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11. 『白夜行』
著者:東野圭吾
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4087474399
舞台化、テレビドラマ化、映画化とあらゆるメディアミックスが行われた東野圭吾の傑作ミステリー長篇。1973年大阪のビルで一人の質屋が殺害されるところから物語ははじまります。
主人公である被害者の息子とヒロインである「容疑者」の娘の周囲で次々と起こる怪事件もさることながら、この物語最大の謎は一切描かれない二人の心情・内面です。いったい彼らは何を思い、何を考えるのか。他の登場人物と一緒にそれを類推するのもこの物語の醍醐味の一つです。
12. 『不夜城』
著者:馳 星周
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4043442017
金城武主演で映画化もされた、新宿のアンダーグラウンドを舞台にしたクライム・ノベル。登場人物全てが「真っ黒」、友情も愛情も仁義も心情も生き残るためなら全てを偽り、売り飛ばす、そんなハードな世界観をこれでもかというほど描ききっています。いわゆるみんなが善人になっておめでとう、的なハッピーエンドに飽き飽きした人におすすめの1冊です。
13. 『虐殺器官』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150309841
「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位を獲得した著者のデビュー作。アメリカを中心とする先進諸国は厳重な個人情報管理システムを構築し、徹底してテロの脅威に対抗している近未来が舞台です。主人公であり、アメリカ情報軍所属のシェパード大尉は、後進国で虐殺を扇動しているとされる「ジョン・ポール」なる人物の暗殺を命令されますが、実在しているのかすら不確かなその影に翻弄されていきます。謎に次ぐ謎を追いかけているうちに、いつの間にやら朝になってしまうこと請け合い。
14. 『煙か土か食い物』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/406274936X
第19回メフィスト賞を受賞した「圧倒的文圧」で知られる著者の衝撃的デビュー作。救命外科医・奈津川四郎を探偵役に繰り広げられる息もつかせぬ犯罪と暴力が織りなす物語もさることながら、スピーディな言葉の弾幕が病みつきになること間違いなしです。文庫版の帯文は「これが噂のMaijoだ」。
15. 『ハサミ男』
著者:殊能 将之
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062735229
研ぎあげたハサミを殺害した美少女の喉元に突き立てるシリアルキラー「ハサミ男」。2人の美少女を殺した後、3人目の犠牲者を決めますが、ことに及ぶ前に何者かに殺されてしまいます。しかも、自分と全く同じ手口で。
「ハサミ男」が犯人だと囃し立てるマスコミを尻目に、誰が真の犯人なのかを調査しはじめるシリアルキラーの動向と、随所に散りばめられる警察の調査の描写がハラハラドキドキする傑作長編ミステリーです。
16.『同姓同名小説』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4860520092
広末涼子に小泉孝太郎、保田圭に荻野目洋子、そしてみのもんた……と同姓同名の人物たちが繰り広げる、抱腹絶倒の喜劇。しかし同時に「みのもんた」が公園で仲良くなったフリーターにこぼす「俺が一言言ったら全国のココアがなくなったんだよな……」というもの寂しげな台詞には芸能人だからこその哀しみが漂っています。喜劇でありながら悲劇。そんな悲喜こもごもの人の生を上質なパロディで描いた作品と言えます。
17. 『告白』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4122049695
実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、「人はなぜ人を殺すのか」という永遠のテーマに迫った谷崎潤一郎受賞作。思弁家ゆえに周囲とうまくコミュニケーションが取れない主人公熊太郎は、自分をコケにしてきた親族たちの大量殺人を計画します。重々しいテーマながら、物悲しさの中に吹き出すような滑稽な描写も数多くあり、いつのまにかに引きこまれていく不思議な作品です。
18. 『邂逅の森』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167724014
直木賞・山本周五郎賞をダブル受賞した史上初の作品。失われつつある日本の風土を克明に描いた秋田のマタギの物語で、山と人間、熊とマタギといった文明が忘れそうになる関係性を見事に表現しています。特に熊を狩るシーンなどは目の前に映像が浮かぶような迫力ある筆致で、肌がひりつくような緊張感すら抱きます。
19. 『溺レる』
著者:川上弘美
