やる気を出そう出そうと思うけれど、どうしても重い腰を上げられない。
新しいことを始めようと思っても、なかなか一歩を踏み出せない。
落ち込むことがあったら、そこから気持ちの切り替えができない。
そんなふうにモチベーションが落ちてしまうことは誰にでもあります。
しかし、やる気がなくなってしまったときに、「自分はモチベーションが保てないんだ」と落ち込むことはありません。モチベーションは自然と保つものではなく、自分でコントロールをするもの。いわば、トレーニングをすれば、自分の意志で動かすことができます。
山崎拓巳氏『やる気のスイッチ』という本には、全部で34個もの「やる気のスイッチ」が書かれています。
シチュエーションごとの対策や、具体的なモチベーションの保ち方を紹介しているのですが、今回はそのなかからいくつかを抜粋して紹介します。
興味を持った方、より詳しく知りたいと思った方は、ぜひ本書を手にとってみてください。
目標は3段階に設定する

新しいことにチャレンジする時、“目標”を設定するのは、ごく当たり前のこと。目標を設定することで、やる気を出すという目的もあるでしょう。
しかし、その目標に届きそうもない時や、なにかのアクシデントで目標到達まで時間が足りない(例えば、交通事情のせいで、必要な時間が3時間から1時間になってしまったなど)時というのもあります。そうなってしまった時に、突如、やる気がなくなってしまうということはないでしょうか。
これは特に、完璧にやりたい!という努力家に顕著に見られる傾向で、目標が高すぎる場合などによく起こります。
その時、「次はもっと頑張ろう」と反省するのではなく、目標設定を変更することで、モチベーションを維持し、長く取り込むことができるのです。
それは、高い目標ではなく、それよりももう少し下目の目標、さらに簡単に達成できる目標を設定することです。
A目標は、とんとん拍子にいったら達成するかも、というレベルの目標。B目標は、ちょっと背伸びをしたら達成できる目標。C目標は、最悪でもこれだけは達成するという目標。
特に重要なのが、最後のC目標です。この目標設定が、今後を決定づけると言ってもよいでしょう。必ず達成するようにします。山崎氏は、このC目標のことを、「自尊心を守るため目標でもある」と述べています。
いつも目標や予定を設定して達成できず挫折している人も多いでしょう。ぜひこの方法を試してみてください。
やる気がでないのには理由がある

何かに刺激を受けて突如としてやる気が出たにもかかわらず、次の日には冷めて、同じ事をやるのが億劫になる。
実はそれには科学的な原因があるそうです。
「ホメオスタシス(恒常性)」。
これは、物理の慣性の法則と同じように、同じ所に居続けようとする法則。
自分では、「チャレンジしよう」「変わろう」と決意しても、無意識にホメオスタシスが働いて変化を妨げようするのです。
これを知っていると知らないとでは大違い。やる気がでなくなったな、と思ったとき、この原因を知っていれば、自分にやる気がないのではなく、脳がそんなふうに反応しているだけだと客観視することができます。
そして、そんな時の解決策は、「ゆっくりと変化すること」です。
ホメオスタシスが働かない程度に、新しい物にちょっとずつ慣らし、十分に馴染んでから次へと進んでいくスタイルです。じつは、それが、結果として一番早く変化することができると山崎氏は述べています。
「一歩だけ、先の段階に自分を馴染ませる」
急激な変化や成長はできないものと、事前に心しておきましょう。
「どうしてうまくいかないんだろう」とは考えない

さて次は、「どうしてもうまくいかない時」にどうやってやる気のスイッチが出るか、という話題に移りましょう。
うまくいかない時に人が陥るのは「どうしてうまくいかないんだろう」と思ってしまうことです。これはいわば、自責。この問いを思い浮かべることで人は、「自分はだめな人間だ」というふうに無意識に思い込んでしまいます。
自己否定をすることで、奮起することもありますが、この問いかけをもっとポジティブに変えるだけで、やる気が出るようになることもあります。
それは、問いかけを、「答えが存在する質問」に変換することです。「どうしてうまくいかないんだろう」ではなく、「どうしたらうまくいくんだろう」という問いかけにするということ。
そうすると、無意識は答えを探しはじめます。主体が自分自身になるからです。そうすることで、次第にうまくいくための方法を考え出し、意識がうまくいくための方向に向かっていきます。
この考え方は、うまくいかない時以外にも流用することができます。例えば、あるブランドの時計を買いたいと思うようになると、脳が勝手にその時計を探すようになります。
そうすると友人が似たような時計をつけていることに気づいたり、雑誌をめくっているとその時計が出てきたりと、頻繁に出会うようになります。このような体験をする人は少ないでしょう。そうしていくと、それがどうやったら手に入るのか具体的なアクションが見えてくることがあります。
たとえば友人に「その時計はどこで買ったのか」と訪ねたり、雑誌を見て価格を確認したりと、少しずつですが、時計を買う流れに動いていくのです。その時に「高いから時計は買えない」のではなく「高いけど、どうしたら(無理をすることなく)買えるのか」を無意識に考えるようになるはずです。
頭の中で、ほしいものを思い浮かべると、どうやったらうまく行くか、その道筋が少しずつ見えてくるはずです。
うまくいかないときは、原因を過剰書きにする

うまくいかず、やる気がなくなりそうな時に有効な方法をもう一つ紹介します。なかなか目標に達成しない時、目標設定を変えるという方法以外にも効果的な方法があります。それは、原因を箇条書きにすること。
なにか根本的な原因がある場合にこの方法は有効です。それらを、ただ単純に心から引っ張り出し、文字になったものを客観的な立場から見るだけでも、心はずいぶん軽くなる。
そのように山崎氏が述べているように、書き出すという行為は客観視できる点にあります。文字にしてみると、「案外たいしたことないな」と思えたり、この問題とあの問題は、同じ問題だと気づくことができたり、複数あった問題を整理して原因を簡単にすることができます。
山崎氏は、そのような状態のことを以下のように述べています。問題は問題そのものではなく、問題によって心が「ブルーモード」だということが問題になっているから。
そんな時は、問題が解決したら、今の気分がどんな気分に変わるか、を想像するとよいでしょう。そして、その気分を心になじませてから、問題に取り組むと解決が早くなります。
目標は段階を追って、やる気は出なくなるものと理解したうえで少しずつ少しずつ変化していく。そうすることで、モチベーションを保ったまま、前に進めることができるでしょう。
山崎氏の『やる気のスイッチ』には他にも様々なスイッチの入れ方を紹介しています。興味を持った方、もっと知りたいと思った方はぜひ手にとって見てください。
参考文献:山崎拓巳『やる気のスイッチ』
