”なんか調子悪い”はなぜ生じるのか? ポイントは炎症と不安

その体調、歳のせいではありません

「原因はわからないけど、なんだか日常的に調子が悪い。自分ももう歳かな……」そんなふうに考えてはいないでしょうか。もちろん何かしらの病気になっていたり、年齢に伴って疲れやすくなっているという側面がゼロだというわけではありません。しかし、単なる歳のせいではない可能性の方がはるかに高いのです。

ここでは月間100万PVを超える人気ブログ「パレオな男」の著者であり、サイエンスライターでもある鈴木祐さんの著書『最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~』から、現代人の「なんか調子悪い」の原因を解説。

その原因を解消し、最高の体調を作るために必要なものについても紹介します。

現代人の不調の原因は「炎症」と「不安」

・いくら寝ても疲れが取れず、休み明けでも体がだるい。
・毎日の生活が虚しく感じて、何をするにも積極的になれない。
・眠る時も日中の出来事について考えてしまい、目が冴えて眠れない。

こうした不調は現代人に特有の病とでもいうべきもので、実際原因不明の体調不良を慢性的に抱えている人も多いのではないでしょうか。鈴木さんは著書の中で、こうした不調に共通する原因として「炎症」と「不安」の2つを挙げています。

●小規模の「炎症」が肉体を蝕んでいる

炎症とは体に何かしらのトラブルが生じたときに、免疫システムが引き起こす防御反応です。膝を擦りむいたときに傷口が腫れ上がったり、捻挫をしたところが腫れ上がったり、肩こりや筋肉痛も炎症の一種だと言われています。

このように明らかに痛みや腫れがあれば治そうという気になるため問題はありません。しかし気づかないうちに炎症が起きていると「なんだか体がだるい」という、現代人特有の不調へとつながっていきます。

例えば内臓脂肪は皮下脂肪に比べて優先的にエネルギーとして燃焼されます。そのため慢性的に内臓脂肪が付いている人は、終始ジワジワと体が燃えている状態になります。

肥満体質の人が疲れやすいのはこのためで、最終的には動脈硬化や脳梗塞の原因にもなります。

実はうつ病も脳の炎症が原因で引き起こされるという説があります。何かがきかっけでサイトカイニンという炎症物質が分泌され、脳に影響を与えているという説です。

実際のメカニズムは未解明のままですが、メタ分析という高度な科学的分析方法でも、うつ病患者の脳に炎症反応が認められたという報告がされています。

5万人のスウェーデン人を対象に行われた有名な調査でも、体調と炎症の関係は明らかにされています。この調査は被験者に対して次のうち、自分の体調がどれに当てはまるかと尋ねるシンプルなものでした。

・とても良い
・良い
・普通
・悪い
・とても悪い

このうち「悪い」「とても悪い」と答えた被験者ほど、体内の炎症レベルが高いことがわかったのです。

●「ぼんやりした不安」が精神を蝕んでいる

ケニア出身のジョン・ムビティ牧師は1970年の著書『アフリカの宗教と哲学』の中で、アフリカ人の時間の観念は過去と現在だけで構成されており、未来についての観念が存在しないと指摘しています。

これはかつてのタイでも見られた現象で、ノンフィクション作家の高野秀行さんは著書『間違う力』のなかで、数ヶ月先の未来さえ考えずに行動するタイ人の生き方をしったときの驚きを綴っています。

このような未来を一切考えない生き方に対して、近代以降の日本は未来のことばかり考えすぎた結果、自分の身にあまる「ぼんやりとした不安」を抱えてしまっています。

『羅生門』などで知られる芥川龍之介はその生涯の幕を自殺という形で引いていますが、「或旧友へ送る手記」(作家である久米正雄に宛てたものとされている)のなかで、自殺した理由を次のように記しています。

誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。(中略)が、少くとも僕の場合は唯ぼんやりした不安である。何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安である。
引用:「或旧友へ送る手記」

不安には生命などの直接的な危機に対して抱く不安と、何かよくわからない漠然としたものに対して抱く不安とがあります。

後者が芥川の抱いた「ぼんやりとした不安」であり、現代人が抱きがちな「将来」や「老後」といった遠すぎる未来に対して抱く不安です。

人間に本能的に備わっている不安は、前者の明確な不安です。これについては何をするべきかが明確であるため、すぐに行動に移すことができます。

しかしぼんやりした不安は原始の頃から人間には備わっていない感情であるため、解消できないまま、ただストレスだけを感じてしまいます。

ストレスの蓄積が心身の不調につながることは周知の事実ですが、現代人のストレスはこうした根本的なところからきているのです。

最高の体調を作る6つのキーファクター

では炎症や不安を解消するためにはどうすればいいのでしょうか。鈴木さんは著書の中で、そのためのキーファクターとなる以下の6つを挙げています。

・腸
・環境
・ストレス
・価値
・死
・遊び

下表に6つのキーファクターに対応する改善方法の一例をまとめたものです。これを見て改善方法についてインターネットで検索をするだけでも、「なんか調子が悪い」を解決するための糸口をつかめるはずです。

とはいえ、この表にまとめた改善方法は、『最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~』で紹介されているほんの一部にすぎません。

本書では6つのキーファクターがなぜ現代人の炎症や不安に関係しているのかを最新の統計や研究をもとに掘り下げつつ、科学的な根拠に基づいた改善方法が豊富に紹介しています。

そのため、より実践的内容を知りたいという場合は鈴木さんの著書を参照してください。

人生100年時代は「体が資本」

人生100年時代が現実的になりつつある現代の日本において、70代や80代が現役世代として働かなければならない状態になる可能性は十分あります。

そうなれば「どんな仕事をしてきたか」「どこで働いてきたか」と同じくらい、「いつまで働けるか」が生涯の収入に大きく関わってきます。

つまり体が資本であるという考え方がより重要になってくるのです。

にもかかわらず、原因不明の体調不良を「歳のせいだろう」と安易に考えているようでは、重要な資本である体が蝕まれていることもに気づけません。

そのような結果を避け、自分にとっての最高の体調を手に入れるための第一歩として、鈴木さんの著書を手に取ってみてはいかがでしょうか。

参考文献:『最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~』
Career Supli
まずは最新のエビデンスのある知識をしっかりと仕入れて学びましょう。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部