リモートでも伝わる!12万部ヒットの『世界最高の話し方』に学ぶコミュニケーションの神ルール

初対面の人と話すと息が詰まる、プレゼンテーションで緊張するなど、話すことに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多いはず。コロナ禍のリモートワークでは、余計に伝わりづらい画面上のコミュニケーションに頭を悩ませることも。

そんな課題をもつ人にうってつけなのが、12万部を突破した書籍『世界最高の話し方』。著者の岡本純子さんは、1000人以上の社長・企業幹部の話し方を指導し、「伝説の家庭教師」と呼ばれる実力の持ち主で、本書では今日から実践できる50のテクニックが余すことなく紹介されています。

この記事では、1対1の会話、プレゼンテーション、リモートでのWeb会議やセミナーなど、さまざまな場面で活用できる神ルールについて書籍を参照してまとめました。

大事なのは「何を言うか」ではない

「話し方」をテーマにした本書で冒頭に紹介されるのは、「何を言うか」ではなく、相手を「どんな気持ちにさせるか」が大事であるということ。人は「何を話したか」は忘れてしまうけれど、「何を感じたか」は一生残る。だからこそ、本質的な会話の入り口で展開されるざっくばらんな「雑談」が欠かせないと著者は主張します。

しかし、明確なテーマが決まっていない雑談を苦手と感じる人は多く、「最近暑いですね」といった当たり障りなく印象に残らない天気の話で済ませがち。これから紹介するいくつかのルールは、世界のエリートが大事にしている「雑談力」を磨く際にも役立ちます。

「自分の視点」を切り離すのが超基本

コミュニケーションの基本中の基本ですが、案外見落とされがちなのが、相手に徹底的に寄り添うこと。本書では「自分への執着やエゴを手放す、つまり自分視点を離そう」とアドバイスされています。

自分が言いたいこと、自分にとって正しいことを主張するのではなく、相手が聞きたい話をするべきだと覚えておきましょう。自分フォーカスではなく、徹底した相手フォーカスへ。そう考えれば、自ずと選ぶ言葉や話の内容が変わってくるはずです。

一流は口ではなく「目と耳」を動かす

会話において重要とされる「傾聴力」。相手の話を熱心に聴くことで相手が話したいことを引き出すスキルを指します。本書でも同様に、「話す」よりも「質問する」「聞く」を優先することの重要性が示されています。一流の人ほど、口ではなく「目と耳」を使ってコミュニケーションを図るのだそう。

残念ながら日本のトップは、とくに「受信力」の弱さが指摘されているとか。最高の話し方を習得する早道は、最高の聞き手になること。これから紹介する「質問の仕方」にも目を通してみてください。

「4種の質問」を使い回して会話を盛り上げる

質問には大きく以下の4種類があり、これらを使い回すことで、相手の話が引き出しやすくなるようです。

1.導入質問
2.聞き返し質問
3.フォローアップ質問
4.ギアチェンジ質問

「導入質問」とは、「〇〇について、どう思いますか?」「調子はどうですか?」といった会話の始まりにふさわしい質問。「聞き返し質問」とは、相手の言葉を受けて同じ内容の質問をすること。「フォローアップ質問」とは相手の話に関連する質問、「ギアチェンジ質問」とは、トピックを変える質問です。

質問するときのポイントは、「ど」から始まる聞き方をすること。「どんな〇〇が好きですか?」「どうやって〇〇しましたか?」「どこの出身ですか?」など。

エリートが実践する「最高のほめ方」

コミュニケーションにおいては、相手の価値を言葉にして認めることも重要視されます。では、一流の人が実践する「最高のほめ方」とは? 本書で紹介されているのは、「承認」「共感」「賞賛」「感謝」の4つを組み合わせること。

人がもつ「認められたい」「感謝されたい」という自然な欲求を満たすことで、相手は心を開き、モチベーションが高まるという原理です。「よかったよ」といったシンプルな一言ではなく、「今日のプレゼン、熱がこもっていて心に響いたよ」などと行動に焦点を当て具体的に何がよかったのかを伝えるのがベスト。お礼を言うときも、「君がいてくれて助かったよ、ありがとう」と満面の笑みで伝えるなど、少し大げさなぐらいがちょうどいいようです。

「絵を見せる」ように描写する

こちらは、少々レベルアップした話し方の実践テクニック。人の集中力の限界は90分、さらに15分周期で集中力の波があるとも言われます。さらに疲れていたり、悩み事があったりすると人の集中力はより低下するもの。

