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悩みは友達より哲学者に相談しよう
人間関係の悩み、仕事の悩み、お金の悩み……日々生きていれば何か一つは悩みがあるものです。しかしそれを一人で悶々と考えていれもなかなか答えは出ません。
身近な友達に相談してみても「気にするな」とはぐらかされたり、見当違いな答えを返されたりと、解決しないことも多いはず。そんなときは人生を「考えること」に注いだ人たちに相談してみてはどうでしょうか。
2018年4月27日に発売された『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』は、私たちが抱えがちな悩みを著名な哲学者たちの考え方を通じて解決のヒントを見つけようという本です。
ここではこの本の内容を少しだけ覗き見るとともに、その魅力を紹介します。
夢に挑戦する勇気は「デカルト」にもらう

本書は「仕事」「自意識・劣等感」「人間関係」「恋愛・結婚」「人生」「死・病気」という6つのカテゴリーに分けて、それぞれいくつかの悩みと哲学者の考え方を紹介しています。
このうちの仕事での悩み「やりたいことはあるが、行動に移す勇気がない」に対しては、フランスの哲学者にして微分積分を発明した数学者でもあったルネ・デカルトの考え方を答えとして提案しています。
その答えとは「困難は分割せよ」です。500年前、デカルトは自分一人だけで当時存在した全ての学問を構築し直すという野望に着手していました。そしてそのための方法論として考えられたのが有名な『方法序説』に挙げられた以下の4つの方法でした。
1.明証:絶対に真であると認めない限り、どんなものでも真だとは考えない。
2.分析:検討する問題はできるだけ小さな単位に分割して考える。
3.総合:分割した問題のうち分かりやすいものから複雑なものへと、順序立てて考える。
4.枚挙:ヌケ・モレのないように一つずつ数えあげて全体を見通す。
このうちの「分析」こそが、「やりたいことはあるが、行動に移す勇気がない」という悩みに対する答えになっていると本書は言います。
つまり自分にとって実行や実現が難しいように思えることでも、10年単位、5年単位、3年単位、1年単位、3ヶ月単位、1ヶ月単位、1週単位、1日単位というように、細かな単位に分割して目標やタスクを整理していけば、あとはそれらを確実に実行していくだけになるというわけです。
非常にシンプルな方法ですが、この方法ならばわざわざ行動に移す勇気を奮い立たせなくても、行動に移せそうです。
孤独と向き合う方法は「ショーペンハウアー」に学ぶ

「人生」のカテゴリーの最後に挙げられている悩みが「夜、孤独を感じる」です。夜に限らず、孤独であるとか寂しいといった感情に悩む人は多いでしょう。
この悩みに答えを出しているのはドイツの哲学者であり、ニーチェの哲学の基礎にもなったアルトゥル・ショーペンハウアーです。
その答えとは「人が幸せになるためには孤独になるしかない。それを嘆くのではなく、馴染み、愛するべきだ」というものです。
孤独を辛いものだと考える人は、誰かと一緒にいてこそ幸せになれると考えてしまっています。
しかしショーペンハウアーによれば、他人と一緒にいるとたとえそれが誰であろうと個性や気分のすれ違いで「不調和」が起きます。その不調和をなくすためには、お互いが共感できる最大公約数のコミュニケーションをとるしかありません。
ショーペンハウアーはそれを自分らしさを損なう行為だと考えます。そして自分らしさを損なってでも誰かと交わろうとするのは、そもそも自分がないからだと切り捨てます。
幸せになるためには自分の内面が充足している、もしくは充足させようとすることが必要だと知っている人は、誰かと交わることで時間を浪費するのではなく、自分自身を深めるために時間を使います。
例えば自分の好きなものをひたすらに掘り下げていったり、誰にも邪魔されない一人の時間だからこそできる仕事に没頭したりするのです。
こうして孤独に馴染み、愛することができれば、孤独に悩むことはなくなるというわけです。
『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』の魅力
●魅力1:ツールとして使いやすい
このように『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』は現代の私たちの悩みと哲学者たちの考え方をつなげ、悩みに対する答えを示してくれます。
前述したように本書はカテゴリー分けこそされていますが、それぞれの悩みは独立しているため、どこから読んでも問題ありません。
この「悩みと、それに対する答えを示している」「どこから読んでも理解できる」という点において、本書はツールとしての魅力を持つ本といえます。
●魅力2:哲学の難しさがほとんどない
また哲学の難しさをできるだけなくすように配慮されているという点も本書の大きな魅力です。
例えばジャン=ポール・サルトルやジャック・ラカンといった比較的新しい哲学者たちの思想は哲学の分野の中でも特に難解だとされていますが、本書では例え話や要約を使ってエッセンスだけを理解できるように解説されています。
ところどころに哲学者の言葉も引用されていますが、それにもわかりやすい解説がつけられています。そのため本書は「哲学って以外と面白いのかも」と思うきっかけにもなるかもしれません。
●魅力3:哲学と私たちの生活を結びつけてくれる
そして何より、哲学者の考え方を「ダイエットが続かない」「人の目が気になる」といった身近な悩みに落とし込んで解説してくれているところが、本書の最大の魅力です。
哲学者の考え方というのは、一見極論すぎて私たちの生活からは遠いように思える場合も少なくありません。
しかし本書の解説を読めば、それが地続きの関係にあることがわかります。おそらく哲学者の著書や、その解説書を読んでも、こういった解釈をするのは難しいでしょう。
本書の著者がわかりやすく噛み砕いてくれているからこそ、哲学が読み手の生活と結びつけられているのです。
哲学者の肩を借りて世の中を見よう

哲学者とは「考えること」のプロです。哲学者は得てして浮世離れしたことばかり考えていると思われがちですが、実は人一倍多くのことに悩み、それについて考え、答えを出してきた人たちです。
そのため普通の人の普通の悩みに対する答えも、数多く出してくれています。
悩みのせいで前に進めていないと悩んでいるのなら、『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』を読んで、哲学者の肩を借りて世の中を見てみてはいかがでしょうか。
参考文献『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』

