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ネガティブな自分とさよならする方法
昨日上司に頭ごなしに説教されて、今日になっても腹が立って仕方がない。別れた彼女のSNSがシェアされて、つい昔のことを思い出して感傷的になる。こうした出来事に直面して、何事もなかったように生活できる人はそれほど多くないはずです。
仕事だけでなくプライベートでも私たちを振り回す「ネガティブな自分」はたくさんいます。しかし一度ネガティブな自分になってしまっても、できるだけ早くポジティブな自分に戻る方法はあります。ここではそのうち5つの方法を紹介しましょう。
「スリーグッドシングス」で記憶を上書き
●引きずっても良いことなんて1つもない
もう少しで成立しそうだった商談を、自分のちょっとしたミスで台無しにしてしまった……。
仕事上のミスや失敗は誰にでもあることですが、それを全く引きずらないという人は少ないのではないでしょうか。しかし「干渉効果」といって、私たちの脳は1つ嫌な記憶がインプットされるとポジティブな記憶に上書きしてしまう癖があります。こうなるとミスや失敗だけを引きずって、うまくいったことを忘れてしまうのです。
またネガティブな記憶は作業記憶を司る「ワーキングメモリ(段取り脳)」の能率を下げるという実験結果もでています。ネガティブな自分を引きずって、いいことなんて1つもないのです。
しかし同時に人間の脳は、ポジティブな記憶を上書きすることもできれば、ポジティブな記憶によってワーキングメモリを活性化することもできるということが、近年になってわかっています。
●スリーグッドシングスで「幸せ」に焦点を当てる

これを意識的に行う方法が、アメリカのポジティブ心理学者マーティン・セリグマン博士が提唱する「スリーグッドシングス」です。やり方は簡単。その日にあった良いことを3つノートに書き出すだけです。
「商談用に作った資料は評価が高かった」など、ネガティブな記憶に基づく内容でも構いませんし、「そういえば今日は天気が良くて、気持ちよかった」「今日の昼飯はいつもより美味しかった」などの他愛のないことでも構いません。
これだけで完全にネガティブな自分を捨て去ることはできないでしょう。しかし自分が感じた「幸せ」に焦点を当てるだけで、より冷静にネガティブな自分と向き合えるようになります。
眠れない夜の過ごし方

●眠れない夜は「楽しむ」
嫌なことがあったせいで眠れない夜が続いている。仕事に支障が出るのは避けたいので眠りたいが、そう思うと余計に目が冴えてくる……。
こんな時にお酒でごまかしたり、無理に眠ろうとしても逆効果。そのような時は「眠れないこと」自体を楽しむようにしましょう。どうせ眠れないのならずっと読めなかった本を読み始めてみよう。あるいは録画したものの仕事が忙しくて観ていない映画を観ようなど、どんなものでも構いません。
大切なのは「眠れないこと」自体を思い悩まないことです。「ベッドに入っても眠れない」というイメージが刷り込まれてしまうと、不眠の期間をいたずらに引き伸ばしてしまう事態にもなりかねないのです。
●いっそ眠らない方がいい?
「そうは言っても眠らなきゃ!」と切迫した思いを持っている人もいるかもしれません。しかし中途半端に眠るよりも、眠れない夜を過ごした方がストレスを軽減できるという研究結果も出ています。
国立精神・神経医療研究センターは、被験者に凄惨な場面を映ったバーチャル映像を観てもらうという実験をしました。
被験者のうち半分は映像を観た晩に十分な睡眠をとってもらい、残り半分には完全に徹夜をしてもらいました。すると映像を思い出すときのストレス値が前者の方が高く、後者の方が低く出たのです。
これは徹夜したことによって嫌な記憶が定着しなかったためとされています。嫌なことがあったら思い切って徹夜してみるのも、ネガティブな自分とできるだけ早くお別れするための方法なのです。
「親切な自分」をやめてみる

「親切さ」を大切にしている人は、それがむしろ自分の中のネガティブな気持ちを助長しているかもしれません。もちろん親切が悪いことだと言うつもりはありません。
しかし国立成育医療センター研究所の調査によれば、金銭的な援助や悩みの相談などの「親切」はメンタルにマイナスの影響を及ぼすことがわかっています。
また見返りを求める親切心が身についてしまうと、見返りがないことに対してのストレスを感じるようになってしまいます。「こんなにしてやったのに、あいつは感謝の一つもしない!」「俺がこんなに親切にしてやってるのに、誰もそのことをわかってない!」といった悩みを抱えている人は、「親切な自分」に蝕まれているのです。
他人に感謝をされることは誰でも嬉しいものです。しかしそれがいくら気持ちの良いことだからといって、依存していてはいけません。そうならないためにも、たまには「親切な自分」をやめてみましょう。
「引きずっていい悩み」を選ぶ

悩みが1つや2つではない時は、その中から「引きずってもいい悩み」を選ぶという方法があります。例えば「仕事でミスをした」「失恋した」「昨日の飲み会でハメを外しすぎた」という3つの悩みのうち、「失恋した」だけを引きずってもいいと自分に許してあげるのです。
この方法には2つの効果があります。1つは「悩みに対して能動的になれる」という点です。ネガティブな感情を引きずる時、人は「引きずられたくないのに引きずられている」という受動的な感覚になります。
しかしこの方法では「自分から引きずろうとして引きずっている」と能動的になれるので、うじうじするというよりはむしろ清々しい気持ちになれるのです。
2つ目の効果は「他の悩みを棚上げできる」という点。多くの悩みは時間が解決するものです。仕事でミスをしても時間が経てば挽回のチャンスが回ってきます。
失恋しても時間が経てば次の出会いがあるでしょうし、お酒の席での失敗に至ってはほとんどの人が忘れています。1つの悩みに専念して引きずっている間に、棚上げした他の悩みは解決してしまうのです。
「飽きるまで」とことん悩んでみる
「引きずってはいけない」「悩んではいけない」と思っていると、いつの間にか問題が「引きずっていること」「悩んでいること」自体にすり替わっていきます。根本の悩みは一向に進展しないので、ネガティブな自分の悪循環に陥ってしまいます。
そこで悩みに対してとことん向き合ってみましょう。答えのない悩みかもしれませんし、考えたところで結論が変わるわけではないかもしれません。
しかしそれでも引きずっているということは、どこかで「考え足りない」と感じているからなのです。丸一日、全く同じことを悩み続けていればたいていの場合「飽き」がきます。「これだけ考えたんだからもういいかな」と思えたら、自分の中で納得することができるでしょう。
「解決しなくてもいい問題」は山ほどある
これらの方法から見えてくるのは、私たちにネガティブな感情を抱かせる問題のうちほとんどが「解決しなくてもいい問題」であるということです。ポジティブな感情で上書きしたり、1つの悩みに集中して後の悩みを棚上げしたりしているうちに、知らぬ間に消えてしまいます。
したがって心を軽やかに保ってさえいれば、たいていのことはうまくいくのです。みなさんもぜひここで挙げた5つの方法を実践して、ポジティブな自分で生きていきましょう。
参考文献『「引きずらない」人の習慣』
