説明下手を一気に改善するたった2つのコツ

なぜ自分の説明は理解されないのか?

家族や友人と世間話をしていても、仕事で上司や取引先にプレゼンをしていても、どうにも自分の説明が理解されない……。そんな状況に頭を悩ませている人もいるのではないでしょうか。

こうした説明下手な人は、説明のための大前提をおろそかにしている可能性が濃厚です。ここでは戦略コンサルタントとして活躍し、2012年からはコンサルティング会社「ギックス」の取締役を務める田中耕比古さんの著書『一番伝わる説明の順番』をもとに、説明下手を一気に改善する2つのコツを紹介します。

説明の本質は「思考をまとめる4ステップ」にあり

説明下手な人ができるだけ早く説明のレベルを改善するためには、まず説明の本質から抑えることをおすすめします。その本質こそが、田中さんの著書で紹介されている「思考をまとめる4ステップ」です。

ステップ1:相手の知りたいことを明確にする
ステップ2:自分が伝えたいことを明確にする
ステップ3:情報のギャップがないか確認する
ステップ4:ギャップを埋めるために、何が必要か考える
引用:前掲書p92

さらに狙いを絞るとしたら、前提となる「ステップ1:相手の知りたいことを明確にする」と「ステップ2:自分が伝えたいことを明確にする」です。

これを抑えるだけでも、説明のレベルはグッと改善します。以下ではこの2つの前提をクリアするためのコツを紹介していきましょう。

相手が知りたいことを「地図」で知る

「うまく説明したいのにできない」という人の多くが、自分が伝えたいことばかりが先行して相手を置いてけぼりにしがちです。

しかし相手が自分の説明を聞こうとしてくれるのは、その説明によって知りたいことが聞けると思っているからです。それとは無関係な話がつらつらと続けられれば、説明が頭に入ってこなくて当然です。

●「地図」で話の方向性を共有する

そこで役に立つのが「地図」の考え方です。初めて降り立つ土地では地図が必要不可欠です。まず地図を広げ、目的地を確認し、そのためにはどの場所を経由すればいいかを確認するはずです。

説明でもこれと同じ手順を取ればいいのです。つまり相手と自分の間で以下の情報を共有していくのです。

これを会話の中で確認し合えば、自分も相手も迷わずに一緒に目的地を目指すことができます。しかしここで問題があります。それは「いつも地図が用意されているわけではない」という点です。

●「地図」は一緒に作っていくもの

この問題を解決するためには、相手からの質問や自分が伝えたいこと、自分からの質問と相手の回答などを踏まえて、相手と一緒に地図を作っていく作業が必要になります。

例えばこちらが商品説明をしている最中に、相手が「君のところはね、だいたい納期が遅いんだよ」と言い始めたら、それは相手が納品体制についても話したいという意思表示です。

それに気づいたら、説明の地図に納品体制についての内容を組み込み、地図を拡大していきます。

このようなケースでは「他にも何か気になることはございますか?」などと質問すると、当初こちらが用意していた説明の地図とは全く違う話を相手が聞きたがっていることがわかる場合もあります。

そんな状況で自分が話したい商品説明ばかりしていても、相手はどんどん上の空になっていくだけですから、相手の意見を取り入れて、どんどん地図を描き変えていかなければなりません。

そうして地図を作っていくと、相手が聞きたい内容の全体像が知ることができます。そうすれば、自分が何を話せば相手の期待に応えられるかも見えてくるのです。

自分が伝えたいことを「文章化」で知る

しかし相手が聞きたい話ばかりしていても、こちらが伝えたいことには行き着けません。説明の中には自分が伝えたい話も組み込んでいく必要があります。

●そもそも「何を伝えたいのか」はわかってる?

ところが説明下手な人には、ここでも大きな問題があります。それは、そもそも自分が何を伝えたいのかがわかっていないということです。

説明がうまくいかない問題の本質は、多くの場合「言いたいことが決まっていない」ことなのです。
引用:前掲書p122

もし「自分はこの説明で何を伝えたいのか」を一言で端的に表現できないのだとしたら、「そもそも自分は何を伝えたいのか」とさらに自問自答してみるべきです。

そこで「実は何を伝えたいのか、よくわかってないな……」と気づけたのなら、ようやく説明のための第一歩を踏み出すことができます。

●「文章化」で自分と対話する

ではどうすれば自分が伝えたいことを知ることができるのでしょうか。田中さんが著書の中ですすめているのは、文章化するという方法です。

まず自分が説明したいと思う順番、経験したり考えたりした順番で、話したい内容を全て書き出していきます。次にこのうち「これは絶対に伝えたい」「これが話の本質だ」と言えるものに蛍光ペンで印をつけていきます。この際、内容の性質に応じて色を変え、カテゴリ分けしておくと後で便利です。

印をつけられたら、次はカテゴリごとに印のついた部分からキーワードとなる言葉を抜き出します。キーワードをもとに説明の文章を書き起こしたら、最後に改めて説明の順番を検討していくのです。

文章にするためには、自分の頭の中身を整理しなくてはなりません。口頭で話すのとは違い、文章は「何となくこんな感じ」で書くと意味が通らなくなるからです。そのため前述のような手順で文章化していくと、漠然としていた自分の伝えたいことが、どんどん整理され、具体化していくのです。

説明はもっと上手くできる

ここで解説した2つのコツ、すなわち「相手の知りたいことを知る」「自分が伝えたいことを把握する」をマスターするだけでも、「誰に説明してもわかってもらない」という説明下手からは脱出できるはずです。

しかしもっと上手く説明できるようになりたいのであれば、この2つだけでは不十分で、『一番伝わる説明の順番』で詳しく解説されているテクニックを一つずつマスターしていく必要があります。

「説明する」というシンプルなのに難しい技術を、さらに磨いていきたいと思う人は、ぜひ田中さんの著書を手にとって読んでみましょう。

参考文献『一番伝わる説明の順番』

[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部