自己分析の簡単なやり方とは? 質問項目や注意点、おすすめの本を紹介

転職を検討する際は、理想とする職場環境や自分の得意分野などを明確化する必要があります。このようなシーンで重要な役割を担うのが「自己分析」です。

本記事では、自己分析の目的や簡単なやり方、実践する際の注意点などについて解説します。自己理解を深める質問事項やおすすめの書籍なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

自己分析とは

「自己分析」とは、自分の在りたい姿や大切にしている価値観、性格的な特性、得意領域や苦手分野などを整理し、客観的な評価と分析を通じて自己理解を深めるプロセスを指します。

たとえば、転職を検討する際は、まず自分の就きたい職業を明確化しなくてはなりません。そのためには、自分の理想とする生き方や望むキャリアなどを具体的な言語に落とし込み、進むべき方向性を客観的な視点から把握する必要があります。

また、就職活動や転職活動では、面接官に自分の長所や短所、性格、経歴、志向性などを端的に伝えなくてはなりません。こうした要素を第三者に対して的確に伝えるためには、まず自分自身の特性を深い領域で理解し、具体的な言語や数値に落とし込むプロセスが不可欠です。

これまでの経験やそのときに得た感情などを俯瞰的に分析し、言語化することで第三者に伝えやすくなるため、転職活動の自己PRを優位に進められる可能性が高まります。

自己分析を行う目的

自己分析を実践する目的は、自分自身の志向性と仕事選びにおける軸の明確化です。

心理学者のアブラハム・マズローは、人間の欲求は「1.生理的欲求」「2.安全欲求」「3.社会的欲求」「4.承認欲求」「5.自己実現欲求」の5階層に分類されると説きました。これらの欲求には序列があり、低次の欲求が満たされると一段上の欲求をもつという心理作用が働きます。

そして、現代の日本では多くの人々が社会的欲求までは満たされているものの、それより高次の承認欲求と自己実現欲求が満たされている方は決して多くありません。

尊重されたいという「承認欲求」と、自分らしく生きたいという「自己実現欲求」を満たすためには、自分が人生に何を求めているのかを明確化する自己分析が必要です。そして、そのプロセスを経ることで自分自身の志向性が言語化され、同時に仕事に求める軸が明確になります。

それにより、自分に適した企業や職種を客観的な視点から把握できるため、苦役を伴う「Labor(労働)」ではなく、自己実現につながる「Calling(天職)」を発見できる可能性が高まります。

自己分析の簡単な5つのやり方

自己分析にはさまざまな手法が存在しますが、ここでは心理学や脳科学などの高度な知識を必要としない簡単なやり方を5つ紹介します。

1. 「自分史」を作成する

「自分史」とは、自分の生きてきた歴史を文章化したものを指します。作成方法や表現方法に定型化されたフォーマットはなく、自由に自分の半生を書き綴ることで自己認識を深めることが可能です。

就職活動や転職活動で自分史を活用する際は、小学校から大学にかけての表を作成し、当時思い描いていた夢や目標、人間関係や習い事などを文章化します。このプロセスを経ることで自己理解を深め、説得力の高い自己PRを作成できます。

2. 「モチベーショングラフ」を作成する

「モチベーショングラフ」とは、自分が過去の人生で体験した出来事を振り返り、そのときのモチベーションの揺れ動きを表したグラフです。

基本的には縦軸にモチベーションの度合いを設定し、横軸に時間の流れを設置します。そして、印象的な出来事を具体的に書き、モチベーションの変化を数値化するというのが基本的なプロセスです。

モチベーショングラフの作成により、自分の意欲の源泉や人生の浮き沈みといった定性的な情報を視覚的に理解できます。

3. 「なぜ?」を問い続ける

自分に対するイメージや自己評価は頭の中で混沌とした状態で漂っており、曖昧なまま言語化できていない場合がほとんどです。

自己理解を深めるためには、自分史やモチベーショングラフに基づいて「なぜ?」を問い続ける必要があります。

一例としては「なぜ哲学が好きなのか?」と問うことで、「物事を多角的に見る目が養われる」や「世の中の常識に疑問を感じているから」とつながり、物事の本質を追求する能力に長けているという特性が浮かび上がります。

4. 共通の要素を見つけ言語化する

連想ゲームの要領で自分自身に「なぜ?」を問い続け、そこから共通点を見つけることで、自分の特性をより深く理解できます。

たとえば、「コミュニケーションが苦手」という性格は一見すると短所に思えるかもしれません。しかし、他者との馴れ合いを好まず、一人で思索を巡らせることに喜びを感じる方であれば、先述した哲学を追求する精神につながります。

