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キャッチコピー作るのって、難しい……
企画書のキャッチコピー、ポスターのキャッチコピー、本の帯のキャッチコピー、商品のキャッチコピー……。
現代はさまざまなキャッチコピーであふれています。
「キャッチコピー」という言葉を辞書で引くと、「消費者の心を強くとらえる効果をねらった印象的な宣伝文句」(Weblio辞書より引用)とありますが、現代はそれだけに留まらず、より多くの人が使用している言葉であるとも言えます。
それは、広告業界やマスコミ業界にいる人のみならず、あらゆる業界の人が、自らキャッチコピーを作るのが当たり前になっているからではないでしょうか。
あるいは、自分ではキャッチコピーとは気づいていないながらも、その言葉が「相手(受け手)に何かを訴えたい、ワンフレーズ」であるならば、それはキャッチコピーであると言えます。
今回は、相手にガツンと響くワンフレーズを伝えるための方法について、元電通のコピーライター・山本高史氏による『伝える本。─受け手を動かす言葉の技術。』と、元博報堂のコピーライター・佐々木圭一氏の『伝え方が9割』の2冊を紐解きながら、紹介していきます。
「このキャッチコピー、ウケるでしょ」は絶対にウケない!

山本氏は、「届くけど伝わらない言葉がある」(231ページ)と、本書で述べています。
いろんな人に響くようなキャッチコピーを作りたいと思っても、まずはそんなことをは不可能だという認識をすることが大切です。
「このキャッチコピー、面白いでしょ」あるいは「かっこいい」「ウケる」「流行る」「バズる」……いろいろな言い方ができますが、これらの言葉すべて、クライアントと合意するべきポイントではない、と山本氏は述べています。
確かに、流行のさきがけになりそうな気概が感じられますが、それが「面白い」か否かは、年齢層によって異なることが多く、例えば、自分が面白いと思っても、クライアントは全く面白いと思わないことが多々あります。それは、自分独りよがりの「面白いでしょ」に過ぎません。
さらに言えば、その「面白いでしょ」をどんなに突き詰めていっても、クライアントが「面白くない」と思う以上、「面白い」に変わることはほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
「御社の利益を上げるために必要な面白さ」であれば、クライアントも「面白い」という可能性が出てきます。
広告(キャッチコピー)は、「受け手が全て」であり、「広告は歓迎されていると思ってはだめ」と山本氏がで述べているように、いかに受け手に寄り添った言葉を作るかが重要になってきます。
キャッチコピーは、受け手の「言ってほしかった!」を言語化すること

山本氏は、本書で「ベネフィット」という言葉の重要性について述べています。
「ベネフィット」とは、お客さんが商品から得られるメリットのことで、つまり、「受け手の言ってほしいことを言ってあげる」ことです。
この商品はこういうところが魅力ですよ、と伝えるのはたやすいのですが、
①それは受け手が本当に欲しがっている魅力なのか?
②その魅力をより伝えるための言い方があるのではないか?
効果的なキャッチコピーを作る鍵はこの2点にあります。
また、キャッチコピーのみならず、あまりよくないことをうまく伝えるための方法としても使えます。
①受け手が嫌がらないような言い方にするには?
②よりダメージが少ないように伝えるための言い方があるのではないのか?