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167631024
女流文学賞・伊藤整文学賞受賞作。ダメな男とのカラダの関係に溺れ、どこまでも二人で「何かから逃げる」旅を続ける表題作をはじめ、どこかもの悲しい、それでいて刹那の恋愛を愛おしむような珠玉の短編が収録された1冊です。204頁と小さな本ですが、読み終わった後も静かな夜の空気の中で物思いにふけりたくなる作品。恋の酸いも甘いもちょっとわかったような気がし始めた大人の女性におすすめです。
20. 『ドゥームズデイブック』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150114374
ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞トリプル受賞作。歴史研究のために中世にタイムスリップすることができる近未来が舞台。現代と中世で並行して発生するパンデミックを軸に、精緻な描写でそれぞれの世界を描くのは、さすがSFの大家ウィリスというところです。また出て来る電話が固定電話だったり、タイムマシンの精度がやたらと悪かったりなど、SFなのに未来化し切っていない描写を楽しむのも本書の楽しみ方の一つ。
21. 『ハイペリオン』
著者:ダン・シモンズ
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150113335
ヒューゴー賞、ローカス賞受賞作。28世紀、人類は地球を捨て200にも上る惑星を転移網で結び連邦を形成している時代の物語。辺境の惑星「ハイペリオン」で人類の畏怖と信仰の対象となっている<時間の墓標>と怪物シュライク、迫り来る宇宙の蛮族「アウスター」、そして選ばれた「最後の巡礼」の7人が抱えるそれぞれの宿命など、設定だけでもワクワクするような、正統派SFです。
22. 『ブラック・ジャック・キッド』
著者:久保寺 健彦

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101354669
ドラマ原作大賞選考委員特別賞、パピルス新人賞、第19回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』に憧れて、「患者」を探し団地を駆け巡る小学生の和也が主人公です。そんあ和也にのしかかる両親の離婚、転校、いじめ。子供らしい夢と現実の織りなす苦い感覚を、健気に生きる和也少年の姿を通して描いた青春小説です。
23. 『すべてがFになる』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062639246
第一回メフィスト賞受賞作。密室から飛び出した死体、孤島のハイテク研究所、探偵役の建築工学助教授、その研究室の美少女お金持ち学生といったありがちな設定に、読者を翻弄する数理的なトリックや推理を持ち込んだ発表当時センセーショナルを巻き起こした推理小説です。その謎解きもさることながら、登場人物の軽妙かつ深遠な会話もこの作品の大きな魅力の一つです。
24. 『比類なきジーヴス』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4336046751
イギリスの名ユーモア作家が描く、抱腹絶倒の短編集。原書は1923年にイギリスで出版されています。ぐうたらでダメダメな若旦那のバーディーと、執事としても優秀でかつトンチもきくというジーヴスのコンビが、出版から90年経った今でもしっかり爆笑させてくれます。国書刊行会が数多く出ている「ジーヴス」シリーズを翻訳してくれているので、はまればどんどん読み進められますよ。
25. 『まほろばの王たち』
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062188287
大化の改新の時代を舞台に、権力を拡大しようとする朝廷と、山の神々とそれを信奉する山の民たちとの戦いを描いた、ジブリの映画『もののけ姫』を彷彿とさせる作品。中大兄皇子や役小角、中臣鎌足など歴史上に実在した人物なども物語に織り込まれているので歴史好きなら間違いなく楽しめる1冊となっています。
まとめ
上記の25選には入れませんでしたが、以下の5冊もおすすめです。
『ベルカ、吠えないのか?』 古川日出男
『漂泊の牙』 熊谷達也
『ハーモニー』 伊藤計劃
『センセイの鞄』 川上弘美
『ねじまき少女』 パオロ・バチガルピ 訳:田中一江、金子浩
興味の湧いたものはもちろんですが、「あんまり興味ないなあ」と思ったものでもぜひ一度は手に取ってみてください。それまで読んでいなかったジャンルでも、良質な作品を読めばきっと「面白い」と思えるはず。ここで選んだ25冊+5冊はそんな作品ばかりです。ただし何度も言うようですが、手に取るのは必ず次の日が休みの時にしてくださいね。もし仕事に支障が出ても責任は取れませんから……。
[文]鈴木 直人/頼母木 俊輔 [編集]サムライト編集部- 1
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