株投資より現代アートが熱い!楽しみながら100倍のリターンを狙おう!

現代アートは身近になった?

「現代アートは得体が知れない」それが現代アートに対する世間一般の認識ではないでしょうか。同時に「現代アートは高価なものだ」という認識もまた、世間に浸透しています。しかし、実は現代アートは私たちでも「買える」ものなのです。

ここでは奈良美智氏やオノ・ヨーコ氏などの現代アーティストの作品を扱う日本を代表するギャラリーの小山富美夫氏著『”お金”から見る現代アート』を参考にしながら、この「得体の知れない現代アート」の正体に迫るとともに、その購入方法や購入することのメリット・デメリットなどに触れながら、アートに触れることの意味を考えていきます。

TOP画像出典:flicker Photo by Tomás Fano

現代アートは実は「買える」

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2007年秋のクリスティーズ・ニューヨークという世界最古のオークションハウスでのオークションで、奈良美智氏の描いた眠っている少女の絵「Princess of Snooze」に1億6607万円の値がつきました。村上隆氏の「マイ・ロンサム・カーボーイ」に至っては16億円もの値段が付いています。とても一般人が購入できる価格ではありません。そんな奈良美智氏の絵が、初期の頃は1枚1万2000円程度で販売されていたというと、驚くでしょうか。

しかしこれは事実なのです。現代アート市場には1〜3万円程度で購入できるものもあれば、30万円〜50万円程度のちょっと頑張れば手が届く作品まで、実に様々な価格帯のものが売られています。確かに日本人にとって「現代アートを買う」というのは「金持ちの道楽」といったイメージが強いかもしれませんが、値段だけで言えば、全くもって手が届かない品物ではないのです。

「現代アートは金持ちの道楽」か?

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画像出典:Wikipedia

たとえ購入可能な価格だったとしても数万円や数十万円の買い物をするのであれば、そこには何か目的・メリットがあるはずです。果たして現代アートを買うことにはどんなメリットがあるのでしょうか。

1つは「心の満足」。すなわち純粋にアートを楽しむことができるというメリットです。車やバイク、宝石やアクセサリーを買う場合にも、私たちは「実用」以外に価値を見出しているはずです。そうでなければ嗜好品市場の類は軒並み成立しなくなってしまうでしょう。アートにも同様の楽しみ方があるのです。

もう1つのメリットは「投資」。奈良美智氏の絵が初期の頃は1万2000円程度で売られていたことに触れましたが、今同じ絵をオークションに出せば、落札価格は100倍なんてものではないでしょう。現在損保ジャパン日本興亜が所有するフィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」は1987年に約53億円で落札されていますが、描かれた当初は一般のサラリーマンでも買える値段でした。つまり、アートとは市場価値が認められば株や金、不動産など目ではないほどの投資効率を誇る投資商品でもあるのです。

現代アートを見る目を養おう

とはいえ一般的には「得体の知れない」現代アート。どのようにして価値あるものを見分け、どのようにして購入に踏み切ればいいのか、わからないという人も多いはず。ここでは小山氏の提唱する「目と耳を鍛える」という方法を紹介します。

まずは「現代アートを見る目」の鍛え方から。目を鍛えるためには、とにかくたくさんのアートを垣根なく見ることが重要だと小山氏は言います。「現代アートを買いたいから現代アートしか見ない」という姿勢では、全く新しいアートが目の前に現れた時にそれが価値のあるものなのか、駄作なのかの判断ができません。

料理に例えれば、和洋折衷の料理の味を分析するためには、和食にも洋食にも精通していなければならないのと同じです。印象派とダダイズムを折衷したアートが現れた時に、その絵を理解するためには両方のアートを見ている必要があるのです。

もちろん「絵を見る」と言っても、ただ漠然と見ていたのでは進歩がありません。技術・感情・コンセプトという3つの判断基準を意識してみると、「その絵の何が優れているのか」が分析しやすくなります。例えばセザンヌは「技術」と「コンセプト」が優れている、ムンクは「感情」の表現が優れている、といった具合です。このような地道なトレーニングを重ねていくうちに、わざわざ考えずとも「目の前の絵の凄さ」を感じることができるようになっていくのだそうです。

