ドヤ顔の白鵬「猫だまし」はビジネス最前線の生きた教材!?

 相撲の奇襲戦法の「猫だまし」がなぜか注目されている!

「猫だまし」は相手の虚を突くかく乱戦法で、奇襲の色合いが強い捨身の技。

大相撲九州場所。関脇・栃煌山を相手に「パチン!」と目の前で手を叩き「猫だまし」二連発の 横綱・白鵬。取材陣にドヤ顔で「勝ちにつながったので、うまくいったと思う」と笑みを浮かべ、さらに「一度はやってみたかった」とも・・・

風格と品性が求められる横綱の珍技にバッシングの嵐が起こったのは、当然のことか・・・ところがビジネスパーソンを相手に実践的な「How to」を提案しているベテラン編集者は、「猫だまし」について興味深い見方をしています。

かく乱と奇襲戦法はビジネスの最前線、とくに投機的な現場ではそうしたスキルや駆け引きが、勝つか負けるかを左右します。非難もいいけれど『猫騙し』の戦法を角界ではなく、ビジネスの世界に置き換えてみたらどうでしょうか。
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奇襲作戦に打って出た白鵬の本音と、周囲の反応とのギャップ

■白鵬 「九月場所で休場した白鵬は、横綱相撲をかなぐり捨てても今日の一番に勝ちたいと思ったのではないか。勝負師の意地を見せた」とスポーツ記者。
しかし一方では「あの技で勝てたことがうれしそうで、まるでトリックスターのようだった。自分に有利な体勢を作るための、策士の顔が鮮明に見えた」。

■栃煌山 二度も「パチン!」やられた栃煌山は「あれは頭にはなかった」と当惑気味。角界を始め関係者は「横綱としてやるべきことじゃない」と非難轟々。

■周囲 「猫だまし」の本家・舞の海が「ファンサービス」と言えば、漫画家で評論家の小林よしのり氏は「色んな技を試して、楽しんでいるのだとしたら、相手力士への侮辱」とキツーイ一発。安倍政権の運営も「『猫だまし』みたいな卑小な手口。逃げるばかりの政治をしている」と政権批判まで飛び出した・・・

そもそも「猫だまし」とはWikipediaによれば、猫じゃらしをネコの前に持っていくと、獲物と間違えて二本足で前足をバタバタさせる。本物の獲物とだまされて、中腰のまま立ちすくむ姿勢から「猫だまし」の言葉が生まれたとの説明。相撲では相手をかく乱させるための奇襲戦法で「腰砕け」や「つきひざ」を呼び込むための技だそうです。

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角界は「表と裏」「建前と本音」「体裁と本音」が重んじられる世界。それらの暗黙の掟を最高位の横綱が破ったことで、大騒ぎしています。しかし土俵には力士や部屋の深謀遠謀が渦巻いており、勝ち敗けは彼らの経済活動に直結しています。「猫だまし」は状況を有利に導く、突破力のある戦法なのです(編集者)。

 「流行仕掛け人」秋元康氏が「猫だまし」にこだわった訳

「日常に潜んでいるヒットの手がかりを掴む」名人のAKBプロデューサー秋元氏が、曲名もズバリ「猫だまし」の作詞をしていたのは、ビックリポンです。

AKB48の派生ユニット「渡り廊下走り隊」(2014年2月解散)が10年10月に出した初アルバムに収められおり、♪みあって、みあっての掛け声が印象的。

秋元氏お得意の恋の歌で、主人公は奥手の女の子。相撲の「猫だまし」をイメージした男女の構図で、奥手の子は早熟な彼の奇襲作戦に翻弄される内容です。

♪フェイントかけた   I LOVE YOU!   猫だましパンとひとつ
両手を合わせて驚かす  出会いがしらのこの恋は

なんだか栃煌山相手に「パチン!」とやる白鵬の姿が目に浮かぶようです。

AKBの「猫だまし」は4、5年前に作られており、秋元氏は「猫だまし」という言葉の響きや技の持つ意味、意外性に創作意欲をかき立てられたのでしょう。タイトルの面白さや恋のテクニックとしての『猫だまし』」は、秋元流の味付けかも。相撲の技をモチーフにしており、楽曲を聴いたときは驚いたものです。当時、秋元氏のヒットの手がかりを掴む手法が、話題になりました(音楽記者)。

時代に寄り添いながら、未来を予見し、どちらかと言うと〝真逆〟のポジションで状況を俯瞰視し、若い男女の揺れる胸の内を活写し続けてきた秋元氏。

「猫だまし」という見方によっては狡猾でリアルな相撲技を題材に選んだことに、編集者は「相手との関係性や奇抜な戦法、状況を一変させる突破力に秋元氏は、インパクトを感じたのかも知れない。ビジネスパーソンも『猫だまし』的発想に触れ、自分なりのアレンジをしたらどうだろうか」と力説しています。

ビジネスパーソンは出会いがしらの「パチン!」をどう思う?

