超人気禅僧に学ぶ!人間関係のストレスに効く禅の言葉10選

ストレスは禅的思考で振り払おう

毎日を楽しく充実した生活にするためには、溢れかえるストレスとうまく付き合っていく必要があります。そのための方法にはお酒を飲んだり出かけたり、友人たちと騒いだりと色々なものがありますが、実はそうした方法は根本的な解決にはなりません。ストレスと上手に付き合うには、「ごまかす」のではなく「向き合う」必要があるからです。

ここではニューズウィークが選ぶ「世界が尊敬する日本人100人」にも名前が挙がった禅僧枡野俊明さんの著書『図太くなれる禅思考』から、人間関係のストレスに効く禅の言葉を10個紹介します。これらの言葉をストレスと向き合うきっかけにしてみてください。

人間関係のストレスに効く禅の言葉10選

1.放下着(ほうけじゃく)

放下は「投げ捨てる」「放り投げる」の意味、着は強調を意味し、放下着で「捨ててしまいなさい」という意味になります。枡野さんは「まず、捨てるべきは”比べる心“です」(引用:前掲書p20)と言います。私たちはつい他人と比べ、比べることでストレスを増やしています。

劣等感を抱く場合はもちろん、相手を見下せたとしても追いつき追い越されることに怯えたり、「○◯のくせに」とやっかんだりしてしまいます。本来比べるべきは他人と自分ではなく、過去の自分と今の自分です。誰かと比べそうになったらこの言葉を思い出して、その心を捨ててしまいましょう。

2.雲無心(くもむしん)

「雲は無心にして岫(しゅう)を出(い)ず」を略した言葉で、雲のように好き嫌いや不安や後悔などあらゆるものに囚われず、自由に生きる境地を意味します。人間関係や仕事では相手がどのように行動をするかを先読みしたうえで、こちらの行動を決めることも大切です。

しかし必要以上に時間をかけて緻密に先読みをしたところで、読みが外れないわけではありません。しかも「これで万全だ」と思えるほど先読みをしてしまうと、いざ読みが外れた時に対応できません。かといって毎回全ての「いざ読みが外れた時」のために延々と準備をするわけにもいきません。であれば、いっそ雲無心の精神で先読みをやめてしまいましょう。何が起きても風に身をまかせる雲に、人間関係や仕事に臨む姿勢を学ぶのです。

3.悟無好悪(さとればこうおなし)

全てをあるがまま、そのままに受け入れれば、好きや嫌いといった感情はなくなるという意味の言葉です。ソリが合わなかったり、どうにもやりにくい人間関係というのは無数にあります。そんなときに大切になるのは距離感の保ち方です。遠ざけすぎればギクシャクしますし、近づき過ぎれば必要以上のストレスを溜めて自分がつぶれてしまいます。

そうではなく、相手を嫌いな相手のまま認めてしまうことで好きも嫌いもない、悟無好悪の境地に行き着く。そのうえで反面教師にしたり、最低限のコミュニケーションで済ませたりして、自分の距離感を見つける。それこそがストレスのある人間関係とのうまい距離感の保ち方なのです。

4.一掃除 二信心(いちそうじ にしんじん)

「掃除をすれば心も整い、信心も生まれてくる」「まずは掃除をせよ、お経をあげたり仏様を拝んだりするのはその後だ」といった意味を持つ言葉です。親しい人と喧嘩をしたり、仕事で失敗して上司に怒られたりすると、本来考えるべきは今何をするべきか(謝る、分析するなど)にもかかわらず、私たちは「なぜあんなことをしてしまったんだ」「どうして自分があんなことを言われなくちゃいけないんだ」などと過去のことに思考が引っ張られてしまいます。

そんなときに枡野さんが勧めるのが身体を動かすこと。「なかでも『掃除』がいちばん」(引用:前掲書p92)だそうです。掃除をしていると意識が今に集中していくからです。さらには空間がきれいになり、同時に心もすっきりしていきます。落ち込んだらまずは掃除をしましょう。それが自然と正しい心持ちへと導いてくれます。

5.前後裁断(ぜんごさいだん)

