メモを単なる「記録」から「価値ある情報」にする5つの方法

単なる記録は使えない

スマートフォンでのメモは他の端末とも共有できるなど、利便性においては非常に優秀です。しかしそのメモは得てして単なる記録で終わりやすく、メモの内容はおろかメモをしたことさえ忘れてしまうこともしばしば。実際筆者はメモ魔ですが、スマートフォンでのメモばかりなせいか、メモを見返していて「ああ、こんなことメモしていたなあ。でもこれ何のメモだっけ?」となることが少なくありません。

それもそのはず、記憶力日本選手権大会で5度の優勝経験を持つ池田義博さんによれば、ノートなどに手を使って書くメモの方が記憶にも残りやすく、かつメモを記録から価値ある情報へとグレードアップさせやすいのだそうです。

ここでは「メモは紙に書くものである」という前提に立ったうえで、池田さんの著書『記憶力日本一を5度獲った私の奇跡のメモ術』から、筆者が「これは使えそうだ!」と感じたメモ術を5つ紹介します。

記憶に新しいうちに情報密度を上げる

「とっておしまい」のメモは、単なる記録で終わってしまいます。なぜならメモをとったからと言っても、それを自分の記憶としてインプットできたわけではないからです。有名な「エビングハウスの忘却曲線」でも言われているように、人間の記憶は100%覚えた時点から急速に失われていくからです。

そこで池田さんは一度とったメモは、遅くとも次の日中に見直すのだそうです。見直しを忘れないようにするために、わざわざスマートフォンのリマインダー機能を設定する徹底ぶりです。なぜならこのタイミングであれば、メモに紐づくその場の雰囲気や思いつき、疑問点などを思い出せるからです。

そうして見直した際に思い出した内容をメモに追記していけば、メモの情報密度を引き上げることができるので、さらに次回見直した時にもより鮮明に思い出せますし、メモをもとに思考や発想を発展させることも可能になります。

記憶の「手がかり」を残す

「人間は忘れる生き物である」という前提に立ってメモをとるだけでも、メモの情報としての価値を上げることができます。

例えば池田さんは、メモの先頭には必ず日付を書くそうです。実は日付は非常に強力な記憶の手がかりとなる情報で、日付さえあればメモをとったときにどこに誰といて、何をしていたかといったエピソード記憶を芋づる式に思い出すことができるのです。

SNSをしている場合は、各SNSに残っているつぶやきや写真を辿れば、さらなる記憶の肉付けも可能になります。「2018年10月16日」などと丁寧に書かなくとも「181016」といった数字の羅列でメモをとるだけでも十分記憶の手がかりになりますし、「1810161558」と時間まで含めれば、より有力な手がかりになるでしょう。

このほか、会議の出席者の氏名や席順、メモをとっているときの感情なども記憶の手がかりになり得ます。そうしてメモの意味や詳細につながるメモを残しておくことで、「不十分な記録」としてのメモを、「価値のある情報を生み出す記録」として役立てられるのです。

メモを深めるための「3列法」

セミナーに参加して、パワーポイントや板書の内容を一生懸命写し取ったはいいものの、家に帰って見返してみると「これなんのことだっけ……」と途方にくれた経験のある人も多いのではないでしょうか。「3列法」はこうした事態を未然に防ぎ、とったメモを深めて情報としての価値を作り出すメモ術です。

やり方は驚くほど簡単です。ノートに2本の縦線を引き、ページを3列に区切るだけです。このときメインのメモ欄となる一番左のスペースは大きめに確保します。ここまでを準備の段階でやっておき、本番では一番左のスペースにメモをとっているときに思い浮かんだ疑問や感情、アイデアをその都度真ん中の列に書き込んでいきましょう。

すると「パワーポイントや板書を写すだけ」という単純作業に没頭することなく、「なんでそうなるんだろう?」「これって前にもどこかで聞いたなあ」「自分はそうは思わない。なぜなら……」といったように思考が働くようになります。これらがメインのメモに対するエピソード記憶となるうえ、その場でもある程度深く考えるので、比較的強い記憶として残るのです。

残る一番右の三列目は、後で使います。すなわち真ん中の列にメモした疑問点に対する答えや、問題意識に関する解決策のアイデアを、後で調べて書いておくのです。これにより記憶がさらに鮮明になるだけでなく、思考は発想をさらに深めていくことができる価値ある情報としてメモを役立てることが可能になります。

「エレベータ式」でアイデアを生み出す

池田さんは新しいことに挑戦したり、新しい技術を身につけたりするとき、決まって次の方法を使うのだと言います。

その知識や技術はなぜこうなっているのか、という疑問を繰り返しながら、どんどん上位の概念をたどっていき、自分なりに納得できるレベルでの本質を理解しておくというものです。引用:前掲書p101

こうしてエレベーター式に思考を発展させていくと、いずれは知識や技術の本質に到達します。本質さえつかんでいれば、既存の方法論以外のオリジナルの方法論を考案したり、既存のアイデアを組み合わせた新しいアイデアを生み出したりすることも可能になります。

例えば「自分でもできるダイエット法」をエレベーター式の発想法で作るとしたら、以下のように考えられます。

これらをメモにしておけば、エレベーターの途中からアイデアを考え直したり、エレベーターの途中に項目を書き足したりして、さらに情報としての価値を高められます。

アイデアが出やすい場所を知っておく

池田さんは車の運転中→ジョギング中→入浴中の体を洗っている時の順に、いいアイデアが浮かびやすいのだそうです。そのためせっかく思いついたアイデアを忘れないように、車の運転中とジョギング中はボイスレコーダーを使い、入浴中は防水仕様のメモ帳を常備して、全てメモするようにしているのだとか。さすがの徹底ぶりです。

しかし何も万人が運転中やジョギング中、入浴中にいいアイデアを思いつくわけではありません。就寝前やキッチンのシンクを磨いているとき、ぼんやりテレビを見ているときという人もいるでしょう。筆者の場合は筋トレをしている時にいいアイデアが思い浮かぶ傾向があります。

大切なのは、自分がどんなときにいいアイデアを思いつきやすく、その状況でアイデアをメモするためにはどんな方法が適しているのかを知っておくことです。それさえ知っておけば、せっかく思いついたアイデアを無駄にせず、活用できるようになります。

とり方次第でメモの価値は何倍にもなる

単なる記録で終わってしまうメモの中には、仕事やプライベートを変えるようなアイデアや情報としての価値を持つものが紛れています。

ここで紹介した方法や、池田さんの著書『記憶力日本一を5度獲った私の奇跡のメモ術』で紹介されているようなメモのとり方を実践すれば、こうしたメモを無駄にせず、価値ある情報へと発展させることができます。これからはどうせメモをとるなら、役に立つメモをとっていきましょう。

参考文献『記憶力日本一を5度獲った私の奇跡のメモ術』
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[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部