The two colleagues working together at office on gray background

「猫だまし」の戦法をビジネスの現場の手法としてビジネスパーソンに提案するのは興味深いけれど、飛躍し過ぎていない?―との声が聞こえてきそうです。

セルフマネ―ジメント力が足りないため自己改革に取り組んだり、交渉術のスキルを習得したり・・彼らにとって「猫だまし」的発想は可能なのでしょうか。

「パチン!ってお笑い芸人の瞬間芸みたい」と拒否反応もありますが、有能なネゴシエーターを目指すならば「猫だまし」の学習効果は期待できる、と前述した編集者や営業コンサルタントは、彼らの経験則や持論を披露しています。

ユーモラスにも見える相撲技を、ビジネス現場のスキルに変える秘策とは・・・

土俵が舞台の「猫だまし」がビジネスの現場に有効か?

ビジネスの現場で戦略的なセルフマネ―ジメント力のアップや、有能なネゴシエーターを目指すにしても、「言葉の力」は限りなく大きいものがあります。

ところが相撲の「猫だまし」は、白鵬―栃煌山の取り組みを詳述したように、土俵上では行動(肉弾戦)だけで、言葉は発せられません。その奇襲戦法を土俵から離れてビジネスの現場で有効活用しょうという訳ですから、ハードルは高く、頭の体操が必要になりそうです。あの技のどこにヒントがあるのでしょうか。

確かに交渉の現場ではお互いのル―ルとして〝相手をだます〟ことは絶対にやってはならない行動です。さらに交渉相手を威圧し、現場をかく乱することは、ビジネスの最前線では〝相手を敵視する〟とみられ、交渉自体が成立しません。それを承知でビジネスの手法に「猫だまし」の有効性を唱えるのは①交渉の席では機先を制して有利な環境が出来る、②終始状況をリードし、相手の心理的なダメ―ジを狙い、次の一手が打てるメリットがあります(編集者)。

編集者は「パチン!」の技をイメージしながら、言葉でのフェイントを掛けるなど、ビジネスの現場で心理的な面で優位に立つことが狙いーと強調しています。

「当の編集者が理論詰のビジネス本ではなく、白鵬が見せたトリッキーな戦法や実践力にこだわるのは、実際の交渉で使える有効なヒントや手法があると確信しているからでしょう。実践論としてどう組み立てるかですね」(メディア評論家)。

もちろんビジネスの現場では、お互いの置かれた立場や金銭的利害、オプションの有無や感情的対立が、交渉の際の重要な要素になるのは当然な事です。

その上で「猫だまし」の意外性が活用出来ないかと、大胆な発想にビックリ。ただ秋元氏も「ILOVEYOU猫だまし」と恋の歌を作っているのですから・・

 ゲームファンも仰天した「猫だまし」の波及効果はあるの?

横綱の品格や品性を問われた白鵬は、はやく忘れたいことでしょう。ただ、勝負がついた後、してやったりと笑顔を見せた大横綱の本心はわかりません。

2015年11月17日、九州場所10日目。関脇・栃煌山との取り組み。「猫だまし」で勝ったことは、白鵬の胸の奥底でそっと封印されることでしょう。

あの一番がもう少し前に起こっていたら、今年の流行語大賞にノミネートされたはず。当事者や関係者にとっては、話題の俎上にのるのは嫌でしょう。ただ『猫だまし』のインパクトもあって、いまはそんな時代なの?ーと思った人もいたはず。言葉そのものが独り歩きする可能性は大です。ゲームファンもゲーム化されているだけに、あの技が出た時はビックリしたようです。白鵬の奇襲作戦は多くの人や現場に、話題やヒントを提供した事件です(メディア評論家)。

ゲームファンには「ポケットモンスター」シリーズで「ねこだましゲーム」はお馴染み。「100%の確率で相手をひるませる」などの効果が記載され、相撲の奇襲戦法をモチーフに、コンテンツは進化を続けているようです。

「ゲームファンは横綱が自身の猫だましスタイルで勝ち、ゲーム上の奇襲作戦を実感したので、新作・白鵬版の登場を期待しているかも」(メディア評論家)。

「猫だまし」が教えた相撲道ならぬビジネススタイル

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ビジネスパーソンも各項に「猫だまし」のてんこ盛りで、いい加減嫌になったかも知れません。確かに言葉の響きは、グロテスクでスマートではありません。

その奇襲作戦のビジネス転用について、ベテラン編集者はこう結論づけます。

交渉の現場で言えば、相手との関係性を計り、自分の立ち位置や話し方、核心部分への接近法などのスキルを瞬時に構築。そうした行動規範の骨が『猫だまし』には隠されています。白鵬の取り組みから離れて、ビジネスのテクニックとしての奇襲作戦や、かく乱戦法を自分なりに組み立てるということです。

もちろん異論や反論もあるでしょう。あまたのバッシングを受けた「猫だまし」をあえてヒントにしなくても・・との声も聞こえそうです。

しかし日本語には「反面教師」「真逆」という奥深い言葉があります。「だまされた」と思って推考することも、視界が広がるかも知れません。ビジネスとくに金融関係の最前線は「勝つか、負けるか」のバトルではないでしょうか・・・

Career Supli
自分が仕事の中で猫だましをやるとしたらどんなアクションになるのか想像するだけでも楽しいですね。
[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸陽三 [編集]サムライト編集部