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わずか20人の少数精鋭、PocketのCEOネイト・ワイナー氏
気になったウェブページを保存し、いつでも別のスマホなどからオフライン時でも読めるようにできるPocket。今や2000万人を超えるユーザーを獲得しており、ウェブサイトやSNS上のコンテンツをトータルで20億以上もの量を保存しています。
そんなサービス規模とは反対に、現在のPocketの従業員数はわずか20人。サービス提供を始めてから8年が経ちますが、そのうち4年間はPocketのCEOであるネイト・ワイナー氏が、ウェブサイトの立ち上げからiosの開発、何百万人ものユーザーの対応といった全業務を1人で行っていたのです。
従業員を増やす際にも「5人は多すぎる」と感じ、1人でできる仕事をわざわざ10人で取り組むことに疑問符を浮かべてしまうほど、ワイナー氏は少数精鋭に並々ならぬこだわりを持っています。
少数精鋭組織のメリットとは?

では、少数精鋭組織にはどういったメリットがあるのでしょうか?
人数が少ないと、必然的に1人あたりの業務量は増加します。したがって、それぞれが時間ロスを軽減し、いかにコストパフォーマンスを最大化することを考える必要性が出てくるのです。
しかし、少数精鋭組織だからこそ業務をこなす際に生まれるメリットが存在し、その効果はチーム全体にも反映されます。その従業員個人と、チーム全体に生まれるメリットを見ていきましょう。
従業員個人に生まれるメリット
・業務のミス、漏れ、無駄を防げる
・業務を効率的に行える
・優先度の高い事に着手できる
・先の業務に取り掛かることができる
・新たなテーマに取り組む時間が生まれる
チーム全体に生まれるメリット
・メンバ全員の力を十二分に発揮できる
・チームの業績(成果)向上に直接繋がる
・新たなテーマに着手できる
・問題の芽を早期に摘むことができる
・業務改善ができる
Pocketを成功に導いたワイナー氏の4つの考え方

最初から、少数精鋭で会社の規模を広げることを想定していたワイナー氏が、実際にPocketを成功に導いた背景には、自身の4つの考え方がありました。
1. 少ない人数で集中する必要に迫られること、またはそう想定すること
2015年、Pocketが抱えるプロジェクトは従業員を超える量にまで増加しました。つまり、会社は休む暇なく戦い続けなければいけない状態ということです。
しかし、ワイナー氏の考え方では、大きな規模の会社だとまずリーダーを決め、それぞれのプロジェクトにエンジニアを割り当て、彼らを鼓舞しながら仕事を進めてというように、作業の工程が多くなって無駄が生まれます。
それに対し、小規模の会社は、従業員が少ないので仕事そのものに集中でき、迅速な対応と正確な優先順位付けが可能となるのです。結果、無駄をなくして集中することで、質の高い仕事ができ、最終的に業務効率向上にも繋がっています。
ワイナー氏は、常に想定した最良の結果に向かって動いているのです。
2. 自分の文化の土台を固め、しかしできることは増やしていく
たった1人で創業したワイナー氏は、Pocketの発達段階において濃密な文化形成を行いました。企業文化としては、「信頼」「挑戦的であること」「Pocketを直接管理すること」の3つがあり、これはワイナー氏自身の性質でもあるのです。
しかし、会社を運営していくに連れて、現状ではどうにもできない分野が出てきてしまいます。Pocketの場合、それがデザインだったのです。ワイナー氏は、デザインに関する経験がなかったため、自分にない価値を持つ人間の必要性を感じ、初めてデザイン担当の従業員を雇用しました。
これにより、企業文化である「信頼」に足る従業員を雇うことで、ワイナー氏1人で問題の解決案を考えるよりも、優れた意見が出てきたと言います。
こういった企業文化は、仕事のやりやすさだけでなく、プロダクトの完成度にも大きく関わってくるのです。
3. 物事をシンプルかつ簡単に行えるようにする
Pocketが物事を決定する時の指針は、「どうやったら全てをシンプルな方法で実現できるか?」ということです。独自APIの開発もその1つ。
楽天が「2ヶ月でKoboとPocketを統合できるか?」と聞いてきた時、通常であればチーム総出で1からコードを書かなければいけませんが、コード1つで多くのネットサービスと統合できるAPIを開発していたため、わずか2週間で実現させることができたのです。
ワイナー氏の理想は、「企業がワイナー氏やチームにコンタクトを取らずに勝手に統合を行えること」。シンプルな1つの解決策を導き出すことで、少人数でも多くの問題に対処していけるのです。
4. 「ユーザーが会社を成長させる方法」を考える
ユーザーとの関わりを持つことで、年に1度リリースを行うだけだったPocketは、5~6週間にごとにリリースするようになりました。小分けにリリースを繰り返すことで、ユーザーがフィードバックを行えるようになったのです。
ユーザーは自分のフィードバックがPocketに聞き入れられると理解しているので、「一方的にプロダクトを使う人」から「遠隔チームの1人」となりました。
Pocketは、ユーザーフィードバックを集めるだけに留めず、それを実際にプロダクトにおける行程の指針にしているのです。ユーザーからの声をただ聞き逃すのではなく、本当の意味で「ユーザーの声を聞き入れる」ことの重要さをワイナー氏は説いています。
小規模な企業にとって、ユーザーは「プロダクトを次の段階に発展させる1人」になり得るのです。
個人の業務スキル向上が強い組織づくりへ繋がる

Pocketは、従業員を増やすことなく会社の規模を広げてきました。その要因として、個々の業務スキルが高く、互いに認め合える存在であることが挙げられます。つまり、たとえ少人数であっても、質の高い人材集まることで、大規模の会社をも上回る強い組織を築き上げられるということ。
したがって、どんなに小規模なベンチャー企業でも、猛烈な勢いで階段を駆け上がり、あっという間にトップへ躍り出る可能性を秘めているのです。
[文・編集] サムライト編集部