こういったことにも基づいて言葉を選ぶだけでも、伝え方が大きく変わってきます。
それは、全ていかに受け手側にたって物事を考えることができるかにかかってきます。
山本氏はそのために必要なこととして、以下のことを挙げています。
「そのために『受け手の状況』を知り、『共有エリア』に経ち、『受け手の尺度』を共有し、『自分が受け手だったら、どのように言って欲しいか?』と想像すること」(前掲書、(238ページ)
受け手の状況を知るために、ターゲット分析が必要で、どんなターゲットなのか知るだけでなく、趣味・嗜好・年収(どんなことにお金を使うかなど)を知る必要があり、ただの想像だけで「面白い」キャッチコピーを作ることができないことがわかるのではないでしょうか。
言葉をより具体的に“伝える”方法8つ
さて、ここからは、具体的な方法について、佐々木氏の『伝え方が9割』にある内容から紹介していきたいと思います。
佐々木氏によれば、心を動かすコトバの法則が、以下のようにあると言います。(前掲書、34ページより)
①個人発信力
全員に響く言葉ではなく、より具体的な情報にすることで、狙ったターゲットに響く言葉にすることが重要です。②正しいコトバ遣いでなくてよい
例えば、「てにをは」や「ら抜き言葉」など気にする必要はなし。
辞書に載っていなくても、現代の人たちが使っているような言葉遣いのほうがむしろ、心に響く場合があります。③相手のメリットと一致するようにする
これは、すでに述べたことですが、より相手側にとってメリットのある言い方にするということです。④相手にとってわざと嫌がる言い方にする
③の逆で、わざと目につくような、嫌な言い方にすることで、相手はより具体的にイメージすることができます。例えば「芝生に入らないで」だけだと弱いですが、「芝生に入ると強いにおいの散布剤がつきます」とあれば、誰もが芝生に入るのをためらうでしょう。⑤相手の「認められたい欲求」にチクリ
「残業して○○をお願いします」というのではなく、「あなたのその企画力で、○○をお願いできれば」と言うだけでも全然伝わり方が違います。自分でないと!という承認欲求に訴える内容にすることが大切です。⑥「あなただけの」を押し出す
広告などによくあるのが、この「あなただけ」というフレーズ。「あなたに合った」「あなたのための」という言葉は、カスタマイズしてくれるというPRにつながります。ただ、サービス精神ある日本では頻繁に使われている言葉ではあります。⑦チームワーク化を促す
「さあ、一緒にやろう」とチーム力を促すものです。選挙運動やスポーツなどの広告の際によく使われるものですが、「皆がするなら自分も」と促しやすく、広告以外でもよく使われている手法です。⑧感謝を伝える
感謝の言葉を述べることで、お願いしたいことを暗に伝えるという手法。例えば「いつもトイレをきれいにしていただき、ありがとうございます」という文句を見たことがある人も多いのではないでしょうか。「トイレをきれいにしてください」ではなく、敢えて感謝というプラスの言葉を述べることで、伝えたいことを伝えるという手法でしょう。
より強い言葉にするためのコツ
ここまでは、より伝えるための方法について紹介してきましたが、このほかにも、佐々木氏の本書で紹介されている、「言葉そのものに力を与えるための方法」を紹介します。
例えば「そうだ、京都にいこう」「あ、小林製薬」など、伝えたい言葉の前に、感動詞など何か言葉を入れることを「サプライズ法」と言います。相手の心をここで動かしたい!というときに使うと効果的だと言われています。
歌の歌詞などで何度も同じ言葉を繰り返す「リピート法」も有名です。「会いたくて 会いたくて」など、一言で聞いたらそんなにインパクトがない言葉でも、繰り返すことでリズムも生まれ、より強い言葉になります。
歌の手法で言えば、あえてストレートな言葉を使うことから「赤裸々法」があります。「上を向いて歩こう 涙がこぼれないように」というフレーズも、普段会話をするときなどは使いにくいですが、歌詞や広告など外向けに使用することで、よりストレートに言葉が刺さる、というものです。
そのほか、「これだけは覚えてほしい、○○○」というような、本題の前に注目させる言葉をおく「クライマックス法」や、「他の店がまずく感じるほど、ここのラーメンはうまい」などの「ギャップ法」と呼ばれるものがあります。
これらは広告業界だけではなく、例えばドラマの中の台詞や新聞の見出し、本のタイトルなどにも使われている手法なので、気をつけて見るだけでも、自分のコピー力の向上につながるのではないでしょうか。
普段から周りの言葉に耳と目を傾けてみてください。きっと心にググっと響く言葉が見つかるはずです。それがなぜ心に響くのかを考えることが、キャッチコピー力を身につける近道になるはずです。
参考文献
佐々木圭一『伝え方が9割 』ダイヤモンド社、2013年
山本高史『伝える本。―受け手を動かす言葉の技術。』ダイヤモンド社、2010年
