もっとうまく話したいし、聞きたい
「素敵な人との出会いはあるのに、そんな時に限ってうまく話せなかったり、相手の話をうまく聞けない」そのような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
実際もっとうまく話せて、もっとうまく話が聞ければ、今よりもずっと色々な人と交友関係が築けるはずです。ではどうすれば自分が素敵だと思う人から「また会いたいな」と思われるような話し方や聞き方ができるのでしょうか。
その答えは実にシンプルです。すなわち話し上手・聞き上手の人の真似をすればいいのです。
放送作家である田中イデアさんの著書『なぜこの人と「また」話したくなるのか』には、会話や雑談の中から仕事のチャンスをつかんできた田中さん自身のコツや、多くの芸人さんやアイドルといった話し上手・聞き上手のテクニックがたっぷり紹介されています。ここではこの本を参考に、話し上手・聞き上手になるための3つのコツを紹介します。
「会話の基本」を整える

まず実際の会話に入る前に、会話の基本を自分の中で整えておきましょう。会話の基本とは、以下の5点です。
1.声の大きさを相手に合わせる。
2.音程や声のキーを相手に合わせる。
3.話のスピードやテンポを相手に合わせる。
4.相手のテンションに自分のテンションを合わせる。
5.相手に興味を持つ。
1〜4は心理学におけるミラーリング効果にもつながるテクニックで、相手が自分と同じ言動やしぐさを行うことで親近感を持つという人間の心理を利用することができます。
5に関しては簡単なように思えますが、コミュニケーション下手の人にはハードルが高いかもしれません。その場合は田中イデアさんが著書の中で紹介している、笑福亭鶴瓶さんの初対面術が役立ちます。
鶴瓶さんは、芸能人だけでなく初対面の一般人に対しても、すぐに興味を示して、色々と質問が出てきます。(中略)さらに鶴瓶さんは、興味のハードルがかなり低いことも特筆すべき点です。
引用:前掲書p29
興味のハードルが低いというのは「姉がいる」とか「大阪出身」「元野球部」といった、なんでもない情報に対しても「姉はどんな人なのか」「地元で好きな場所はどこか」「ポジションはどこだったのか」と興味を持って掘り下げるということです。
こんなふうに興味を持たれれば、相手も嬉しくなって話したくなるでしょうし、自分の話を聞いてくれるあなたに対して「また会いたいな」と感じる可能性も高くなります。
「使える相槌」を身につける

次に紹介するのは、芸人さんやアイドルが実践している3つの「使える相槌」です。
1.田村淳流「へえ〜」「へえ〜」「すげぇ!」
ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんは奥さんの話を聞くとき、内容はそっちのけで「へえ〜」を2回言ったあと、「すげぇ!」と言えば、たいていの話には対応できると言います。
この話には相槌の極意が2つ含まれています。一つは「すげぇ!」という形で、聞き手の感情がこもっている点。もう一つは相槌が「ふーん」「ふーん」「ふーん」といったように単調になっていない点です。
これらはいずれも話し手が「話を聞いてもらっている」と感じるために必要な要素となっています。「へえ〜」「へえ〜」「すげぇ!」自体は話の内容に合わせてある程度アレンジする必要がありますが、淳さんが言うように、これだけでもたいていの話題には対応できるでしょう。
2.アイドル流「そうなんですか〜。なんでですか〜?」
田中イデアさんいわく、アイドルが多用する相槌が「えぇ〜そうなんですかー。なんでですかぁ〜?」(引用:前掲書p72)。この相槌のポイントは、相手の意見や言葉に否定も反対も、肯定も賛成もせず、ただ「理解を示している」という点にあります。
「そうですよね!」「わかります!」といった共感の相槌は、本当に共感しているときは別として、共感していないときはウソになってしまいます。ウソをつく人と「また会いたいな」と思う人はいないはずです。しかしだからと言って相手と議論を戦わせてしまってもいけません。
肯定をすればウソになり、否定をすれば議論になる。こうした状況で効果を発揮してくれるのが、理解を示したうえで相手の考え方について質問をする「そうなんですか〜。なんでですか〜?」という相槌なのです。
3.さんま流「オウム返し+α」
会話におけるオウム返しは便利な相槌の方法として知られていますが、それだけでは適当に話を聞いていると思われかねません。しかし田中イデアさんは明石家さんまさんのオウム返しには+αがあると指摘しています。
その+αとは「感情」と「質問」です。すなわち単に相手の言葉を繰り返すのではなく、「えぇ!?」「ウソォ!」「信じられない!」といった感情的な言葉を加えて繰り返したり、オウム返しのあとに「それでそれで?」「どうしてそんなことに?」といったように話の先を促す質問を加えたりするのです。
この+αを活用すれば、オウム返しだけでもグッと奥行きのある相槌ができるようになるはずです。
「会話の糸口」の掴み方を知っておく

話し下手・聞き下手の人が苦戦するのが、会話の糸口。「どうやって会話の糸口をつかめばいいかがわからない」と嫌な汗をかいている人も少なくないはずです。この問題を解決するキーワードが次の2つです。
●共通項
会話や雑談を盛り上げようとすると、得てして「共通点」を探しがちです。しかし田中イデアさんは点よりも範囲の広い項、すなわち「共通項」を探すようにすすめています。すなわち「野球部」「サッカー部」ではなく「運動部」、「理系卒」「文系卒」ではなく「大卒」といった具合です。こうして範囲を広げてみると、点という狭い範囲では見つからなかった話題が見つけやすくなり、会話の糸口を掴みやすくなるでしょう。
●教えてください
歳をとるほど「知りません」「わかりません」は言いづらくなるものです。しかし知らない話題やわからない話題に対して、会話の糸口を掴むのは至難の技です。できれば別の話題に変えたいところですが、相手の気分を害してしまう可能性もあります。
そのような事態を防ぎ、かつその話題の中で会話をつなげていくためのセリフが「教えてください」です。
「それ、全然知らないんですよ。教えてもらっていいですか」
「その言葉の意味がわからないので、教えてもらっていいですか」
言うときは恥ずかしいかもしれませんし、場合によっては馬鹿にされたり、怒られたりするかもしれません。しかしそこで変なプライドを守って、なんとなくで会話をやりすごすより、ちゃんと教えてもらって実のある会話をした方が何倍もいいはずです。
会話下手で損をするのはもうやめよう
せっかくの素敵な出会いが一度きりになってしまったり、「暗い人」「一緒にいて面白くない人」といったレッテルを貼られてしまったりと、会話下手が人生の損につながることも少なくありません。
しかし会話下手は、心がけ次第で克服できます。ここで紹介した内容や、田中イデアさんの著書『なぜこの人と「また」話したくなるのか』を参考に、少しずつでも話し上手・聞き上手に近づいていきましょう。
参考文献『なぜこの人と「また」話したくなるのか』

