『アウトプット大全』が30万部超の大ヒット!編集者に企画力の秘訣を聞いてきた!

半年足らずで30万部超の快挙

2018年8月に出版され、2019年1月までの半年足らずで30万部以上を売り上げた『学びを結果に変えるアウトプット大全』。本書の爆発的な売り上げは、著者であり「日本一アウトプットする精神科医」である樺沢紫苑氏の力はもちろんのこと、企画・編集を行った編集者の力でもあります。

今回は編集を担当した吉田麻衣子(よしだ・まいこ)さんに、本書を生んだ企画力の秘訣や、編集を通じて感じたアウトプットの効果や重要性についてお話を伺ってきました。

企画は「自分の悩み・願望」が出発点

−サンクチュアリ出版は「1ヶ月に1冊しか本を出さない」が方針なんですよね?

吉田麻衣子さん(以下、吉田):はい。「本を読まない人ための出版社」をキャッチフレーズに、そうやって丁寧に作って丁寧に届けようというのが弊社のやり方です。

逆に言えば、出した本がコンスタントに売れないとビジネスとして厳しくなってしまいます。だから企画会議に出した企画がなかなか通らないんです(笑)。

例えば売れない要素がある本はまず通りません。すでに同じ書棚に並ぶような本の中に似た内容の本があるとか、既存の本よりも劣化した部分があるものも難しい。「この企画だったら、同じ棚で一番を取りに行けるよね」というレベルのものでないと出版できません。

−そういう企画ってどうやって生まれてくるものなんですか?

吉田:編集者ごとに得意な企画の作り方は変わります。自分が読みたい本でなくてもマーケティングを通じて1冊作れる人もいます。

でも私は、自分の中にある悩みや願望を企画に出した方がうまくいきます。例えば最初に私が今の会社で手がけた『「一緒に働きたい」と思われる 心くばりの魔法 〜ディズニーの元人材トレーナー50の教え〜』という本があるんですが、この本は私自身がディズニー好きなのでその想いをしっかり込めた本になっています。

今回の『アウトプット大全』も、もともとは私がアウトプットが苦手でもっと上手になりたいと思って企画しました。

「吐き出した気持ち」が企画のタネ

−企画のタネになる悩みや願望って、どうやって見つけるんでしょう?

吉田:アナログなんですけど、書き出すようにしています。といっても真っ白のノートにただひたすら書き出すだけですよ。
企画の体裁にはなっていないし、読み返すと話題にもあちこち飛んでいます。忙しいとか、今日は肌の調子が悪い、昨日糖質を摂らないで寝たら朝スッキリしてる、昨日のあれはムカついたなあ……みたいな(笑)。

本当は毎朝やりたいんですが、それが難しくても昼頃とか夕方でもいいから1日1回必ず時間を作っています。時間にしたらだいたい30分くらい。

あと1日分の書く量はどんなに多くてもB6のノートに1ページ分だけと決めています。書きたいだけ書くといくら時間があっても足りないので、それ以上は書きません。

これはもともとジュリア・キャメロンの『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』で紹介されていた「モーニングページ」っていうものなんですが、私にとって書く瞑想みたいな感じで心のデトックスに役立っています。

でもそうやって自分の身に起きた出来事やその時の気持ちをノートに吐き出していると、見返したときに「ああ、私はこのときこういうことに悩んでたんだ」って思い出せますよね。

すると自分の悩みを分析して、「このときこうやって思った原因は、自分と人を比べてしまうからかもな。じゃあ人と比べない方法みたいな企画はどうだろう」という感じで企画に発展させられるんですよね。

「みんなが好きなもの」が好かれる理由を知る

あとは話題の映画や音楽にもなるべく触れるようにしていますし、テレビを見る時間もつくっています。

なぜかというと、みんなが好きなものがどうして好かれるのかを知っておきたいからなんです。書店に行っても売れ筋の本を見て「どうして人気なんだろう」って考えます。

感性が独特で、人とは違うものが好きという編集者もすごいと思いますし、実際にそれで売れる本を作っている人もいます。

でもこれからは、ちゃんとみんなが何をどうして好きなのかを理解したうえで作った本でないと厳しい時代になっていくと思うんです。

だから私はミーハーでありたいし、「知ったかぶり」をしないで、人気のものは実際に触れるようにしていますね。

アウトプットこそが成長につながる

−『アウトプット大全』の売れ行きがすごいですが、どうしてこんなに売れているんだと思いますか?