そんな視点を踏まえると、抽象的な言い回しは避け、その光景が頭に浮かぶような詳細な描写で相手の五感を刺激しなければなりません。本書では、わかりやすい実例としてスティーブ・ジョブズ氏のスピーチが紹介されています。ジョブズ氏は「貧乏だった」過去について、以下のように話したそうです。

「食べ物を買うために、コカ・コーラの瓶を店に返し、5セントをかき集めたりもしました。温かい食べ物にありつこうと、毎週日曜日は7マイル先にあるクリシュナ寺院に歩いて通ったものです」

固有名詞や数字を含め具体的に描写されていて、思わずそのシーンを想像してしまいますよね。インパクトのある数字データは頭に入れておき、いざというときに正確に伝えられるようにしておきましょう。

「ヤッホーの法則」で自分の殻を打ち破る

本書のなかでも意外性がありユニークなのが、プレゼンテーションの前に試してほしい「ヤッホーの法則」。数々のエリートを話し上手に導いてきた著者の岡本さんは、プレゼン上達のコツは「バカになること」「カッコつけないこと」といわれています。

法則といっても、山登りで山頂に到着したシーンをイメージして「ヤッホー」を3回言うというシンプルなもの。その際、1回目は「ド」、2回目は「ミ」、3回目は「ソ」の音を意識して、段階的に音を高くするのがコツ。

3回目のヤッホーのテンションのままプレゼンを始めることで、声の張りやトーンがアップし、印象が格段に良くなるのだとか。多くの聴衆の心をつかむには普段の落ち着いたトーンでは不十分であり、居心地の良いコンフォートゾーンから抜け出して、ちょっとバカになるぐらいが良いそう。これ、淡白になりがちなWebミーティングや商談でも使えそうですね。

語尾はシンプルに「言い切る」

本書を読んでいて「確かに」と共感度が高かったのが、日本人にありがちな回りくどい語尾を直そうという指摘。

「ご協力をお願いしたいと思います」や「速やかに取り組んでいきたいと考えております」などは、その典型です。「ご協力をお願いします」「速やかに取り組んでまいります」とシンプルに言い切ったほうが聞き取りやすく、説得力が増すにもかかわらず、丁寧さを重んじて、つい回りくどくなってしまう。

とくにリーダーシップを高めたいと思うなら、極力語尾をシンプルにするのが吉。まずは「と思います」「と考えています」の2つの表現をやめることから始めましょう。

リモートワークで使える6つの話し方のコツ

昨今、主流になっている「リモートワーク」。Zoomをはじめとしたビデオ会議ツールを利用したミーティング、商談、セミナー等も急増しています。しかし利便性が高い一方で、リモートワーク時のコミュニケーションが悩みのタネになることも。Web会議では、リアルの会議に比べて25%話す機会が減るというデータもあるそうです。

本書では、リモートワーク時のコミュニケーションは「ユーチューバーに学べ」と題し、以下の6つのコツが紹介されています。

1.表情を豊かに
2.大げさに動く
3.現物を見せて興味を引く
4.効果音をふんだんに使う
5.テロップを入れる
6.口語体・会話調を使う

これらに共通するのは、相手の感情を刺激する作用を持つこと。Web商談を極めた営業マンの中には、「重要なことを伝える場面で画面に近づく」「ワントーン声を大きくする」というテクニックを使う人も。冷たい印象になりがちな画面越しのコミュニケーションだからこそ、身振り手振りを大きくして、いつも以上に愛想よく笑うことも効果的です。

資料を作成する際も、読みやすさを優先して目がチカチカしない色味を使い、小さな画面でも見やすい文字サイズを心がけると良いでしょう。どこまでも「相手フォーカス」ということですね。

話し方をアップデートして「つながる力」を高めよう

インターネットやSNSの発達により、人とつながるためのツールは格段に増えています。それらはコミュニケーションを助けてくれるものの、人との信頼関係を築くには土台となるコミュニケーションスキルが欠かせません。

伝わる話し方を身につけることができれば、それに比例して人とつながる力が高まっていく。人とつながる力こそ不透明な時代を生き抜くためのカギになると著者の岡本さんはつづっています。

まずは「ヤッホー」と3回言ってテンションを上げ、雑談をスタートしてみませんか?

[文]小林 香織 [編集]サムライト編集部