個の時代は「アウトプットできるオタク」が勝者になる!

「人生の軸」はありますか?

今の仕事や生活に不満はあるものの、だからといってそれらを投げ出してまで「好きだ」「やりたい」と思えることがないという人も多いのではないでしょうか。

しかし自分の人生の軸にできるような好きなこと、やりたいことが把握できていないままでは、今まさに訪れている「個の時代」においては、ロボットやAIなどと代替可能な存在になってしまいます。もちろんそれも一つの生き方ですが、「そんな生き方は嫌だ!」という人も少なくないはずです。

ではどうすればいいのでしょうか。その答えの一つが「アウトプットできるオタク」になる、です。

ここではSHOWROOM代表取締役社長であり、秋元康さんや堀江貴文さんに「天才」と言われる前田裕二さんの著書『メモの魔力』を参考に、なぜ個の時代にアウトプットできるオタクが勝者になるのか、またどうすればアウトプットできるオタクになれるのかを解説します。

「アウトプットできるオタク」が人生の勝者になる 

オタクになれなければ代替される

これからの社会において、どんな「個」が価値を持つのか。
僕は、何かに熱狂している「オタク」であることが、価値創出の根源になると考えます。
引用:『メモの魔力』p120

アニメオタク、筋トレオタク、宇宙オタク、数学オタク……○○オタクと言われる人たちは、得てしてその対象のことが好きで好きでたまらず、暇さえあればそのことばかりを考えてしまいます。結果自分の好きな分野について常人では追いつかないほどの知識量を備えていくのです。

前田さんはこうしたオタク的な人間が、今後は共感やお金を集めると指摘しています。例えば堀江貴文さんは、和牛やロケットについてオタク的と言わざるを得ず、一度話し始めると止まらないのだそうです。

あるいは「会社員を辞めてみる」という選択で紹介した京都市下京区岩滝町にある銭湯「サウナの梅湯」を経営する湊三二郎さんも、銭湯オタクが高じてアパレル業界から銭湯経営者に転身しています。

彼らに限らず、個として成功している人の多くはその分野についてのオタクだということができます。

コアなセレクトが人気を呼んでいるようなアパレルショップの店長は服オタクであることが多いですし、人材育成の分野で成功している人は、人の心の機微やそれを左右する言葉についてのオタクであったりします。

彼らは好きを突き詰めて個を確立しているからこそ、唯一無二の魅力を発揮しているのです。

逆に言えば、個の時代において何かに熱狂してオタクになれなければ、今後ますます台頭してくるロボットや人工知能に代替されるような存在になりかねません。それを回避したいのであれば、オタク化するしかないのです。

オタクが抱える「アウトプット力不足」の問題

しかし、単に何かに熱狂しているだけでは、個の時代を生き残っていくことはできません。なぜならデータが簡単に手に入る現代においては、「詳しく知っている」だけでは価値が生まれないからです。

共感やお金を集めるほどの個になるためには、そこに独自の「視点」を持ち、それを新たな価値としてアウトプットできなければなりません。

前田さんが著書で書いているわけではありませんが、オタク同士は得てして自分たちの間だけで通用する言葉でコミュニケーションをとりがちです。

確かにそれはある種のアウトプットではあるものの、閉鎖されたコミュニティの中でだけ通用するアウトプットをしているようでは、それ以上の価値を生むことはできません。

より多くの共感とお金を集めるためには、個としての独自の視点を持ちながらも、より広いコミュニティに好きなものの魅力を伝えられるようなアウトプット力が必要なのです。

自己分析で「軸」を見つけ、「アウトプット力」を鍛える

こうしたアウトプットができるオタクになるためにはどうすればいいのでしょうか。その答えの一つが前田さんがライフワークとして徹底的に実践している「自己分析」です。

自分は何が好きなのか、何を望んでいるのか、どんなことに夢中になれて、なぜそう考えるのか……そうした自己分析の積み重ねが、まず自分が人生で大切にしなければならない軸の発見につながります。またそうして軸を発見していく過程で、自分について延々と言語化を繰り返していくうちに、自然とアウトプット力も鍛えられていくのです。

自己分析は「ファクト→抽象化→転用」で深まる

しかしただぼんやりと「自分は何が好きなんだろう」と考えていても、自己分析は深まりません。前田さんは自身が確立したメモ術に沿って、「ファクト→抽象化→転用」を書き出していくことでこそ、自己分析が深まると言います。

ファクト:実際にあった出来事、体験を挙げる。
抽象化:ファクトから導き出される自分の性格や傾向についての分析を行う。
転用:抽象化した内容をもとに、別の状況だったらどうなるか、自分の性格や傾向を生かせる状況はどんなものかを考える。

この3ステップを自己分析につながるような問いに対して繰り返していけば、自ずと自分の軸と呼べるものが輪郭を表してくると同時に、それを言語化するアウトプット力も身についていく、というわけです。

例えば筆者は現在フリーライター歴5年になりますが、その前は2年ほど会社員をしていました。そんな筆者が仮に「会社員時代に楽しかった仕事は?」という質問に、この3ステップで答えるとしたら次のようになります。

転用のポイントは、「この仕事が続けられるようにするには、どんなスキルを磨けばいいだろう?」のように、何かアクションにつながるような問いや具体的な施策で終えることです。これにより自己分析は自己改善につながっていくのです。

ではどのような問いが自己分析につながるような問いなのでしょうか。これについては『メモの魔力』の巻末資料として、前田さんが1000の問いを用意してくれています。以下にはその中から10の問いを抜粋しておきます。これらに答えて少しでも自分の軸が見えてきそうであれば、ぜひ同書を手にとってより自己分析を深めていきましょう。

・小学校時代の将来の夢は?
・大学時代の理想の食生活は?
・20代の頃の理想の職業は?
・40代になったとき何に優先的にお金を使いたいか?
・50代になったときどんな仕事をしたいか?
・何歳まで働いていたいか?
・死ぬまでに実現したいことは?(友人・知人に関すること)
・死ぬまでに実現したいことは?(勉強・仕事に関すること)
・死ぬまでに実現したいことは?(趣味に関すること)
・死の瞬間をどう迎えたいか?
抜粋:前掲書 自分を知るための【自己分析1000問】

「迷いがない」はそれだけで武器になる

存在さえしなかった自分の軸、あるいはぼんやりしていた自分の軸。これらがはっきりとした輪郭を持てば、仕事においても私生活においても、迷うことなく人生に関わる選択ができるようになります。

SNSなどの影響で情報過多になると同時に、自分次第で様々な人生が選べる選択肢過多状態にある現代において、迷いなく選択できるというのはそれだけで行動や思考の速度が上がる、立派な武器です。

自分の人生を自分の手で切り拓くためにも、『メモの魔力』をきっかけとして、自分の軸を手に入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献『メモの魔力』

Career Supli
実用的でとても参考になる本です。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部