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ちゃんとKPI使えてますか?
プロジェクト管理の指標として使われることの多いKPI(Key Performance Indicator)。しかしこの指標は他にも仕事面での個人の成長や、スポーツや習い事などの私生活にも役立つ、オールマイティなツールです。
そのため「仕事に役立つらしいってことは知ってるけど、ちゃんと使ったことがない」「ビジネス書を読んで試してみたけど、イマイチ使いこなせていない」という状態のままではもったいないことこの上ありません。
ここではリクルートで29年勤め、うち11年間は社内勉強会で「KPI」「数字の読み方」をテーマにした人気講座の講師も務めていた中尾隆一郎さんの著書『最高の結果を出すKPIマネジメント』を参考に、機能しないダメなKPIの特徴を4つ紹介します。
KPIと単なる数値管理は違う

KPIとは、「事業成功」の「鍵」を「数値目標」で表したもの。
引用:前掲書p20
中尾さんは著書の中でKPIをこのように定義づけています。ポイントとなるのは単に事業を数値で考えたり、管理したりするのではなく、事業を成功に導く鍵を数値目標として表したものであるという点です。
この点を履き違えてしまうと、例えばなんでもいいから数値で管理さえしていればKPIを運用していることになってしまいます。しかしそうなると、事業の成功や設定している目標にあまり関係のない数値を一生懸命管理することになりかねません。
まずは事業の成功とはなんなのかを理解し、そのうえで成功を収めるための鍵はなんなのかを考える。その上で鍵を数値目標として設定する。これがKPIにおいて最も重要なポイントなのです。
ダメなKPIの4つの特徴

このポイントを押さえていれば設定するKPIは「イケてるKPI」になりますが、逆に押さえられていないと「ダメなKPI」になってしまいます。以下ではこのうち運用しても効果が出ないKPIの特徴を4つに分けて紹介します。
今まで作ったことがない人はこの4つに当てはまらないように注意し、KPIを作ったもののうまくいかなかった人は失敗要因がこの4つの中にないかを振り返ってみましょう。
KPIが複数ある
KPIは大前提として1つだけと決まっています。それはKPIによるマネジメントが最も重要な数値だけに焦点を絞ることで、仕事や私生活におけるプロジェクトがうまくいっているかどうかをスピーディにチェックするためのものだからです。
こうしたKPIの機能を中尾さんは「KPIは信号」(前掲書p72)と表現しています。KPIを達成していればプロジェクトは青信号、達成していなければ黄信号、未達成が続けば赤信号だというわけです。
信号が複数あれば交通が麻痺してしまうように、KPIが複数あればKPIの機能も麻痺してしまいます。だからこそKPIはたった1つであるべきなのです。
KGI・CSFが決まってない
KGIとはKey Goal Indicatorの略称で、プロジェクトの最終目標を指します。CSFはCritical Success Factorの略称で、事業成功の鍵となる最も重要なプロセスを意味します。
例えば売上前年比1.5倍がプロジェクトの最終目標KGIであるならば、このKGIを達成するために必要なアクションがCSFとなり、そのアクションがどれだけ必要かを数値で表したものがKPIになります。
つまりKGIが決まり、それを前提としてCSFが決まっていなければ KPIも決めようがないのです。
しかしダメなKPIの中には、そもそもKGIやCSFが何なのかを共有したり分析したりしないまま、「なんとなくこれがKPIになる気がする」と決められたものが少なくありません。
まずは前提となるKGI・CSFを決定する。これがダメなKPIから脱出するための必須条件です。
KPIが現場でコントロールできない数値だ
例えばこれまでの事業に関するデータを分析したところ、どうやらその事業の売上と人口の増減に強く相関関係があることがわかったとします。しかしここでKPIを人口に設定してしまうと、このKPIは全く機能しなくなります。
なぜならKPIは数値目標であり、未達であった場合には何かしらの改善アクションを起こすためのものだからです。しかしKPIが人口だった場合、一企業にできることはほとんどありません。一企業の、しかも一事業部の人間が何かアクションを起こしたところで、人口の増減に及ぼせる影響は微々たるものでしょう。
このような事態に陥らないためには、KPIは現場がコントロールできるものにしなければなりません。KPIを現場がコントロールできるものにするためには、CSFも同様のものを選ぶ必要があります。例えば売上の数値を以下の式で表してみましょう。
売上=アプローチ量×成約率×価格
アポの数を増やせばアプローチ量は増えますし、従業員の教育を充実させれば成約率が上がるかもしれません。価格を引き上げられれば単純に売上が改善する可能性もあります。どれが最も重要なプロセス=CSFになるかはケースバイケースですが、大前提として考えるべきが現場がコントロールできるかどうかです。
例えば成約率を上げるのが現状難しく、価格は経営陣の意向で動かせないとなった場合、残るはアプローチ量だけになります。このケースではCSFはアポイントメントということになり、KPIは「1日○件」といった形をとります。
こうして現場がコントロールできることを前提として決められたCSFとKPIだけが、実際に運用に耐えられるものになるのです。
KPIが遅行指標だ
交差点を見通す距離が十分にない場合、予告信号という信号が設置されます。しかし仮にこの予告信号が、その先の信号とタイムラグがあったとしたら、その交差点では事故が頻発することでしょう。KPIに遅行指標を採用すると、これと同じことがプロジェクトの中で発生します。
遅行指標の代表格はGDPや人口統計などの政府統計数値ですが、データが即時に入手できない場合も遅行指標と考えることができます。例えば「売上=アプローチ量×成約率×価格」の式のうち、成約率をKPIとして設定したとしましょう。
ここで事業部のメンバーがなかなかアプローチ量と成約数を報告してこないがために(あるいは報告しにくい仕組みになっているがために)、ある月の成約率を算出するのに1ヶ月や2ヶ月かかったとします。この場合の成約率は遅行指標と呼べるでしょう。
KPIを使ったマネジメントではできるだけリアルタイムな数値の把握が必要で、それを生かしてタイムラグなく改善アクションを起こすからこそ価値があるものです。したがって遅行指標をKPIに採用すると、この強みが活かせなくなってしまうのです。
KPIを活用して成長を加速させよう

KPIを正しく設定できれば、その数値を見ているだけでプロジェクトや自分個人が目標に向かって成長できているかどうかをスピーディにチェックできるようになります。
すると主観的な観察や複雑なデータの分析に時間を割かなくて済むため、そのぶんの時間や労力を次の行動や改善に注げるようになるでしょう。その結果としてもたらされるのが成長速度の加速です。
中尾さんの著書『最高の結果を出すKPIマネジメント』には、中尾さん自身が経験してきた多くの事例が紹介されており、その際のKPI の設定方法についても解説されています。よりKPIについて深く知りたいという人は、中尾さんの著書にも手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