現代アートを聞く耳を養おう

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画像出典:Wikipedia

アートは目で見るものですが、同時に耳で聞くものでもある、というと違和感を感じるかもしれません。しかし特に投資を目的として現代アートを買う場合には、作品を取り巻く市場の動向の把握は不可欠です。

前掲書の中で小山氏が耳を鍛える方法として挙げているのが、気に入った作品のアーティストがそれまでどんなギャラリーで展覧会をしてきたのか、あるいはどんな作品をこれまでに発表してきて、どんなことを勉強してきたのかなどを調べていくというもの。

あるいは各ギャラリーの取扱作家や取扱作品などの情報も、ギャラリーの傾向を掴むのに重要だと小山氏は言います。もちろん『芸術新潮』『美術手帖』といった専門誌も耳を鍛えるのに役立ちますし、海外の情報にもアンテナを張ることも大切です。海外のアート情報を得るのに最も重要なメディアの1つに小山氏は『ニューヨーク・タイムズ』が毎週金曜日に出すアートレビューを挙げています。

まずは「好き!」と思うものを買ってみる

現代アートを見る目・聞く耳がついたとして、では実際にどのようにして現代アートを買うといいのでしょうか。もし初めて現代アートを買うのであれば、まずは「好き!」と思うものを購入するのがオススメです。

「この作品は市場価値があるものなのだろうか」「将来的に価値はどれくらいあがるだろうか」などの難しいことは考えずに、養った自分の目と耳が「この作品が好きだ!」と判断するのであれば、まずはその感性に委ねてみましょう。そうすることで「現代アートを買う」という第一歩が踏み出せるのです。

「価値のあるもの」を買う/「間違いのないもの」を買う

第一歩が踏み出せたら、小山氏が著書で挙げているような買い方ができるようになっていくはずです。例えば「自分の好みではないけれど、きっといいものだ」と思うものを買う方法。これには自分の見聞の幅を広げる「経験」としての意味合いと、コレクションが増えてきている人であれば作品群の幅を広げる意味合いもあります。

あるいは投資目的で現代アートを買いたいという人であれば、「間違いのないもの」を買うのも方法です。小山氏はその特徴を「知名度が高く人気があり、誰にでもわかりやすい作品」と表現しています。具体的な作家を挙げるとすればアンディ・ウォーホルやキース・ヘリングなどです。これらは確かに1つ数千万円は下りません。しかしその反面、値崩れがしにくく、投資物件としてはリスクの最も低いジャンルです。資産に余裕のある人は、こういう買い方もあることも頭の片隅に置いておくといいかもしれません。

現代アートを買うデメリットはないのか?

世の中の全ての事象の例に漏れず、現代アートを買うことにもデメリットは当然あります。

価値の変動などは他の株や金などと同じですが、アート特有のデメリットが「損傷・劣化のリスク」と「保管の手間」です。いくら価値のあった作品でも、画家が描いた時から歳月が経ち、絵の具の色が抜けていったり、紙の状態が悪くなったりしていけばどんどん価値は下がっていきます。アートが「もの」である以上、こういった損傷・劣化のリスクは避けられません。

このリスクを極力抑えるのが保管設備ですが、個人所蔵では完璧な環境を整備するのは難しいことは否めません。とはいえ、劣化のスピードなどは作品の素材によっても大きく変わりますし、ある程度であれば個人所蔵でも対応できるので、画廊などに聞いてみましょう。

一般に「得体の知れないもの」にされがちな現代アートは、実は一般人でも手の届く嗜好品の一つであり、投資商品の一つです。地道に価値を見極める目を養ったり、情報を集める耳を鍛えれば、何を買うべきで何を買うべきでないのかの判断能力も身につきます。

しかしこの判断能力が身につく速度には個人差があるのだとか。それを決定づけるのは、小山富美夫氏いわく「アートを好きであること」。「100倍以上の利益が出る!」なんて聞くと夢が膨らみますが、とにもかくにもアートを好きになること。そこから始めてみましょう。

[文・編集] サムライト編集部