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メイカーズはこれからが面白い!
「モノづくり」は近頃の日本ではあちこちで見かけるようになったキーワードです。このモノづくりが2010年代初頭から大きな変化を見せつつあります。それが「メイカーズ・ムーブメント」です。今後最重要ワードになっていくであろう「メイカーズ」。ここではこれを、『メイカーズ進化論 本当の勝者はIoTで決まる』で述べられているモノづくり進化の3段階、「モノが売れる」「モノが作れる」「モノゴトで稼ぐ」を取り上げて解説していきます。モノづくり関係者、必読です。
「メイカーズ」とは何か?
「メイカーズ」という言葉が日本でも取り上げられるようになったのは、米『WIRED』誌の元編集長であるクリス・アンダーソン氏が書いた『MAKERS』という1冊の本がきっかけです。「メイカーズ・ムーブメント」は同氏が著書の中で名付けた製造業における大きな変化を示したものでした。高感度センサーやGPSなどの技術スマートフォン革命によって低価格化し、「アリババ・コム」の登場により企業間での電子部品の調達は飛躍的にスムーズになっています。
アンダーソン氏はこのような状況を利用すれば、製造設備を持たずとも誰でも製造者(メイカーズ)になれると言います。インターネットが普及しブログやSNSが浸透した現在、「誰でも発信者になれる」のはもはや常識。これからは「誰でもメイカーズになれる時代」なのです。
『MAKERS』が出版されたのは2012年。それから3年の歳月が流れ、この動きは加速しています。さくらインターネット株式会社の共同ファウンダーの経歴を持つ小笠原治氏が語る「メイカーズ」「IoT」とは何なのか。そのエッセンスを紹介しましょう。
世界がつながる→「モノが売れる」

小笠原氏はモノづくり進化の3段階のうち1つ目に「モノが売れる」を掲げます。それを説明するためのキーワードは「クラウドファンディング」「非言語」「グローバルニッチ」の3つです。
すでにメジャーになりつつある「クラウドファンディング」。これはアメリカで言えば「Kickstarter(キックスターター)」、日本なら「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」などのプロジェクトに賛同する大衆(crowd)から資金調達する(funding)するシステムを指します。
このシステムはこれまでの大企業では収益化できないような製品を、中小零細企業が生み出すことを可能にしました。圧倒的な数の人間に製品の魅力を伝えられるインターネットが普及しているからこそのシステムと言えるでしょう。
またクラウドファンディングでは各製品をPRするために写真や動画に工夫を凝らしていますが、この非言語的なPR方法が特定の言語圏に止まらない範囲の人々へのリーチを実現します。すると1つの国には顧客が1000人しかいなくとも、10カ国集めれば1万人の市場になるのです(アンダーソン氏はこの「1万個市場」にこそ次の時代のビジネスが眠っていると指摘します)。
インターネットの普及により「モノが売れる」土壌ができあがる。こうしてモノづくりは次のフェーズへと移ります。
「モノが売れる」→「モノが作れる」
モノづくり進化の第2段階「モノが作れる」のキーワードは「モジュール化」「セットアップ」「3Dプリンター」。新しいスマートウォッチを作ろうとした場合、これまではBluetoothの機能を果たす部品を一から作る必要がありました。したがって1つの製品を発表するまでに莫大な労力と資金が必要だったのです。
しかしこれらの技術が低価格化し、「Bluetoothのモジュール」という1つの部品として簡単に購入できるようになった今では、新製品開発のスピードが格段に上がります。すると新製品であること自体の価値は薄れていくでしょう。
したがって次なるビジネスのカギは「セットアップ」による価値の創出へと移行します。セットアップとは既存のモジュールを組み合わせて、まだ世の中にはない新しいモノを作ること。例えばiPhoneに使われている部品は、既存の技術をモジュールとして独自の発想によるセットアップで価値を生み出した製品です。
すでに今の時代は、全くの新しいモノを生み出すのではなく、すでにあるモノを組み合わせることによって高い価値を生み出すことが可能になっています。では次々に生み出されるモノの中で、より価値を持つのはどのようなモノなのでしょうか?そのキーワードが「モノゴト」「IoT」です。
「モノが作れる」→「モノゴトで稼ぐ」

小笠原氏の言う「モノゴト」について理解するためにはまず「IoT」について知る必要があります。IoTとは「Internet of Things」の略です。「モノのインターネット」と訳されることが多いこのワードですが、小笠原氏はこれを「誤訳」だとし、「Things」の部分に「モノゴト」という日本語を当てはめています。
「モノのインターネット」と訳すと単にインターネットがモノとつながり(スマートフォンやPC)、便利になっていくという意味しか持ちません。しかし小笠原氏は、「Things」を「物質的な『モノ』だけでなく、無形の『コト』も含む」ことを強調します。
「モノゴトで稼ぐ」というのはすなわち、モノを売るだけではなく、コトも売るという意味です。「ドリルを買おうとしている人は、ドリルが欲しいのではなく、穴を開けたいのだ」というのは元ハーバード・ビジネススクール名誉教授セオドア・レビットの言葉ですが、まさにこの場合の「穴」こそがIoT時代の「モノゴト」を指します。
穴を開けるためのモノをインターネットをフル活用して、人々にどのようにして届けるか。『MAKERS』の出版から3年が経った今、モノづくりのテーマはそのフェーズまでやってきたのです。
小笠原氏が立ち上げた「DMM.make AKIBA」

DMMグループのサービスの1つにDMM.makeがあります。フィギュアやインテリア小物、アクセサリーなど、自分でデザインしたものをプロユースの3Dプリンターなどの機材を使って製造・販売できるサービスを展開している「メイカーズ」のためのプラットフォームです。
これだけでも十分面白い試みですが、小笠原氏は2014年11月に「DMM.make AKIBA」という最新のハードウェア開発機材を取り揃えたシェアスペースをオープンさせました。ここには超音波モーター開発の新生工業や米インテル社、堀江貴文氏が率いる宇宙開発事業チームなどの企業が入居しています。まさにこれからの「メイカーズ」の本拠地とも言うべき場所です。
現在DMM.make AKIBAには月間1000人が国内外から見学や打ち合わせのために訪れているのだとか。今こうしている間にもモノづくりの最前線はものすごいスピードで加速しているのです。
「メイカーズ・ムーブメント」の波にしがみつけ!
進化と加速を続けるメイカーズ・ムーブメントの波を掴まえることができれば、もっと面白いモノづくりが可能になります。人生を充実させ、エキサイティングにしたいのなら見逃す手はありません。ここでは概論に止まりましたが、『メイカーズ進化論 本当の勝者はIoTで決まる』には「メイカーズ」や「IoT」の事例が非常に多く挙げられています。さらに掘り下げたい人は一度読んでみるのがオススメです。
参考『メイカーズ進化論 本当の勝者はIoTで決まる』
