決めてはミラーニューロン!?情報が届かない時代の共感とは

あの村上龍氏と気鋭のデザイナー渡邊康太郎氏の「内なる言葉」

一流企業が人気作家やクリエイターなどを起用して、企業イメ―ジアップの広告が流行っています。筆者の体験を基にエッセイ仕立てで、その企業の〝おもてなし〟や〝得意技〟を盛り込む構成ですが、心情あふれる記事が目立ちます。

例えば村上龍氏。NTT都市開発の新聞広告で取材法や小説のモチーフに触れながら、こう綴っています。タイトルは「浮かび上がる希望」。

いつからか、常に最悪の事態を想定して仕事をするようになった。危機感が主題となることが増えたし、情報への切実な飢えが生まれた。臆病になったわけではない。最悪の事態を考え、イメージすることで、結果的に、希望という概念がより鮮明になり、作品に反映されるようになった(抜粋)。

同社の「都市インフラを守る」という企業理念が下敷きになっていますが、村上氏が作家としての手法に言及しているのには、ビックリさせられました。

また、三越伊勢丹は一線で活躍中のデザイン・エンジニア渡邊康太郎氏を同じく新聞広告に起用。同氏はシリーズ「もてなし教室」の企業メッセージの中で「もてなす前に相手を知る。共感する」と持論を自在に展開しています。

「人間は、共感を許された贅沢な動物で、脳科学的にはミラーニューロンが関係してるんじゃないかと思います。もてなす前に相手を知る。一方向の矢印じゃなくて、お互いの共感圏みたいなものをいかにお客様と作れるか。想像力の飛距離を伸ばそう。共感圏を広げようということです」(抜粋)。

「ミラーニューロン」とは、他人の考えていることが分かったり、他人と同じ気持ちにさせたりする脳内細胞のこと。「人と人との関係性が希薄な時代にピッタリ」と行動学的に注目されています。

不確実な時代だからこそ情報の取捨・選択が重要

Group of Diverse People Discussing About Social Media

情報過多のネット時代にいながら「情報への切実な飢え」を訴えた村上氏。

渡邊氏は社会との関係性について言及。根拠のない不確実な言葉が氾濫する中、精神性を強調し「もてなし・共感」の重要さを強調しています。

メディア評論家は両氏の論考について、こう分析しています。

「いまは確実に言葉の色合いや機能性が危うくなっています。それでも戦略的に言葉を使わなければならない時もあります。私たちはネット時代で〝かゆい所に手の届く〟アプリの利便性の恩恵を受けながらも、幸福論までは語っていない。アンバランスな時代では、共感力や情報の選択が重要になっています」

私生活でお騒がせの作家・辻仁成氏の「つぶやき」が話題化

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画像出典:twitter

企業がSNS時代に「メッセ―ジをする体質」にシフトしている一方、ツイートでは個人の特異な生活パターンや、人生体験を発信している人が多くいます。

とくにその発信者がメディアで取り上げられている有名人の「つぶやき」となると反響も大きく、メディアの格好の標的にもなります。

辻氏の「パリからのツイート」は心揺さぶられるーと評判になっています。同氏は人気女優と離婚し、多感な時期の長男と二人だけの日々。作家ゆえの巧みな言葉遣いに、「本音はどこに?」とも言われています。

「かなしみをわらいとばせ」はタイタン社歌のサビの部分の歌詞なんです。彼らは芸人だから、かなしみをわらいとばすのがお仕事。泣き顔を笑顔に変えるエンターティナー。だから元気が出る曲に仕上げました。社長のOKが出たら世に出ます。笑 お楽しみに!

 

一喜一憂しない、というのがパパさんには無理。一喜一憂は仕方がない。喜んでは落ち込むのが人間なり。むしろ、七転び八起き、で行くよ。今日も、これからも、ずっと。笑

いずれも直近のツイートですが、文中の「笑」が自虐的だったり・・・
つぶやきが誰に向けられているのか、メッセージ性が強いのが特徴的です。

共感の広告やつぶやきの先にある「心を打つ」言葉とは・・・

SNSが種々多用な意図や目的で使われているのは、もちろん承知しています。
記号や符丁のように言葉が簡素で事務的に操られることは日常茶飯事です。

「それでも限られた文字数で心の叫びや、ほとばしる感情の吐露に接することがあります。無機質なソフトとは対照的に、言葉を操る人が詩的な表現を駆使しているようです。日常の営みの中で、心が詩的ものを渇望しているのでしょうか。何気なく口走った言葉に重大な意味が隠されたりして・・・刺激的です」

これはネットサーフィンを繰り返しながら、「言葉探し」や「時代の気分」を追っかけているシンクタンク研究員の分析です。

オウンドメディアの発信力を企業が強化しているとき、「よりヒュ-マンなコンテンツを模索する中、共感が触れ合いのキーワードになっている」(同研究員)

人工知能ロボットの登場で「共感」の概念は変わるでしょうか

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もともと「共感」とは、他者と喜怒哀楽の感情を共有することを意味します。

共感力は人間関係で一番大事な親和性のある感情で、ビジネスには欠かせない「人間臭い」ものとも言われています。

SNS時代に様々なアプリが生活の利便性を向上させ、企業や個人は「何を売りにすればいいのか」と自問し、その答えに「共感」がトップを占めました。

辻氏の〝心ゆさぶられる〟つぶやきに、こだわり過ぎた嫌いがあります。
ただ同氏のあらわな感情の起伏に、心惹かれたのも事実です。

さて、いよいよ話題の「人口知能ロボット」君の登場です。

真打登場かどうか分かりませんが、開発者はあっと言う間に彼を生活の表舞台で闊歩させ、初歩会話さえも披露するなど、芸達者な一面を見せつけました。

いまや時代の主役に躍り出たーとメディアやネットで話題のロボット君です。

「ロボットの制御プログラムの開発やスキルの向上は驚異的。もはや子どものおもちゃではなく、少子化時代の〝お助けマン〟の役割を担おうとしています。人工知能に共感のメカニズムをインプットするのは不可能でしょうが、人間がロボットにほめられるとか、激励されるとか・・私たちは不思議な感情に見舞われるかも知れません。開発者などの倫理観も問われるでしょう」(科学記者)

人工知能と共感は対極にありますが、知能の学習効果に関心が高まります。
近い将来、ロボット君とどんなお付き合いが待っているのでしょうか。

SNS時代だからこそ「共感」」について語り合おうーとの動き

いまは瞬時に情報が拡散し話題化され、本当のことが後追いしてくる時代です。

限定されたツイートの字数で、実際の輪郭を鮮明にするのは無理があります。
しかし棒立ちの言葉から断片的ながら「いま」が伝わってくるのも事実です。

そのためツイッターは速射砲のように言葉を乱打しながら、触感を確かめようとします。まるで秒速マシ―ンに乗っているように人の想いも揺れ動きます。

「情報ツールの進化で相手が見えない時代だから、共感が問われています。希薄になった人間関係を素直な感情をぶっつけあって再構築する。より人間的なことをネット時代に再確認したからではないでしょうか・・」(メディア評論家)

いずれ「共感」や「共感力」のアプリが開発されれば試してみたい。そして「妖怪ウオッチ」に挑戦した初音ミクに「共感」をテーマに歌ってほしい。笑

[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸陽三 [編集]サムライト編集部