「金は天下の回りもの」は嘘だった? 華僑に学ぶ本当の意味とは

中華料理でも行く?

今日は何を食べようか?と迷えば、和・洋・中どれにする?という話になります。今日のお店を決める時に中華料理は私たちの選択肢の中に自然と入っており、きっとどこか外国に行った時にも、中華料理は一般的な選択肢として会話に出てくるでしょう。

しかし、全世界どこに行っても中華料理店があるのは「華僑」がグローバルに商売をしているためです。華僑とは東南アジア中心に、世界各地に移住して商売を行う漢民族の事で、彼らは商売にとても長けています。

一体なぜ華僑は世界中どこに行っても商売を成功させられるのでしょうか?
華僑の商売のコツ、生き方を見てみましょう。

天下とは?

「金は天下の回りもの」よく聞く言葉ですが、どういう意味で捉えていますか?大辞林によると「金銭は一か所にばかりとどまっているものではなく,世間を回って動く。金は世界の回りもの。」と書いてあります。では「天下」とは具体的にはどこなのでしょうか?漠然とした言葉ですが、華僑の間ではしっかりと天下の範囲が意識されているようです。

華僑は富を独占するのではなく家族や顔の見える仲間内で回すことでお金を外に流さないようにします。一人が儲かれば仲間内の困っている誰かに与えたり、誰かの新しい商売の援助に使うことで、さらに富を倍増させながら華僑は栄えてきました。

華僑が他人を自分の仲間と認める条件は「ハードワーカー」「知的」「短期的利益を追求して裏切ることがない」の3つです。ただ単に友人というだけではなく、この3つの条件の揃ったお互い利益を生むことのできる人物だけを囲い、自分の天下とします。

このように、華僑のいう「天下」とは世の中のことではなく、自分の周りにいる家族・信頼できる仲間を囲って作り上げたコミュニティのことです。お金を流れるままに流すのではなく、囲いを作ってその中で循環させるのが華僑流の「金は天下の回りもの」といえそうです。

クリティカル・マスの法則

businessman and businesswoman shaking hands

華僑は人脈からお金を生み出しますが、それ以上に人脈から知識を引き出すことの達人です。彼らは何かの分野に特化した専門家の人脈を得ると、メンターとして徹底的に頼ります。そしてその知識を独占することなく他の仲間にも紹介し、利用させます。

これは単に仲間意識や抜け駆けをしないためではなく、ひとりのメンターを皆で使うことで、評価を共有し、監視することができ、メンターは次々に顧客を紹介してもらえ、儲けることができるのです。

華僑は築いた人脈をこうして雪だるま式に大きくしていきます。人が人を呼び、人脈が育っていくとある時からより知識の深い人物や大きな財を持つ人物と出会います。華僑はこの「物事が一定の段階に達するとそこからは急激な成長を遂げる」という「クリティカル・マスの鉄則」が人脈にも適用されることを知っているため、自分の囲いの中に入れた人物とは徹底的に付き合うのです。

知り合いのお店だけでお金を使う

iStock_000041656234_Small

そして華僑はお金を使うときこそが商売のための人脈作りのチャンスだと考えています。とにかく知り合いのところでする買い物を徹底しており、服でも車でも知り合いのお店で購入しようとします。

決して友人価格で安くしてもらいたいからではなく、同じお金を使うのであれば人脈作りをしたいと考えているからです。もし、欲しい品物を取り扱っている人がいなければ知り合いの知り合いを探してでも人脈を作ろうとします。

華僑は役に立たない「死に金」を大変嫌い、次の商売に繋がる人脈が得られればどんな買い物であろうと、そのお金はこの先も生きるお金になります。お金を儲けるにしても使うにしても、数値以外に表れる損得までシビアに計算するのが華僑のやり方です。

先に相手に得をさせ良いお客さんとしてサービスしてもらい、さらに「私と付き合うことは得ですよ」と刷り込むことで良い情報や仕事の舞い込むチャンスまで得られるのが華僑のお金の使い方なのです。

実践華僑テクニック

買い物の他にも華僑は様々なテクニックを駆使してコミュニケーションをとります。商売のヒントを探し実際に華僑に弟子入りした経験のある大城太さんは著書、一生お金に困らない「華僑」の思考法則で華僑の教えをこのように書いています。

