嘘をつかない人になる方法 信頼関係を築くには正直に生きよう

信じ、信じられると毎日は楽しくなる

同僚や上司、取引先との信頼関係が生まれると、仕事の時間が楽しくなり、ビジネスもうまくいきやすくなります。友人や恋人、家族との信頼関係があれば、仕事で多少嫌なことがあっても毎日が楽しくなります。

ではどうすれば、周りの人たちとの信頼関係を作ることができるのでしょうか。実はそのための方法はたった一つしかありません。すなわち「嘘をつかないこと」です。

「でも嘘も方便という言葉があるように、ときには嘘も必要ではないのか」と思う人もいるかもしれません。しかし信頼関係を作る、という目標を達成するためには、たとえそれが方便としての嘘でもつくべきではないのです。

ここでは嘘が人間関係にもたらす影響と、どうすれば嘘をつかないでいられるかについて、心理学の観点から解説します。

信頼を勝ち取るための方法は「嘘をつかない」

日本の社会心理学者であり、ロングセラー『信頼の構造 こころと社会の進化ゲーム』の著者でもある山岸俊男氏はほぼ日刊イトイ新聞での対談で、「他人から信頼してもらいたければ、嘘をつかなければいいだけ」と言い切っています。

非常にシンプルな答えですが、同時にシンプルだからこそ難しい答えでもあります。以下では「そもそも私たちは嘘をついているのか」というところから始め、なぜ人は嘘をつくのか、嘘は人間関係にどんな影響をもたらすのかを解説していきましょう。

●人は少なくとも1日1回嘘をつく

『嘘の心理学 (クロスロード・パーソナリティ・シリーズ)』によると、1990年代に行われた実験でも、2000年代前半に行われた実験でも、アメリカ人と日本人が対象となっているものに関しては、いずれも人間が1日で少なくとも1回以上嘘をついていることが明らかにされています。

これを読んでいる人のなかには「自分は1日1回も嘘なんてついていない」と言いたい人もいるかもしれません。しかし嘘にはいくつか種類があります。

第一に事実とは違うことを伝える嘘を指す「まったくの嘘」、第二に実際よりも大げさに伝えたり、逆に控えめに表現したりする嘘を指す「誇張表現・歌唱表現」、第三に意図的にミスリードを引き起こさせるような嘘を指す「巧妙な嘘」です。

こうして嘘の定義を広げて考えてみると、「自分が1日1回嘘をついている」という話にも納得がいくはずです。

●人間が嘘をつく理由

ではなぜ私たちは1日1回も嘘をつくのでしょうか。人間が嘘をつく理由に関してはこれまでの心理学の研究のなかでさまざまな分類が行われてきました。それらの研究結果を統括すると、嘘をつく理由は以下の4つに分類できます。

4種類の嘘のうち、日常生活のなかで多い嘘は「自分のための、心理的な不利益回避・利益獲得」と「他人のための、心理的な不利益回避・利益獲得」の2つとされています。

たとえばプロジェクトのメンバーともめたときに、穏便に済ませるために自分の気持ちを抑え込んで角が立たないようにする場合の嘘も、これらに含まれます。

●嘘をつき続ける限り、関係は深まらない

社会人としてやっていくためであれば、たしかに方便としての嘘はさまざまな局面で役に立ちします。前述したようなプロジェクトメンバーとうまくやっていくためにも役立ちますし、友人や家族などとの必要以上の衝突を避けるためにも役立ちます。

しかしお互いの関係を深め、信頼を築いていくためには、たとえ方便としての嘘であってもつくべきではありません。

1998年に米国心理学界が発行する『Journal of Personality and Social Psychology』に掲載された論文(DePaulo, B. M., & Kashy, D. A.)によれば、私たちは親密な相手よりも親密でない相手に対してより多くの嘘をつくことがわかっています。

すなわち嘘をつくということは、相手との心理的な距離を遠ざけてしまう行為と言えるかもしれないのです。

また、2006年にアメリカの社会心理学雑誌『Basic and Applied Social Psychology』に掲載された論文によれば、人物Aが魅力的な異性に対して自分の友人を実際より良く伝える場合と、ありのままに伝える場合、前者では人物Aの評価が「好ましい」になったのに対し、後者では「尊敬できる」になったと報告されています。

この研究結果からわかるのは、器用な嘘をつくよりも、真実を伝えた方が他者からの評価が高くなるということです。

方便としての嘘はあくまでその場しのぎの対処法でしかありません。信頼関係を作ることが目的なのであれば、真実をありのままに話し、そこで生じる衝突や葛藤を乗り越えていく必要があるのです。

嘘をつかないでいるための3つのアイデア

信頼を勝ち取るためのたった一つの方法は「嘘をつかない」である。

これを理解しておくだけでも、余計な嘘をつく回数は減るはずです。しかしより嘘の回数を減らしたいのであれば、具体的なアクションを起こす必要があります。以下ではそのためのアイデアを3つ紹介します。

●「嘘日記」をつける

社交的な人など、日常的に多くの人とコミュニケーションをとり、そのなかで大小の嘘をついている人ほど、嘘が上手くなり、同時に嘘の回数も増えていくとされています。自分の毎日を振り返ってみて心当たりがある人は、嘘をつく回数を減らすことで、嘘が下手になる必要があります。

そのためにはまず、自分がどれだけ嘘をついているかを自覚しなければなりません。今日どんな嘘を誰に対してついたのかを記録する嘘日記を始めれば、自分がつく嘘に対して敏感になります。すると自然と「嘘をつくまい」という意識が芽生え、徐々に嘘をつく回数が減り、結果的に嘘が下手になっていくはずです。

●自分に自信を持つ

「自分のための、心理的な不利益回避・利益獲得」と「他人のための、心理的な不利益回避・利益獲得」を目的に嘘をついてしまう根本的な原因は、自分や自分の発言への自信のなさです。ありのままの自分でぶつかった場合に、受け入れられない不安があるから嘘をつくのです。

ここで注意しなければならないのは、「嘘をつかないために、完璧を目指そう」と思わないことです。どんな人でも失敗や失言はあります。したがって、大切なのは完璧になることではなく「失敗や失言をしても、自分は大丈夫」と思えるマインドを持つことなのです。

自信のつけ方については『自信がない人が自信をつけるための15の方法』に詳しく解説しているので、参考にしてください。自信が身につき、本音が言えるようになれば、相手との信頼関係につながっていくはずです。

●相手を無条件に信じてみる

人は相手が自分に対して不正直だと感じたとき、自分もまた相手に対して不正直になろうとします。つまり相手が嘘つきだと思うと、「目には目を歯には歯を」の精神で自分も嘘をついてしまうのです。相手も同じです。こちらが嘘つきになれば、相手もまた嘘つきになります。

こうした嘘の悪循環を断つための方法の一つが、まず自分から相手を無条件に信じることです。すると相手もこちらに嘘をつきにくくなるため、互いに本音でコミュニケーションをとれるようになり、信頼関係へとつながっていくというわけです。

信頼関係を築きたいなら本音でぶつかれ

自分のためにつく嘘はもちろん、方便としての嘘も、信頼関係を築くためには邪魔でしかありません。信じ、信じられる関係になるために必要なのは、嘘のない本音によるコミュニケーションなのです。

たしかに本音で話せば衝突も生まれるでしょう。しかし、衝突を乗り越えなければ関係が深まることもありません。日々を振り返ってみて、無意識のうちに嘘をついている自分に気づいた人は、ここで紹介した3つのアイデアを実践してみて、不必要な嘘を少しずつ取り除いていきましょう。

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嘘をつかないのは簡単そうで一番難しいことですね。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部