IT技術や働き方改革が進められる中で「Wワーク(ダブルワーク)」に取り組む人が増えています。この記事では、Wワークの概要から「副業」との違い、Wワークのメリットやデメリットを解説します。また、気を付けておきたい税金や保険のこと、Wワークにオススメの仕事についてもご紹介します。
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Wワークの概要
厚生労働省が中心となって働き方改革が進められている中で、近年増えてきているのが「Wワーク(ダブルワーク)」です。Wワークと掛け持ちの違いについて気になる方もいるかもしれませんが、Wワークとは、その名の通り、2つの仕事を掛け持ちすることです。
例として、日中はIT企業で働きながら、夜間は登録制のクラウドソーシングサービスで別の仕事をする、といった方法などが挙げられるでしょう。
Wワークは、新しい技術やスキル開発につながる他、起業やオープンイノベーションのきっかけにもなります。第2の人生に向けた準備としても有効な方法として厚生労働省も推奨しています。
Wワークと副業の違い
近年はよく「副業」という言葉も耳にするようになりました。Wワークも副業も、2つの仕事を持つことには変わりありませんが、仕事の持ち方という観点で、厳密には違いがあります。
副業とは、「副」という漢字からもわかるように、「本業のかたわら行う仕事」を指します。一方でWワークは、本業か副業かは関係なく、2つの仕事を掛け持ちすることです。
副業は本業ありきですが、Wワークはほぼ同じくらいの仕事量や給与で、どちらが本業かは区別できないときによく使われるのです。
なお、「兼業」もWワークとほぼ同じような意味で、3つ以上の仕事を掛け持ちしているようなときに使います。
Wワークとパラレルキャリアの違い
「パラレルキャリア」の「パラレル」とは「並行」のことで、本業の他に2つ目のキャリア(仕事)を同時に持つという意味があります。2つ目の仕事をすることで理想のキャリア形成を目指すといったニュアンスが強く、2つ目の仕事について、収入の有無は関係ありません。
正社員としてオフィスで働いている空き時間に、趣味で手芸小物を制作販売したり、ボランティア活動をしたりしているような例が該当します。
Wワークの現状調査
近年は副業だけでなく、複数の仕事を持つ「複業」も注目されています。複業は本業の片手間にするのではなく、本業を複数持っているというイメージが近いでしょう。
人財派遣、人財紹介、アウトソーシングなどの事業を展開しているアデコグループでは、2018年5月、全国の上場企業に勤務する30代から50代の管理職510名と、全国の企業もしくは団体に正社員として勤務する一般社員500名に「副業・複業に関する調査」を実施しました。
【参照元:Adecco Group|副業・複業に関する調査】
その結果、管理職では「勤務している会社は副業・複業を認めているか」という問いに対し、「認めていない」と回答した人が66%で、「認めている」と回答した23%を大幅に上回りました。しかし、「副業・複業を認めたほうがよいと思うかどうか」という質問では、84%が「認めたほうがいい」と回答したのです。
一般社員の調査でも、「これまでに副業・複業をしたことがあるか」という問いには76%が「過去も現在もしたことがない」と答えているものの、55%の人が「今後してみたい」と回答しました。
これらの結果から、現在の日本ではまだまだ副業・複業を許容する文化が根付いていないものの、単一の仕事に縛られず、新しいスキルを身に付けて収入を得たいといったニーズが多くあるとわかるでしょう。
Wワークのメリット
昨今、Wワークをする人が増えてきたのは、さまざまなメリットがあるからです。具体的にどのような点に魅力があるのでしょうか。
収入が増える
最も大きなメリットとしては、別の仕事を持ち、仕事量が増えることによる収入の増加です。早期に収入を増やしたいという場合、現在の定職ですぐに給与を上げられるとは限りません。そこでWワークとして、別の仕事に就くことで、手早く収入を増やそうとする人が多くいるのです。
キャリアアップにつながる
Wワークは収入だけではなく、新しい業務知識やスキルを身に付けられる機会とも捉えられます。さまざまな能力を習得し、人間関係も広がると、転職のチャンスを得られたり、起業や独立などのキャリアアップにもつながったりするでしょう。
