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SNSのタイムラインがセルフブランディングになる時代
今年の夏、話題になった「ナイトプール」のほかに、女性がこぞって写真を撮ったスポットをご存知でしょうか?それは、「天使の翼が描かれた壁」です。
この事象を踏まえて、女性がいかにセルフブランディングをしながら承認欲求を満たしているかの歴史を振り返ってみましょう。“自分のSNSのタイムライン=自分のブランディング”とみられる今の「SNSジェニック」について、毎晩のSNSパトロールを日課としている筆者が考察していきたいと思います。
日本人女性の承認欲求とネイルの関係
Facebookが流行り出した2011年頃には、自分のネイル(アート)を写真に撮影し投稿する女性が多くいました。彼女たちは、なぜ投稿する写真にネイルを選んだのでしょうか?その理由は大きく2つあると考えます。
1つ目の理由は、ネイルの持つ季節性です。夏ネイル・秋ネイル…のように季節のモチーフを取り入れたり、ハロウィンネイル・クリスマスネイル…のようにイベントに合わせたデザインにすることで、“そのとき撮影し、投稿する自然な理由”があったからです。
2つ目の理由は、ネイルのちょうどよいアピール感です。“顔の写真をネット上にアップロードするのは抵抗感があるけど、自分のことはアピールしたい”という日本人女性にとって、“自分の一部だけど、自分ではない”というネイルの距離感。それが承認欲求を満たすのにちょうどよかったからと言えるのではないでしょうか。
「盛る自撮り」はダウントレンド!?
しかし、ネイルの写真がSNSに溢れていく中で、もっと明確に自分を可愛くアピールしたいという女性の気持ちを汲み取ったサービスが大流行します。それは、「SNOW」を代表とする「盛れる自撮り用カメラアプリ」です。
これらのアプリで撮影した顔は、“自分であって自分ではない”くらい可愛く盛ることができ、顔の写真をネット上にアップロードするのに抵抗感がある人であっても、そのハードルを越えさせる強い動機付けになっていました。
また、「SNSジェニック」の活用方法として、同時期に普及しはじめた「Tinder」や「Pairs」などのマッチングサービスのアイコン用に「盛れる自撮り用カメラアプリ」で撮影した写真を使用する女性も多くみられました。
逆に言えば、「SNSジェニック」で顔をアップロードする抵抗感を払拭できるサービスが広まったことによって、こういったマッチングサービスが普及していったと言うことも可能かもしれません。
しかし、ネイルの場合と同様に、盛れる自撮り用カメラアプリで可愛く盛られた写真がSNSに溢れていき、行き過ぎた画像補正は、その露骨さから“狙い”がバレバレで恥ずかしいとして、徐々にダウントレンドになってきているように感じます。
最先端トレンドの「フォトジェニックウォール」とは
そして今、最先端のトレンドとしては、自分自身も写真の中に写る素材の1つとして対象化し、可愛く見せてくれるフォトスポット「フォトジェニックウォール」。
代表的なものとしては、アーティストのColette Miller氏が始めた「Global Angel Wings Project」で展開されている「天使の翼が描かれた壁」や、L.A.のメルローズアベニューというエリアにある「Paul Smithのピンクの壁」などで、海外発のムーブメントとして日本でも注目度が高まっており、「MARINE & WALK YOKOHAMA」というモールや海の家などのフォトスポット演出として展開されました。
ここで「天使の翼が描かれた壁」を例に、写真に撮ってもらい、SNSにアップロードしてもらうために重要なことを考えてみます。それは、あえて翼だけを描き、そこに自分が写り込んで初めて“絵”として完成するインタラクション性。
つまり、その世界の中に入り込んでもらう仕組みです。それは、1人で完結するものだけでなく、カップル2人で撮るためのもの、友達同士大人数で撮って完成するものなど、色々な組み合わせが今後派生していくと予想されます。
「SNSジェニック」とマーケティングとの関係
ここまでご紹介してきた様々な「SNSジェニック」は、単なる女性の承認欲求を満たし、彼女たちのブランドを強化するだけではなく、企業(ブランド)のマーケティング活動にとっても重要な切り口となっています。
例えば、最初に触れたネイルでは、ネイルが持つ季節性をマーケティング活動に展開し、季節毎やクリスマス・ハロウィンなどのイベント毎に、企業(ブランド)とトレンドに反応する女性の架け橋となって接点をつくることができます。
また、「フォトジェニックウォール」では、その場所にある“壁”まで撮りにいく必要があるため、その場で撮れる写真が魅力的であればあるほどアクションにつながりやすいと言えるでしょう。
このように「SNSジェニック」という切り口からマーケティングについて考えてみてもたくさんのヒントが転がっているはずです。是非、普段何気なくみているSNSから次の「SNSジェニック」を見つけ出し、お仕事に活かしてみてはいかがでしょうか?