この場合、自分は外向性を求められる職種よりも、技術や理論を追求する研究職や、情報技術を扱うITエンジニアの適性があるかもしれないと仮説を立てられます。

5. 「仕事選びの軸」「強み」「弱み」を考える

ここまでの工程で導き出された知見を分析することで、自分の強みと弱みを俯瞰的な視点から分析できます。

自分の得意分野はどの領域で、何を苦手とするのかを言語化できれば、職業の選択における向き不向きの方向性を客観的な視点から理解可能です。そして、どのような分野が自分の特性を最も活かせるのかを分析し、同時にこう在りたいと望む未来のビジョンを思い描きます。

こうして導き出された自分の得意分野と、理想とするビジョンの交わるポイントが仕事選びの軸となります。

自己分析を進める質問事項

自己分析では、どのような質問を自分自身に投げかけるかが重要です。

ここでは、自己理解を深めるための質問集を、過去・現在・未来にカテゴライズして紹介します。ぜひ、自己分析の工程に取り入れてみてください。

過去の経験を振り返る質問

  1. 幼少期の夢は何か
  2. 幼少期に好きだったことと嫌いだったことは何か
  3. 学生時代の得意科目と苦手科目は何か
  4. 学生時代に憧れた人は誰か
  5. どんな性格だったか
  6. 仲のよい友達はどんなタイプだったか
  7. どんな体験が印象に残っているのか
  8. 習い事は何をしていたのか
  9. 最も自分を誇りに思う出来事は何か
  10. 最も後悔している出来事は何か

現在の自分を深掘りする質問

  1. 趣味は何か
  2. 休日をどのように過ごしているのか
  3. 最も時間を費やしている物事は何か
  4. 仕事とプライベートのどちらを重視しているのか
  5. 所属しているコミュニティの長所と短所は何か
  6. 座右の銘は何か
  7. 尊敬する人物は誰か
  8. 何に対して最も幸福を感じるのか
  9. 自分の性格は論理的か感情的か
  10. 孤独に対して肯定的か否定的か

望む未来を明確にする質問

  1. 自分の理想像はどのような姿か
  2. どんなライフスタイルを望むのか
  3. 希望する年収はいくらか
  4. 10年後の自分はどのように変化しているのか
  5. 10年後の社会に対して自分はどのように貢献しているのか
  6. 理想の自分と現在の自分はどのように違うのか
  7. 理想の自分はどのような人々と関わり合っているのか
  8. 人生の最後の瞬間に後悔することは何か
  9. 人生で成し遂げたいことは何か
  10. 自分は何のために生まれてきたのか

自己分析の注意点

自己分析を実践する際は、いくつかの注意点が存在します。とくに気を配るべきポイントとして挙げられるのが以下の3つです。

  • 先入観に縛られない
  • 1回で終わらせず定期的に行う
  • 企業の求める人物像に合わせない

先入観に縛られない

先入観で自分の長所を評価しても、その分析が正しいとは限らない点に注意が必要です。

過去を振り返ることなく自己分析を進めた場合、得意分野や性格的な特性を把握しきれないため、面接時の質問で深掘りされた場合に返答できない可能性があります。このような事態を避けるためには、自己分析のプロセスを段階的に踏破し、先入観にとらわれないフラットな視点から自分を分析しなくてはなりません。

過去の体験や現在の経験を深く掘り下げ、先入観を排除することで本当に自分が得意とする領域が見つかります。

1回で終わらせず定期的に行う

仏教の教えには「諸行無常」という言葉があり、この世界に永久不変のものはなく、万物は常に流転すると説かれています。

これと同様に人間の志向性や信念、目標、価値観なども時とともに変化していくのが世の常です。したがって、自己分析は一度の実践で終わりという性質のものではなく、継続的な見直しや改善が求められます。

とくに就職活動や転職活動に取り組む期間は自己理解を深める必要があるため、定期的に自己分析のプロセスを繰り返すことが大切です。

企業の求める人物像に合わせない

自己分析は自分自身を深く理解するためのものであり、企業が求める人物像に合わせることが目的ではありません。

たとえば、本来は人見知りで大人しい性格にもかかわらず、企業の求める「明るく朗らかな人材」を無理に演じてしまう方も少なくありません。しかし、企業の人事担当は多くの就活生を見てきた経験があるため、安易な嘘や演技は見透かされる可能性があります。

