セブン-イレブンはなぜ圧倒的な売上をあげることができるのか

コンビニ業界市場飽和説?

コカ・コーラやP&G、ユニクロなどマーケティングの上手い企業はいろいろありますが、筆者が個人的にが一番スゴイ!と思うのは、セブン-イレブンです。

セブンイレブンを経営するセブン&アイ・フォールディングスは売上高約10兆円で、日本の流通業界のトップを走っています。その中でセブンーイレブン国内の売上は約3,7兆円で、1日の売上が他の大手チェーンとくらべて12〜20万円も多いという驚異的な売上をあげています。

この売る力は、同社の会長兼CEOの鈴木敏文さんのマーケティング力に負うところが大きいと思います。

2000年代半ばには、業界内外から「コンビニ業界市場飽和説」がささやかれ、セブンをはじめとするコンビニの売上が前年割れを続けた時期がありましたが、そこから見事に復活して売上を伸ばしています。

コンビニのように狭い商圏で商売をしている業態は、日本の消費市場の構造の変化が一番ダイレクトに影響します。

少子高齢化が進んだ時代に、セブン-イレブンがどこに向かっているのか、これからのビジネスの参考になる部分がとても多いと思います。今日はその中でもマーケティング的に、特に注目すべきポイントを、3つあげてみます。

1. 「上質さ」と「手軽さ」の空白地帯を見つける

Businesswoman working and analyzing

従来の流通のPB商品は、ナショナルブランドより安い商品という位置づけが一般的でした。これに対してセブンのPBであるセブンプレミアムは低価格優先ではなく、「上質さ」を追求しました。

そして凄いのがグループ内のスーパーや、百貨店でも同じ値段で売るように指示を出したことです。現場からは相当反対の声があがったようですが「どこで同じ値段で販売しても、お客様に価値を感じてもらう商品をつくる」ということを説いて、結果的に競合他社のPB商品の3倍近い売上になっています。

また、代表的な商品であるおでんなども「コンビニでここまでやるか」と専門家が驚くほど、ぎりぎりまでクオリティを高めています。

だしをとるためのかつお節は、赤道付近の漁場を指定したカツオを、冷凍せずに加工工場に運び、乾燥工程も昔ながらの「手火山式」と「焚菜納屋式」という2段階の乾燥でかつお節専門業者も驚くほどのこだわりを見せています。

弁当も肉の炭火焼き弁当をつくるのも、3年がかりで、炭の研究から始めて本格的な自動炭焼き機を完成させています。

2. 同業他社に目を向けない

Salesclerk of convenience store tidying up goods

鈴木氏は以前、社員がマーケットリサーチと称して、他社の店舗を見に行くことを禁止ていたことがあるそうです。理由は2つあって、1つめは、横を見ずに、ひたすら目の前の顧客ニーズと向き合うことで他社と競争することなく「自分たちの土俵」でお客様と向き合うため。

2つめは、もはや競争は1つの業界や業態のなかだけでなく、まったく異業種から競争相手が現れ、出自の異なる企業や商品、サービスが競い合う時代になっているからだといいます。

そして、このとき重要なのが「お客様のため」ではなく、「お客様の立場で」発想をすることだと指摘しています。顧客ニーズに答えなければいけないというのはだれもが言葉では理解していますが、「お客様のために」という発想をすると過去の経験に縛られた思い込みになる、またどこかで売り手都合が優先されていることが多くなります。

一方「お客様の立場で」考えると、自分たちに不都合なことでも実行しなければいけないからフラットに発想できるといいます。

3. デザインとブランド力の強化

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2010年2月からクリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和氏にセブン-イレブンのデザインのトータルプロデュースを依頼し、1年にも及びブランディングプロジェクトを実施しています。

鈴木氏自ら、佐藤氏と二人だけで何度も打ち合わせを行い、「セブン-イレブンブランドのフィロソフィ」について説明し、さらに、社長以下、現場部隊も入ったミーティングを1年間で30回以上行ったといいます。そうして2011年5月から、オリジナル商品、PB商品の全面リニューアルと平行して、新ロゴ、新パッケージの展開をスタートしました。

その結果、2011年度の既存店の売上は前年の伸びを上回り、前年より1店舗あたりの日販売上が4万円増える、大きな成果となって表れました。

今日あげたポイントをまとめると、同業他社には目を向けず、ひたすら「お客様の立場にたって」商品の質と、コミュニケーションの質を高めるということに注力しているということがわかります。

なんだか最近苦戦しているマックと対照的だなという気がしてしまいました。マックも原点回帰して、うまいハンバーガーを食べさせてほしいと思いますが、世の中の求めるものは、よりホンモノ志向へと傾きつつあるようです。

セブン&アイ・フォールディングスは、2014年度からネット広告予算を前年比の10倍以上にしてネットに力を入れています。リアル店舗とネット店舗をどのように連動していくのか、今後の展開に注目していきましょう。

[文]頼母木俊輔  [編集]サムライト編集部