ハウステンボス社長も実は忍者!九州から広がる忍者ビジネス

忍者」という言葉にはある種のときめきがあります。歴史の影の存在で実際の姿が記録として残されていないからこそのロマンがあるのでしょう。忍者を題材にしたフィクションは時代を問わず大人気です。

2015年春からのスーパー戦隊シリーズ「手裏剣戦隊ニンニンジャー」は毎週たくさんの子供たちに楽しみにされていますし、アメリカンコミックの「ティーンエイジミュータントニンジャタートルズ」やアメリカの小説をアニメ化した「ニンジャスレイヤー」は忍者の逆輸入ともいえそうです。

忍者の人気はいまや国内だけに留まらず、世界中で加熱しています。いま、九州を中心に忍者を使った地域活性化や会社のプロモーションが盛り上がっているようです。

なぜ九州で忍者?

画像出典:九州忍者保存協会

2011年に九州でNPO法人「九州忍者保存協会」が発足しました。忍者といえば伊賀甲賀など三重県・滋賀県のイメージが強いですが、忍者は全国各地に潜伏していました。

佐賀県に存在した湯野田城では「南蛮派」と呼ばれる砲術に優れた忍者の一派を使っていたとの説が浮上しており、他にも九州にかつて忍者がいたとされる情報が見つかっています。佐賀県嬉野は研究が進めば伊賀・甲賀に続く忍者の里となるのではと噂されているのです。

そして今では佐賀県の忍者テーマパーク元祖忍者村嬉野温泉肥前夢街道を始めとして多くの忍者団体が九州で忍者としてプロモーション活動を行ったり、修行をしています。

これらをまとめ、九州において忍者の歴史の保存、研究、普及をしているのが九州忍者保存協会です。参加団体同士が連携し、忍者を使ったイベント・地域活性を行っています。

ハウステンボス社長は忍者大将軍

画像出典:九州忍者保存協会Facebook

九州最大のテーマパーク、ハウステンボスは創立から18年間赤字が続いており、廃業の危機にありました。このハウステンボスを再建したのが、HISを創業し、航空会社スカイマークエアラインズの設立も手がけた澤田秀雄さんです。

澤田秀雄さんは2010年にハウステンボス経営者となり、たった1年でハウステンボスを観光ビジネス都市として蘇らせ、黒字化しました。

澤田さんはオランダがモチーフだったハウステンボスのイメージを次々と刷新し、LEDで光り輝くチューリップ畑、受付から掃除までをロボットがこなすスマートホテルなど最新技術を取り入れ新しい価値を作り出しました。

そんな澤田さんは2012年に九州忍者保存協会の「忍者大将軍」に就任しています。最新の技術と古い歴史のある忍者は相反しているようですが、既に観光業界の将軍ともいえる澤田さんは九州の観光ビジネスが盛り上がって欲しいという思いのもとに忍者大将軍への就任を快諾したようです。

東京オリンピックを控え、インバウンド時代へ突入する日本の観光の未来は影から表から忍者が支えるかもしれません。

最高の相性・忍術×自然体験!

画像出典:火之国屋

自然体験アクティビティはどこの観光地でも人気ですが、熊本県の火之国屋ではカヤックや渓流釣りに加えて、河の流れを使った「水遁の術体験」や「水上ゴザ走り」「手裏剣体験」など本格的な忍者修行を楽しむことができます。多くの忍者フィクション作品でも、忍術は自然の力を借りて行うものというイメージが強いため、忍術×自然体験の組み合わせは雰囲気たっぷりでしょう。

テレビ出演も多く、8月には世界初の『お化け屋敷より怖い忍者屋敷!』というアクティビティも開催されるため、今後日本全国・世界からの観光客増加が期待されます。

国立大学で忍者になれる?!

画像出典:三重大学

三重大学では「忍者」についての授業が開講されています。この授業の講師であり研究プロジェクト参加者の一人の川上仁一さんは幼い頃より甲賀流忍術の一派である伴家忍之伝の修行をしてきた甲賀流伴党21代目宗家であり、忍者です。

あまり学術的に扱われてくることのなかった「忍者」を大学の授業とするのは日本で初めてのことですが、この講座・研究プロジェクトでは学術的側面の他にも「伊賀における『忍者文化』に着目した地域活性化の取り組み」を課題としており、学生以外に向けても忍者や観光についてのシンポジウムや講座を開講しています。

この研究プロジェクトの研究成果は現在(2015年4月〜7月末)東京都霞ヶ関の文部科学省情報ひろば企画展示「忍者を科学する!」で展示されています。

2020年に向けて全国規模の日本忍者協議会発足へ


今年3月、2020年の東京オリンピックで増える外国人観光客を掴むための「忍者観光戦略」を行う全国規模の組織「日本忍者協議会(仮称)」が9月に発足することが発表されました。

これまでも海外から忍者に関する問い合わせはどこにすればいいのか?という声が上がっていたため、これまでバラバラに活動していた各地の忍者に関する団体の情報をWeb上で一元化し、海外へ情報発信していくこと・忍者の認知度を高めるイベントの開催がこの団体の目的です。

現段階では佐賀県、三重、滋賀県、長野県、神奈川県や各地の忍者団体など11団体が準備を進めていますが、これからも多くの団体が参入を呼びかけるようです。海外からの需要も高い「忍者」が観光事業に活用され、国内外問わずに忍者を楽しむことのできようになる日は近いですね。

忍者ビジネスの可能性は全国にある!

忍者は自分を忍者と明かすことはなく、何より隠れることの達人です。そのため、全国各地に忍者がいた可能性は極めて高いのです。
子供から大人まで、そして外国人にまで伝わる忍者のイメージはとてもキャッチーで、親しみやすいものです。

歴史の上では影の存在だった忍者が現代に蘇り表立って地域や企業を盛り上げてくれるというのは不思議なものですが、これから忍者が日本をどう盛り上げていくか見守っていきたいですね。

[文・編集] サムライト編集部