否か。儲かるか否か。そのような判断基準で物事を判断すると一面性に囚われてしまいがちです。
「政治という営みは、背景や利害が異なる集団の間に成立するものであり、言ってみれば、いくつもの矛盾を背負いこんでいるものです。(…)政策というものは、それが白に近いか黒に近いかというグラデーションはあるものの、常にグレーです。」
引用:『国家の矛盾』p.17
政治でも会社でも、価値があるかという問題も、利益があるかという問題も、どちらかではなく両方を捉えて考える必要があります。
そう考えると、ふだん政治家たちが議論している政策も、社内で「一体何の意味があるのか」と疑問だった方針も、新たな面が出てくるのではないでしょうか。そのグレーも常に変化します。
数十年前と比べて、都会も田舎も大きく変わったことは一目瞭然。過去に日本を支えてくれたものが、今も日本を支えてくれるとは限りません。
逆に言うと、今まで会社の大黒柱でなかったものが、突然会社を担うことだって、大いにありえます。
3.先読みをするためには、「軸」が必要
そして、時代を読み解くために最も必要なのが、時代のその一歩先を読み解くための「軸」を見つけることです。三浦さんはその「軸」について、次のように述べています。
先読みする上で、重要になるのが世界を見る「軸」を持つことだと思っています。(…)「時代観」とか、「世界観」と言い替えても良いかもしれません。この混沌とした世界で、日々いろんなことが起きるけれど、それぞれを解釈していく根っこにあるもの。答えめいたことを最初に申し上げると、今、私が重要だなと思っているのは「資本主義」というものとどのように向き合っていくかということです。
引用:メールマガジンMessage「三浦瑠璃の自分で考えるための政治の話」
「軸」とはつまり、自身が時代を読み解く際の世界観・時代観のことであり、根底にあるもの、と言うイメージです。
2002年には「戦争」が根底にありました。その時代は、9.11の同時多発テロが発生し、イラク戦争の開戦前夜。今ももちろん「戦争」が世界を覆っています。アメリカ、東アジア、さらには日本の外交・安保政策など、この観点から見るべきことはたくさんあります。
しかし、現在は「戦争」と同じくらい大切な軸が、「資本主義」だと言われています。「戦後」の1945年、戦後社会の「資本主義」は、復興を成し遂げるための仕組みでした。そして20世紀後半は、資本主義の時代と呼ばれるようになりました。
この「資本主義」は、日本社会もほとんどの国際社会にも当てはまり、さらに言えば、会社でも通じる軸でもあります。「戦争」「資本主義」など、軸を持って、物事を先読みする──それが、時代を読み解く力なのです。
現代をどう読み解くか?
では、今の時代をどのように見ればどのように見ているのでしょうか。
三浦さんは、『国民国家のリアリズム』という著書の中で、東日本大震災に見舞われときの日本政府の対応の失敗を見て、逆に希望が湧き上がってきたが、現在はそれがなくなってしまった、と述べています。
物的な被害が積み上がり、筆舌に尽くしがたい悲劇の状況が伝わってくる中で、不謹慎ながら、ある種の希望が確かに湧き上がっていました。こうして、この国は変われるかもしれないという。震災対応での国家の失敗には、たしかに戦時の日本国家の失敗との類似性がありました。(…)しかし(現在は)、2011年や2012年に存在した、切るような危機感はいまやどこにもありません。
(『国民国家のリアリズム』 p.238)
危機感があったからこそ乗り越えることができた、あるいは変わることができたというのは、きっと、会社でも当てはまることです。このような時代の読み方もあります。
時代を見ること、社会を見ること、会社を見ること。これは様々な「読み解く力」につながるもの方法と言えます。そのために必要な心得を今回紹介しました。より知りたいと思った方は、三浦さんのメールマガジン、著書などを手にとって見てください。
参考文献:高村正彦 三浦瑠璃『国家の矛盾』
三浦瑠璃 猪瀬直樹『国民国家のリアリズム』
三浦瑠璃『日本に絶望している人のための政治入門』
三浦瑠璃『「トランプ時代」の新世界秩序』
メールマガジン「三浦瑠璃の自分で考えるための政治の話」