同じ職種であっても、仕事を掛け持ちすることで、ある特定分野におけるスペシャリストとしてスキルを磨けるのも魅力です。
視野が広がり、多様な経験を積める
現実的に、自分の希望する仕事にスムーズに就くのはなかなか容易ではありません。しかし、Wワークとして自分のしたかった仕事にチャレンジできる機会があれば、モチベーションが上がり、キャリア形成にもよい影響を与えられます。
また、たとえ同じ仕事内容でも、会社によって社風や考え方、進め方も異なるためよい刺激となります。様々な職場環境に身を置くことで視野が広がり、多様な経験を積んでいけるでしょう。
Wワークのデメリット
メリットの多いWワークですが、どのようなデメリットが考えられるでしょうか。
スケジュールの管理が難しい
1日24時間のうち、仕事ができる時間は限られています。そのため、元の仕事に追加してWワークをすると、基本的に時間に余裕はなくなり、スケジュール管理が困難になります。
休日に家族で出かけたり、友達と会ってリフレッシュしていた時間も、新しい仕事をこなすのに当てなければならないかもしれません。
Wワークをはじめるときには、そうした覚悟もした上で、いくら収入が必要で、どのくらい働かなければならないのかをあらかじめシミュレーションしておくことが重要です。
本業とのバランスが難しい
先の調査で、「勤務している会社は副業・複業を認めているか」という問いに対し、「認めていない」が66%とご紹介しました。その理由として、Wワークのために労働時間が増え、本業でミスをしやすくなったり、おろそかになってしまったりすることが挙げられるでしょう。
Wワークが本業に悪影響を与えてしまえば本末転倒です。スキルの棚卸を行い、自分のこなせる量がどれだけなのか、できる範囲で取り組むことがとても重要なのです。
Wワークを行うときに知っておくべき知識
Wワークに取り組む前に確認しておきたい税金や保険、就業規則などの知識や注意点についてご紹介します。
税金の申告
毎年職場で年末調整をしている場合でも、Wワークでの年間所得が20万円を超えるのであれば会社員でも確定申告が必要になり、注意が必要です。年末調整は、あくまでその会社での収入を根拠にして行われており、Wワークの収入は反映されていないからです。
Wワークによる収入がある場合は、金額を正確に計算し、年末調整済みでも確定申告を行うかどうか判断するようにします。また、確定申告の結果、納付するべき税金があれば、期限内に支払いましょう。
なお、職場にWワークをしていることを知られたくない方もいるかもしれません。しかし所得税や住民税といった税金の額は、個人の年間所得によって変動します。そのため、たとえば従業員の住民税額が不自然だった場合、会社から副業による収入があるのではないかと疑われる可能性があります。
保険の加入
一定の勤務時間や収入を超えると、労働者は会社を通じて保険へ加入できるようになります。ここでいう保険とは、社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)と、労働保険(雇用保険・労災保険)のことです。
少子化による労働人口の減少に歯止めがかからないことから、以前から社会保険の適用範囲拡大が行われてきました。
2017年4月から社会保険に加入することになった短時間労働者の条件は以下の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 報酬の月額が88,000円以上
- 継続して1年以上の雇用見込みがあること
- 従業員数が501人以上の事業所であること
または、500人以下でも労使で合意されていること - 学生ではないこと
【参照元:厚生労働省|平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)】
なお、2022年10月には、「継続して1年以上の雇用見込み」が「継続して2か月を超えて雇用見込み」に、「501人以上の事業所」は「101人以上の事業所」に変更される予定です。さらに2024年10月には、「101人以上の事業所」が「51人以上の事業所」とされ、適用範囲が大幅に広がります。
Wワークをしている両方の職場で社会保険の適用条件を満たしてしまうと、どちらの職場で社会保険を申請するのかを選ぶ必要があります。雇用保険については、主たる賃金を受ける職場で加入します。労災保険については職務中のケガや病気に備えて全労働者の加入が義務付けられているため、どちらかの職場でのみ加入することはありません。