吉田:著者の樺沢先生ご自身は、3つの要因があると分析されていました。そのうちの一つに挙げられているのが時流、タイミングの良さです。これはその通りだと思います。

というのも私自身、2017年の後半あたりからSNSで「アウトプット」という言葉がキーワードになってきているなという体感がありました。

時代の大きな流れとしても、消費するだけの時代から、個人が生産をするようになってきています。だから2018年はアウトプットの年になるのではと思い、2018年の1月に樺沢先生にオファーのメールを送ったんです。

実際、いま第一線を走っている人たちは自分の殻を突き破り続けながら、どんどんアウトプットしてますよね。例えば作家のはあちゅうさんはオフィシャルブログ「旦那観察日記」で、手書きのキャッチーなイラストでプライベートを積極的にアウトプットしています。

プロブロガーのイケダハヤトさんも、すでにブログで十分成功しているのに、YouTubeという新しいプラットフォームでアウトプットに挑戦しています。同業者で言えば幻冬舎の箕輪厚介さんもアウトプットの人です。

樺沢先生によれば、インプットとアウトプットの科学的に理想とされる比率は3対7だそうです。でも世の中の風潮は「今月は何冊本を読もう」とか「1日何時間を勉強にあてよう」といったインプットが重視されていて、多くの人がインプット過多になっています。

でも月に本を3冊読む人と、月に10冊読む人がいたとしましょう。前者が3冊全部ブログなりamazonのレビューなりにアウトプットしている一方で、後者が1冊もアウトプットしていないとします。このときどちらが自己成長するかというと、3冊読んで3冊アウトプットする人なんです。

この話は『アウトプット大全』にも書かれているんですが、個人的にもけっこう衝撃でしたね。

インプットは一流のキュレーターから

−7割をアウトプットに割くとして、残り3割のインプットで心がけていることはありますか?

吉田:特定のメディアというよりは、一流の編集力を持った個人からインプットするようにしています。そういう信頼の置けるキュレーターが読んでいる本やオススメしている本なら、比較的自分にも合いやすいと思うからです。

例えば『アウトプット大全』の樺沢先生も一流のキュレーターなんです。月20冊の本を読みながら、ブログもYouTubeもメルマガもやりつつ、精神科医としても活動されています。

だからこの本も実質ビジネス書30冊分くらいの情報量が詰まっています。いわばアウトプットの百科事典みたいなものと思ってもらえばちょうどいいかもしれません。

だから、手前味噌にはなりますが、何かアウトプットについての本を読みたいと思うならまずこの本を読んでいただいて、ここから興味のある分野を別の本で深掘りしていくというやり方がオススメです。

この本は構成やビジュアルなどを通してわかりやすさにもこだわったので、それこそ本を読まない人でも読める本になっていますし、読めば必ず何かアクションを起こしたくなるはずです。

−最後に読者にメッセージをお願いします。

吉田:本の中でアウトプットでしか現実世界は変わらないと書かれているんですが、実際頭がどれだけ良くなってもアウトプットしないと人付き合いも仕事も変わっていかないと思います。

だからこの本を通じて自分のアウトプットを見直して、アクションを変えていく人が増えればいいなと思っています。

−アウトプットは今後もますますキーワードになりそうですね。今日はありがとうございました。

Career Supli
アウトプットの百科事典という表現が本当にピッタリの著書です。ぜひ読んでみてください!
[文]頼母木俊輔 [編集] サムライト編集部