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「今の自分」に満足していますか?
「今の自分に満足している」とはっきり言える人はそれほど多くはありません。しかしだからと言って、今の自分を変えるのは簡単ではありません。変わるためには、何か新しい場所や人と出会い、新しいことを始め、今の自分を打ち破らなければならないからです。
編集者として幻冬舎に所属しながら、様々な職種の人たちと様々なビジネスを立ち上げている箕輪厚介さんは、この「何か新しい場所や人と出会い、新しいことを始め、今の自分を打ち破る」を日常的に行なっている人の一人です。
ここでは彼の著書『死ぬこと以外かすり傷』の中に詰め込まれている、箕輪流「今の自分」を打ち破る方法のエッセンスを紹介します。
「やりたい・行きたい」を「やります・行きます」に変える

なにか声がかかったとき、「やりたい」「行きたい」という言葉を禁句にする。そして「やります」「行きます」と言うようにするのだ。
引用:『死ぬこと以外かすり傷』p113
新しい人や場所、仕事に出会い、それを今の自分を打ち破るきっかけにするためには、まず新しいモノ・コトと出会う絶対数を増やす必要があります。
しかし仕事上の知り合いや昔の友人などから「こんな話があるんだけど、やってみないか」と言われて、「やりたい」「考えさせてくれ」といったん話を止めてしまうと、いつまで経っても新しいコト・モノとの絶対量は増えて行きません。
箕輪さんは本当に興味のないものを除き、少しでも気になるコト・モノが舞い込むと、ほぼ反射的に「やります」「行きます」と返答するのだそうです。
もちろん数をこなしていれば、当たりの企画もあればハズレの企画もありますが、それでも迷わず手を挙げておかなければ、当たりの企画の絶対数も増えません。
またとにかくなんでも「やります」「行きます」と言うキャラを作っておけば、何か面白いアイデアを思いついた人が「あいつならきっとやってくれる」と思い出してくれます。こうなれば、自動的に新しいモノ・コトとの出会いが増えるというわけです。
「でもそんなことをしたら、物理的に限界がくるのではないか?」と思うかもしれません。その通り。実際箕輪さんも、引き受けた仕事の約6割は自然消滅していくのだそうです。
理由は「時間や場所などの都合で物理的に対応しきれなかった」「そもそもその仕事への熱量が途絶えてしまった」など。
これを聞くと無責任ではないかと思う人もいるかもしれませんが、箕輪さんは「それでいいのだ」と言い切ります。始めてみなければそれが本当に面白いことなのか、自分が熱狂できることなのかがわかりません。
だから「始めたら最後までやりきらないとダメ」と愚直に考えるのではなく、「飽きたら止めてもいい」と開き直ってまずは始めてみることが何よりも大切なのです。
仕事は質より「絶望的な量」と「圧倒的なスピード」
スピードスピードスピード!
引用:『死ぬこと以外かすり傷』p104
量量量!
引用:同上p108
箕輪さんはもともと質にこだわって本を作るタイプの編集者でした。句読点の位置、紙の厚みや硬さなどあらゆる細部にこだわって一冊の本を作っていました。
しかし毎月1冊の書き下ろしを出版するNewsPicks Bookの編集長になって以来、このやり方は通用しなくなります。
なぜなら通常本というのは6ヶ月以上をかけて作るものですが、NewsPicks Bookはその半分の3ヶ月程度で作る必要があるからです。
結果、著者側にも「3日」「3週間」といった過酷なタイムスケジュールの中で執筆を依頼することになります。普通の考えの持ち主なら「そんなやり方ではいいものはできない」と思うでしょう。
しかし箕輪さんは、圧倒的なスピードで仕事をこなし、空いた時間でまた別の仕事をこなし、そうやって
「毎朝、今日やらなきゃいけないことを考えると死にたくなる」(引用:p110)
くらいの絶望的な量をこなすからこそ、他の引き離すような成長につながるのだと言います。
もちろんじっくり準備をしていなければ、失敗するときも恥をかくときもあります。しかしそうした経験こそが高い集中力の中でのPDCAへとつながり、能力の向上や要点の把握につながっていきます。
その頃には「今の自分に満足できない」などと言っている暇すらなくなって、「今の自分」を打破し続けるサイクルを夢中で走り続けていることでしょう。
意識的に「予定調和」を破壊する

新しいものを生み出したければ、予定調和や合理性というものからあえて離れて、自らトラブルに突っ込んでいかなくてはならない。
引用:『死ぬこと以外かすり傷』p27
双葉社時代に「ネオヒルズ族」与沢翼さんと手を組んで雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を半ば無理やり刊行すれば、発売日当日に与沢さんが暴行容疑で書類送検。
堀江貴文さんの『多動力』のマンガ化にあたってはどうしても舞台を無人島にしたくて、最初から最後まで堀江さんに相談なしに出版。
格闘家青木真也さんの著書『空気を読んではいけない』を売るために書店前でゲリラサイン会を敢行したところ、書店から本社営業部にクレームが入電。
前述した1冊の本を3ヶ月で作るNewsPicks Bookを含め、箕輪さんの仕事はどれもこれもが型破りで、予定調和を破壊し尽くしています。
もちろんそこではトラブルが頻発しますが、それを逆に活かしたり、無理を押し通したりすることで、箕輪さんは本を売ってきました。
実際与沢さんが暴行容疑で書類送検になった際は、上司に「プロモーションです!」と言い切って、回収の危機に見舞われていた『ネオヒルズ・ジャパン』を救っています。
前例にしたがって仕事をしたり、合理的に考えて仕事をしたりしていれば、それ相応の結果にはつながるでしょう。
しかしそれでは想定の範囲内の結果しか残せませんし、合理の権化とも言える人工知能が発達していけば、そうした仕事のやり方しかできない人間は淘汰されていきます。
無意識的に予定調和を破壊するのは、単なる空気の読めない行為です。しかし意識的な予定調和の破壊は違います。
自分の中や他人の中に予定調和を見るやいなや、「この調和を壊したらどうなるんだろう」と行動に移す。この姿勢こそが今の自分を打ち破り、人工知能をも蹴散らすのです。
バカでもいいから熱狂しろ

要領よく、賢くやろうとすると、何もかもが予定調和になります。予定調和が生み出すものは、今の自分が予定できる結果にしかなりません。
だからもし「今の自分」を打ち破りたいのなら、賢くやろうとしてはいけません。
何かの誘いを吟味することなく引き受け、後先考えずにスピードと量を追求し、合理性を意識的に無視し、バカになるべきなのです。
しかし単なるバカには誰もついてきませんし、何も生み出せません。重要なのは熱狂すること、夢中になることです。そして熱狂できることや夢中になれることに出会うためにも、やはりバカになるべきです。
何でもかんでも「やります」「行きます」と引き受けたりしながら新しいモノ・コトに出会う絶対数を増やす必要があるからです。
とにもかくにも、下手に頭を使わずバカになること。これが満足できない「今の自分」を打ち破る最も有効な方法なのです。
『死ぬこと以外かすり傷』には、ここで紹介した内容以外にもたくさんの「今の自分」を打ち破る=バカになるためのヒントが盛り込まれています。
もっと箕輪さんの頭の中が知りたいという人は、ぜひ手にとっみてはいかがでしょうか。
参考文献『死ぬこと以外かすり傷』