また、主たる事業所で20時間、他の事業所で10時間といった勤務の場合、社会保険と雇用保険は主たる事業所で加入することになります。ただし、週20時間に満たない短時間勤務のパートを掛け持ちするような場合は、いずれの事業所でも労災保険のみの加入になってしまうため、注意が必要です。
就業規則に抵触しないことの確認
副業・複業の可否は各社の判断に委ねられていますが、就業規則に違反してしまうと社内処分の対象になりえます。本業以外の仕事を検討するなら、職場の就業規則で、副業や複業についてどのように規定されているのかを必ず事前に確認しておく必要があるのです。
会社への届け出が必要なケースや、職務内容や労働時間などの条件を設けているケースもあります。自社のルールに照らし、業務内容や就業時間などに合った副業・複業を選択することが重要です。
Wワークに向いている仕事
世の中には数えきれないほどの仕事の種類があります。では、Wワークとして今の仕事と掛け持ちをする場合、どのような仕事が適しているのでしょうか。
クラウドソーシングのオフィスワーク
クラウドソーシングとは、仕事をしてもらいたい企業が、仕事をしたい人をインターネット上で探し、条件が合致した人へ発注する仕組みです。IT技術の発展やテレワークの普及といった背景から、近年、クラウドソーシングで仕事をする人が急速に増えています。
仕事内容はIT系やビジネス事務など幅広く、条件にマッチした人は比較的簡単に受注できるでしょう。在宅で完了できる仕事が多いため、子育てや介護といった事情を抱えていても空き時間で取り組みやすいのもポイントです。
シフト制の仕事
いわゆるシフト制は以前からある働き方で、基本的に出勤する日や時間帯が決まっていないのが特徴です。具体的には、1週間の中で出勤する曜日と時間帯が決められている「固定シフト制」と、希望する勤務日と勤務時間を会社へ伝え、希望を加味したシフトで働く「希望シフト制」の2種類があります。
固定シフト制は毎週スケジュールを提出する手間を省けたり、毎月安定した収入を得られたりするメリットがあります。ただし、決められた日・時間帯には勤務しなければなりません。希望シフト制は、より細かな希望に合わせて柔軟に働けるのはよい点ですが、職場の状況によってすべて叶えられるかはわかりません。
どちらの方法がより自分の希望に合った働き方なのかをよく吟味して選ぶようにしましょう。
単発・短時間の仕事
インターネットの普及や働き方改革が進む中で、「ギガワーク」といった新しい働き方も注目を浴びています。ギガワークとは、短時間だけ働き、継続的に雇用契約を結ばない働き方のことです。組織に属することなく、単発で好きなときに仕事ができるため、Wワークとして取り組みやすいでしょう。
たとえば家事代行サービスやイラスト作成、Web記事の作成、翻訳などが挙げられます。「今働いてほしい人」と「今仕事をしたい人」をインターネット上でマッチングできるプラットフォームサービスなどもあり、今後も利用が増えていくでしょう。
アフィリエイトなどの仕事
アフィリエイトとは、自分で立ち上げたWebサイトやブログの中に広告を貼り付け、読者がその広告をクリックしたり、リンク先の商品やサービスを購入・利用したりした際に報酬を得られる仕組みです。
今は個人でもインターネットやPCなどのデバイスを使って、ブログやWebサイトを簡単に立ち上げられる時代です。そうした環境の整備面から、企業側も新たな広告宣伝手法として注目するようになりました。
作業は比較的容易で、一度貼り付ければその後は基本的に何もしなくてよいため、すき間時間のWワークに適しています。時間や場所に縛られず、自分のペースで稼ぎたい人は、アフィリエイトもWワークの一候補として検討してみるとよいでしょう。
まとめ
Wワークは収入が増えるだけではなく視野が広がり、キャリアアップも望める、新しい働き方です。
ただ、本業とのバランスが難しく、税金や保険、就業規則などの問題をクリアする必要もあります。Wワークで稼ぐ方法もありますが、本業が自分の希望に合っているのかを見直し、より年収の高い企業に転職する方法も選択肢としてあります。
どの方法が適しているのか気になる方は、一度コンサルタントに相談してみてもよいでしょう。
[文]CareerSupli編集部 [編集]CareerSupli編集部