曹洞宗開祖の道元禅師の言葉で、大切なのは過去(前)でも未来(後)でもない、それらから独立(裁断)して在る現在なのだという意味です。生きていれば他人に裏切られたり、傷つけられたりして腸が煮えくり返る出来事は何度もあります。しかしその度に「やり返してやる」と過去に囚われてしまうと、かけがえのない現在を生きることができません。あるいは老後の資金などを心配して、現在を犠牲にするような節約をするのも同じです。過去や未来から現在を切り離し、力一杯今を生きましょう。

6.露堂々(ろどうどう)

何も隠さず、ありのままの姿が現れているという意味の言葉です。誰もが持っている劣等感やプライドがマイナスに働くと、私たちは欠点や弱点など見られたくないものを隠そうとしがちです。しかし隠すということは露見するリスクを抱えることと同じです。すると、いつバレるかと戦々恐々とせねばならず、ストレスは増していくばかりです。

露堂々であればこのようなストレスとは無縁でいられます。偽って強く見せている人よりも、自分の弱さを受け入れてさらけ出せる人の方が何倍も魅力的に見えるもの。露堂々の精神で弱みを隠すことなく見せていきましょう。

7.知足(たるをしる)

これは龍安寺石庭の手水鉢(つくばい)に刻まれている「吾唯足知」ではなく、曹洞宗の経典『遺教経』に記されている言葉です。あらゆるストレスを解消したければ、何もかもに満足するということを知ろうという意味です。人間関係に関わらず、私たちは得てして求めすぎます。愛を求めすぎ、カネを求めすぎ、モノを求めすぎます。しかし知足の境地に到達すれば、ストレスの原因を含めた全てのコト・モノに満足し、ありがたいと思える。一朝一夕に到達できる境地ではありませんが、胸に刻んでおきたい言葉の一つです。

8.七走一坐(しちそういちざ)

7回走ったら、1回は座ってじっくり自分を見つめ直せという意味の言葉です。職場に自宅、地元にSNS……現代人には他人とつながる時間ばかりで、なかなか一人になって自分と向き合う時間がありません。自分と向き合うとは、すなわちストレスと向き合うことでもあります。自分が何に苛立ち、苦しみ、逆にワクワクドキドキしているのか、それが明確にできるのは一人の時間だけです。誰かとつながることでストレスをごまかさないで、立ち止まって一人になり、ストレスと向き合いましょう。

9.主人公(しゅじんこう)

一般的な言葉としての主人公は「物語の主要人物」というような意味ですが、禅の言葉では「自分が主体となって」「自分らしいやり方で」のような意味を持ちます。仕事でもプライベートでも他人に言われたり誘われたりするままに生きていると、自分の時間を主人公として生きられなくなってしまいます。他人に時間を奪われないためには、常に自分が主人公の意識を持たなくてはなりません。

10.枯高(ここう)

枯れて長けて強いことを意味する言葉。例えば老いてもなお力強いオーラを放つ老松を指して「枯高の姿」と表現します。肩書きや給料、知識の多さや人脈の広さを誇ってみても、私たちはどこまでも「ただの人」でしかありません。枡野さんは「仮の姿である肩書きからも、地位からも離れた、ただの人としてどう生きるかに、人生はかかっている、と思っています」(引用:前掲書p194)と書いています。

松でいえば枝葉がいくら立派でも、肝心の幹の部分が貧弱では枯高の老松にはなれないというわけです。自分が感じているストレスが幹を太くするものに由来するのか、枝葉にすぎないものに由来するのか、きちんと見極めるようにしましょう。

禅の言葉を口癖にしてしまおう!


ただ禅の言葉を知っただけでは、なかなか身につきません。ここで紹介した10個の言葉の中から「これは是非とも自分のものにしたい」と思う言葉を選んで、事あるごとに呟いてみてください。その言葉が口癖になった頃には、言葉の意味を理解できるとともに、少しずつ自分のものになっているはずです。

参考文献:『図太くなれる禅思考』
Career Supli
じっくり意味を噛み締めたい言葉ばかりですね。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部