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人間力は人の中にあってこそ磨かれる
「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」としたのは心理学者アルフレッド・アドラーですが、人の度量を示す「人間力」はこの悩みの中でしか磨くことはできません。
友人関係や恋愛、家族とのすれ違い、そして職場での人間関係、すべてが悩みの種であり、人間力を磨くチャンスなのです。ここではこのチャンスを最大限に生かし、あらゆる人間関係を通じて人間力を磨いていく方法を提案します。
「可愛げ」を自分のものにする
「可愛げ」のある人は欠点(あるいは非)があってもなぜか周囲から愛されます。これを自分のものにするためにはまず、自分の欠点を自覚しなくてはなりません。
「自分に非はない」「自分に落ち度はない」そう考えていると言動にそれが表れ、「可愛げのない人」になってしまいます。
部下のミスに対して、ついカッとなり「お前は何度言えばわかるんだ!」と怒鳴ってしまったとしましょう。その次の日はおそらく部下も自分も気まずい思いで出勤してくるはずです。
そこで「自分は悪くない。何度言っても同じことを繰り返すあいつが悪い!」と感情的になった自分の非を認めないのか。
あるいは「何度言ってもわからないのは自分の言い方が悪いのかもしれない」と自分の落ち度を認めて素直に「昨日は怒鳴って、すまんかった」と話しかけるのか。
これが可愛げがあるかないかの境目です。ここでのポイントは自分の欠点を「なくそうとする」わけではなく、あくまで「欠点を自覚する」ことです。
仮に欠点がまったくない完璧な人間になれたとしても、周囲からは「ハナにつく人」と言われるのが関の山。可愛げがあるからこそ助けてもらえる、愛してもらえるのです。
「本当の自信」と「本当の強さ」を手にいれる

しかし自分の非や欠点を認めるのは難しいものです。そのためには周囲に対して謙虚になり、感謝の気持ちを持って接しなくてはなりません。そしてこれには「本当の自信」と「本当の強さ」の2つが必要です。
「本当の自信」とは他人に振り回されず、常に自分の価値観で考えたり、行動できる能力です。例えばこれは「自分は他の人よりも優秀だから自信がある」といったものではありません。
結局これは他人の価値観で自分の価値を計っているからです。他人に勝つことに必死にならなくなれば、素直に自分の欠点を見つめられるので、自然と謙虚になっていくのです。
また、人はピンチに陥るとその状況を誰かのせいにしたくなるものです。「こんなことになったのはお前のせいだ(自分は悪くない)」「お前があの時こう言ったからこうなったんだ!(自分は悪くない)」こう言ったり、思ったりしても状況は変わりません。
しかしそうすることで責任から逃れ、楽になろうとしているのです。
人間力を磨きたければこういう時こそ感謝の気持ちを伝えましょう。最初は難しいかもしれませんが、意識的に伝えているうちに自然と「本当の強さ」が板についてきます。
相手を好きになるための4つの視点

「そうは言っても世の中にはダメなやつがいるんだよ。昨日だって例の上司が……」と言いたくなる人も多いでしょう。「嫌いな人」の存在は自分の人間力を低下させます。そうならないためには次の4つの視点を意識しておく必要があります。
1.「欠点」というものは存在しない。「個性」だけが存在する。
「おっとりした人」と「トロい人」、「論理的な人」と「理屈っぽい人」、「おおらかな人」と「大雑把な人」。多くの場合、欠点や短所はこのように美点や長所への言い換えが可能です。
欠点として責めるのではなく、個性として受け止めるという視点を意識しましょう。
2.相手の「嫌なところ」は、自分の「嫌なところ」でもある。
私たちは誰かに自分の欠点を指摘されると嫌な気持ちになります。これと同じように誰かが自分と同じ欠点を持っていると、それを目の当たりにするだけで自分が責められたような気持ちになるのです。
これに気づけたら次にするべきは「自分を好きになること」。自分の欠点を受け入れられば、相手の欠点も受け入れられるので、「嫌い」という気持ちを和らいでいきます。
3.相手と自分を重ねて、共感する。
「あの人も自分と同じようなことで苦しんでるんだな」などと相手に共感できれば、心の距離は一気に近づきます。しかしこれを実現するには相手をよく観察したり、話す時間を設ける必要があります。
心底嫌いだと思いっている人に対して、そのように行動するのは難しいでしょう。そのため1や2の視点を通じて相手への嫌悪が和らいできた頃に取り入れたい視点です。
4.相手への先入観を捨て、まっすぐ向き合う。
「あの人はこういう人だから」という決めつけは相手の実体を歪めます。自分がもし何かしらのレッテルを貼られたまま誰かに責められたとしたらどう思うでしょうか。
「違う!誤解だ!ちゃんと自分を見てくれ!」と思うのではないでしょうか。先入観を捨て、きちんと相手と向き合うという視点も、相手を好きになるためには必要です。
「出会いの意味」をよく考える
「嫌いだ」という強烈な感情を抱く相手との出会いは、ほとんど接点のない人たちとの出会いよりも、きっと大きな意味があるはずです。
今までの人生を振り返っても「あの人のことは憎むほど嫌いだったが、そのおかげで○○ができるようになった」ということがあるのではないでしょうか。
現在進行形で嫌っている相手との出会いにも、そうした出会いと同じ意味がある。そう考えれば相手を嫌うよりも、相手から学ぶという姿勢をとった方がメリットが大きいことに気づきます。
嫌っている暇があれば糧とせよ。これが人間力を磨くための、嫌いな人への心得なのです。
「それでも許せない人」がいてもいい
ここまで嫌いな人に対する考え方や接し方を通じて、人間力を磨くための方法を提案してきました。しかし「それでも許せない人」がいても、それで人間力がまったくないということにはなりません。
その「許せない自分」を自覚し、本当の自信や強さにつなげていけばいいのです。人間力に完成はありません。少しずつ、自分なりに磨いていきましょう。
参考文献『人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」』
