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異文化に触れてますか?
「アイデアは移動距離に比例する」はハイパーメディアクリエイターの高城剛氏の言葉。アイデアを得るためにはたくさん移動する事が重要だということです。
異なる土地の文化、環境に触れることで日常生活で培われた既存のパラダイム(物事の見方・考え方)が新たなパラダイムへと再構築されます。
ただし、忙しいビジネスパーソンが「アイデアは移動距離に比例する」という言葉に従って、頻繁に別の国に移動する時間を確保するのは難しいです。
しかし、移動せずとも異なる土地の文化、環境に触れることは可能です。その手段が映画。別の国で撮影された映画を観ることで日本と全く異なる文化、環境を疑似体験できます。
本稿では、日本の地球の裏側に位置しており、文化が大きく異なる南米で撮影された映画5選をご紹介します。
南米映画5選

悪の限りを尽くすギャングはいかにして「ギャング」になるのか
ー「闇の列車、光の旅」米国・メキシコ映画

画像出典:Amazon
少女がホンジュラスからメキシコを経て米国へ密入国するストーリー。本作では、メキシコの人を人とも思わないようなギャングが殺人、レイプなど悪の限りを尽くしています。
しかし、そんなギャングは中南米の国々では身近に噂に聞く当たり前の存在です。筆者も南米コロンビアに住んでいましたが、コロンビアでは近所にギャングが住んでいる、友達の友達にギャングがいる、ギャング同士の抗争で死体が見つかったなどが当たり前なことでした。
しかし、忘れてはならないのはそんなギャング達も元はと言えば可愛い小さな子供。そんな子供から一体どのように「ギャング」に育っていくのか。そこには「普通の子供」を「ギャング」に育て上げる巧妙な「文化装置」があったのです。
本作では、そんな日本では馴染みのないギャング達がどのように育っていくのか知ることができます。
社会から悪を完全に排除することはなんとも難しい
ー「エリート・スクワッド」と続編「エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE」ブラジル映画

画像出典:Amazon
「エリート・スクワッド」はブラジルの軍警察の特殊警察作戦大隊(BOPE)とブラジルのスラム街「ファベーラ」のギャングとの抗争を描いています。BOPEは誇り高くて正義感のある精鋭によって支えられていますが、彼らはギャングに対しては容赦ありません。
殴る、蹴る、ビニール袋をかぶせて自白させる拷問を加え、抵抗するギャングは即射殺します。続編「エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE」で、BOPEはギャングを弱体化させることに成功します。
しかし、ギャングを壊滅させると次は腐敗した警察がギャングと同じく「自分が締めている地域でみかじめ料を回収」し始めるのです。BOPEはそんな腐敗した警察と抗争を始めます。
腐敗した警察というのは、BOPEにとっても容易に手を出すことができないギャングよりも厄介な「悪」です。そういった意味では、ギャングを排除せずに存在させておいた方がまだマシだったともいえます。
悪を排除すればさらに強力な悪がはびこるのです。社会から悪を完全に排除することはとても難しいのです。
ビックリするくらい軽い命、場所が変われば命の重みは変わる
ー「シティ・オブ・ゴッド」ブラジル映画
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1960~1980年代のブラジルのスラム街「ファベーラ」のギャング同士の抗争をノンフィクションで描いています。この映画が凄いのは抗争でガンガン人が死んでいくのですが、その描かれ方がどこか軽く、コミカルな点です。
それ故に、当時の「ファベーラ」における命の重みは、現代の日本人の私たちのそれとは全く異なるものだったのだと想像できます。
映画の中では、とにかく人が死にます。しかも、ギャングは些細な争いで躊躇なく他人を殺します。彼らにとって他人の命は相当に軽いものなのです。本作を観ると場所が変わればこんなにも命の捉え方が変わるのだと考えさせられます。
古今東西、人は権力に翻弄されて来た
ー「瞳の奥の秘密」 アルゼンチン映画

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舞台は1970年代のアルゼンチン・ブエノスアイレス。刑事裁判所書記官のベンハミンは若い女性教師のレイプ殺人事件を担当。犯人の捜索は難航しますが、ベンハミンは妻を殺された夫の妻に対する愛情に心を打たれ、必死で犯人を捜索します。
そして、とうとう犯人を発見し逮捕します。しかし、犯人は「ゲリラ活動への情報提供に貢献したということで」として政権の命令により強権的に釈放され、さらには大統領のSPとして採用されます。犯人の恨みを買ったベンハミンは命を狙われることになります。
歴史的背景にも注目です。1976年~1983年のアルゼンチンでは「汚い戦争」という軍事政権による強権的な政治が行われていました。左派ゲリラの取り締まりを名目に労働組合員、政治活動家、学生、ジャーナリストらが逮捕、拷問され3万人が死亡したと言われています。本作「瞳の奥の秘密」では権力と言う巨大な力に翻弄される人々の姿が描かれています。
背に腹は代えられぬ…コカインを飲み込んで密輸
ー「そして、ひと粒のひかり」 コロンビア映画

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コロンビアの田舎町に住む17歳の少女マリアが、コカインを詰めたカプセルを飲み込み米国に密輸する「ミュール」という仕事をするストーリー。
もしカプセルが胃の中で破裂したら急性薬物中毒による死を覚悟しなければなりません。実際にマリアと共に密輸を実行した別の少女は急性薬物中毒で死んでしまいます。マリアはなぜこのような危険を冒したのか。それは、お金欲しさからです。
マリアは子供を身籠ったのですが、そのお腹の子の父親であるボーイフレンドは全く責任を取りたがりません。さらに、運悪く職場を解雇されてしまいました。
コロンビアは平均月収が3万~4万円ほどですが、物価は日本の5分の3ほどでそこまで安くありません。そんな状況ではマリアのように危険を冒してでもお金を手に入れようとする人が多いのは納得できます。
国が変われば常識も価値観も変わる
本稿でご紹介した映画。日本の当たり前が、当たり前なことではないのだと思わされる映画ばかりです。いま私たちの周りにある安全、安心などの日常はなんとなく存在しているものではありません。
先人が努力をして、普通に生活できる環境をつくってきたのです。東京オリンピック前の1950~1960年代の東京の映像を見ると、その辺にゴミを適当に捨てていて、今のようにきれいな環境ではありませんでした。
そんなわずか数十年前の自国の様子さえ、映像で見なければピンとこないのが人間です。刺激的な映画の数々を観ることで、既存のパラダイムを変革し、新たな物事の見方・考え方を獲得しましょう。