仮に偽りの自分を演じて入社できても、アピールした強みと経験の不一致が生じたり、職場環境に適合できなかったりと、さまざまな問題が生じる要因となります。

自己分析に役立つおすすめの本5選

自己分析を実践するためには、心理学や脳科学などに基づく相応の知見が必要です。ここでは、自己分析を実行する上で参考にしてほしい書籍を5冊紹介します。

「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」著 トム・ラス 古屋博子訳

画像出典:Amazon

米国のギャラップ社が開発したオンライン才能診断ツール「ストレングス・ファインダー」について解説している書籍です。

表紙の裏に綴じ込みがあり、そこに記載されているアクセスコードを利用することで、自分の才能や強みがわかるストレングス・ファインダーを受けられます。

「分析思考」「戦略性」「学習欲」「目標志向」「公平性」など、34の資質と行動アイデアから自分の突出した才能を5つ提示してくれます。

「9つの性格 エニアグラムで見つかる [本当の自分] と最良の人間関係」著 鈴木秀子

画像出典:Amazon

本書は「人間には9つの性格タイプがある」という考えに基づき、人間の本質について解説している一冊です。

「完全でありたい人」「人の助けになりたい人」「成功を追い求める人」「特別な存在であろうとする人」「知識を得て観察する人」「安全を求め慎重に行動する人」「楽しさを求め計画する人」「強さを求め自己を主張する人」「調和と平和を願う人」という9つの性格から、自分がどのタイプに該当するのかを理解できます。

「あなたが「一番輝く」仕事を見つける 最強の自己分析」著 梅田幸子

画像出典:Amazon

2009年に刊行された自己分析のロングセラー本「あなたの天職がわかる 最強の自己分析」を2017年に加筆・再編集した書籍です。

キャリアコンサルタントとして約4000人の面接に立ち会い、就職活動者を内定に導いてきた著者が自己分析のノウハウを中心に「個性と能力を活かす就職活動」を提案します。

本書で紹介されているワークに取り組むことで、就職活動や転職活動に最適化された自己分析を実践できます。

「改訂版 確実内定 就職活動が面白いほどうまくいく」著 トイアンナ

画像出典:Amazon

外資企業でマーケティング領域を担当していた、PAX株式会社代表のトイアンナ氏による就職活動の全体像が見える一冊です。

就職活動や転職活動をゲームのような視点で捉え、自己分析や面接などの対策を「攻略法」という観点から紹介しています。

就職活動の仕組みや求職者に求められる行動、具体的なハウツーなどが網羅されており、就活本の決定版との呼び声も高い書籍です。

「受かる! 自己分析シート」著 田口久人

画像出典:Amazon

就職活動や転職活動などの領域に特化して自己理解を深められる書籍です。

一般的な自己分析本との違いは、「問いかけ」のスペースが用意されており、書き込んだ内容を客観的な視点から把握できる構成になっている点です。

他人事の視点で問題を捉えると脳の負担が減少するという研究結果(※1)もあり、客観的な視点から自己分析を進めることで、自然と深い分析ができる仕組みとなっています。

(※1)【参照元】Scientific Reports|Third-person self-talk facilitates emotion regulation without engaging cognitive control

転職時の自己分析はエージェントも活用しよう

転職時に自己分析を深めたい場合は、人材紹介を専門とする転職エージェントの利用がおすすめです。先述したように、自己分析には心理学や脳科学などに基づく相応の知見が必要であり、自己流の分析は先入観にとらわれてしまい、正しく評価できない可能性があります。

転職エージェントはキャリアアドバイザーが転職先を探してくれるのはもちろん、徹底的な自己分析を一緒に行ってくれる点が大きなメリットです。第三者の意見を取り入れながら自己分析を進めることで、より深い自己理解に到達できる可能性が高まります。

まとめ

自己分析とは、自分の性格的な特性や得手不得手を整理し、客観的な評価と分析を通じて自己理解を深める分析手法です。とくに転職活動では面接官に自分の特性を適切に伝える必要があるため、自己理解を深めるプロセスが欠かせません。

また、天職に巡り合うためには、自分の理想像と得意とする領域が交わるポイントを見つける必要があります。自分の志向性や価値観を深い領域で理解し、転職活動に役立てたい方は転職エージェントの利用もご検討ください。

[文]CareerSupli編集部 [編集]CareerSupli編集部