「声を制するものは人を制する」
大音量で行われる街頭演説の内容を覚えていますか?逆に喫茶店の隣の席でコソコソと話されている会話にはつい聞き耳を立ててしまったりなんてことありますよね。大きな声は雑音と化し聞き流されてしまうが、小さな声で話せば相手は聞き取ろうとして集中して聴くようになります。相手の関心を引き付けたいなら小声で話すべし。

「無表情で相手をコントロール」
何を考えているのか分からない相手を前にすると人間は焦ります。つい先ほどまで歓談していたのに相手が突然無表情になれば誰でも一体どうしてしまったのかと心配になり、それが何か質問をされた直後だったら早く相手がまた笑顔になるような答えを探してしまいます。笑顔と無表情の緩急を付けることにより相手の計算を狂わせ、精神的に有利に立つことが出来る。商談の最後には無表情で決断を迫るべし。

「好きじゃなくても犬を飼う」
犬を飼うことは会話の糸口を作るためにとても良いとされています。犬を連れて外を散歩すると犬好きの人が声を掛けてくる事が多い為、そこから親密な関係になることも多いのです。犬ではなくても共通の話題があれば良いのでは?と感じるかもしれませんが、子供の話題や趣味の話題では優劣の問題が発生してしまいます。犬だったら「可愛い」という個人の価値観だけなので優劣の問題で気を使う必要がありません。人付き合いの良いツールとなってくれる犬を飼うべし。

中国と日本ではかなり文化が違うため、いつでも使えるテクニックばかりというわけではないですが、相手と状況によってはかなり効果が出るのではないでしょうか。どのテクニックも人の関心を引き、有利なポジション取りをするためのものです。理屈だけでも覚えておけば応用が利きそうです。

華僑の扱うお金

華僑はたくさんの種類のお金を取り扱います。国を跨いで商売をしているため様々な通貨を使うということもありますが華僑は、回収できるお金あげるお金ビジネスのためのお金嗜好品のためのお金人の財布に貯めるお金など、同じお金でも用途によって認識をガラリ変え、それぞれ扱い方も変えます。

華僑は「ビジネスのためのお金」に関しては必要だと感じれば迷うことなく出します。お金を生む道具や仕組みにケチっていては富は増やせないという考えが骨の髄まで染み混んでいるからです。

「嗜好品のためのお金」は欲しいと思ったものに対して迷いが生じたら「買おうか、買わまいか。本当に必要か?本当に欲しいのか?」と考え込む時間が無駄だと捉えるため、迷った時点で使いません。無駄遣いをする事よりも時間を無駄にする事の方が長期的にお金を儲ける上で無駄だと考えているのです。

「人の財布に貯めるお金」は人と食事をした時に自分の財布からおごるお金のことです。「人におごったお金は消えるのではなく、人の財布に移動するだけ」というのが華僑の感覚なので、華僑の間には「割り勘」という概念がありません。相手に奢れば、相手が奢り返すために次の場が自然と設けられ距離が縮まりますし、人の財布にお金を入れておけば自分のお金がない時には躊躇なくおごってもらうことができます。

おごる、おごられるが当たり前というのは人間関係もとても密なように感じますが、華僑はそこに一切の感情を挟みません。華僑が重視するのは感情ではなく「経済的合理性」ただひとつなのです。

よく汗水垂らして稼いだ「きれいなお金」という言い回しがありますが、華僑はお金はお金であると割り切っているため、地道に貯めたお金であろうと資産運用で得たお金であろうと一切区別をしません。どのようなお金を扱うにしても結果論で見るのです。

お金の価値をただ単に「その時自分の手元にあるお金」だけではなく、先を見通し自分の周囲に配置した分まで含めて、「経済的合理性」をもとに計るのが華僑のお金の取り扱い方です。

頑張ることに意味はない、自信がない人ほど頑張ろうとする

出典:Amazon

長い歴史に裏付けられた効率化に対する自信がある華僑だからこそ言える言葉です。
どうやら根性論で頑張るところにではなく、効率化を徹底して澄ました顔をしているところにお金は集まってくるようですね。

どんな時にも長期的な目で損得を判断し、お金を貯め込んで安心するのではなく常に増やそうと効率的に動かすのが華僑の商売のコツです。もっと実践的に華僑の教えを学びたい方には大城 太さんの最新の著書、『失敗のしようがない 華僑の起業ノート』をおすすめします。

華僑から学び、ほんのちょっとだけ人との付き合い方、お金の使い方、時間の使い方を意識すればあなたの周りのお金の動きも変わるかもしれませんね。

[文・編集] サムライト編集部