Contents
自己啓発は効果ある?
書店に行くと著名な経営者やタレントが書いた自己啓発本が並んでいます。将来に対して前向きに、元気に生きていくためにも自己啓発本は欠かせません。
一方で、それらの自己啓発本を手に取って読んでみてもあまりしっくりこないと感じている人も多いのではないでしょうか。自己啓発本で「笑顔であれ」と言われても「そりゃそうだけど…」と心の底では納得しきれていないのではないでしょうか。
そこで、当記事では、明治大学教授の堀田秀吾氏著の「科学的に元気になる方法集めました」を参考に一般的な自己啓発本で説かれていることの根拠を確かめていきます。
フェイクスマイルも悪くない
多くの自己啓発本では「笑顔であれ」と説かれています。確かに、よっぽど気味の悪い笑顔でないかぎり、笑顔は周りの人に心地よさを与えるものです。
しかし、実は、笑顔であることは周りの人だけでなく自分にとっても多くのメリットをもたらします。堀田氏は笑顔を作るとストレスが軽減されて元気になるとして「フェイクスマイル」を勧めています。
笑顔であるべき根拠としてマンハイム大学のストラック氏の実験が挙げられます。以下の3つの状態の被験者グループを作ります。
①ストローを吸うように唇を丸めて、歯がふれない状態でくわえさせられた被験者
②上下の前歯で挟んで、唇にペンがふれないようにくわえさせられた被験者
③フェルトペンを普通に手で持った被験者
強制的な形ではありますが、①のグループの被験者が最も笑顔に近い表情になり、それに②、③が続きます。その状態を保ったまま、それぞれのグループの被験者に漫画を読んでもらうと、①のグループの被験者が最も漫画を面白く感じたそうです。「笑顔をつくる」ことで楽しい気分も増すのです。
また、心理学者のクラフト氏とプレスマン氏が被験者に箸を以下の3パータンでくわえさせました。
①笑顔のようになるくわえ方
②口角だけあがるくわえ方
③笑顔にならないくわえ方
その状態のまま、被験者にストレスのかかる作業を実施させました。
そして、被験者の作業中のストレスの度合いを計測したところ、①笑顔のようになるくわえ方で箸をくわえた被験者の感じているストレスが最も少ないと判明したのです。
笑顔は周りの人のためにするのではなく、自分自身にもメリットがあるからすべきと言えるのです。
情けは人のためならずは科学的にも証明されている
自己啓発本ではよく、「人を喜ばせることをしなさい」と説かれています。実は、これには科学的根拠があるようです。スタンフォード大学のアーカー氏と、ヒューストン大学のラッド氏らは543人を対象に研究を行いました。研究の結果、人が幸せになるためには他人を幸せにするための行動をすると良いと判明しました。
ここで大事なのは、地球温暖化を予防するなどの抽象的なことではなく、より具体的な行動目標を定めて実行することです。本当に身近なことで良いのです。
友達にスイーツや駄菓子などプレゼントを渡して喜ばせる、近所周辺を掃除してみる、親に感謝の気持ちを込めた手紙を書くなど。自ら目標を定め、行動することで自分が幸福になれるのです。
さらに、カリフォルニア大学のリウボミルスキーの研究では、週に5回何か良いこと、例えば親の手伝いを買って出る、友達の相談に乗る、ボランティア活動に参加するなどする人は、何もしない人に比べて幸福度が高くなるという結果が出ています。
私たちは幸せになるためについ自分にばかり焦点を当ててしまいがちです。しかし、他の人を喜ばせる具体的な行動をすることで、自分自身が幸せになり元気になる効果もあるのです。自ら進んで与えられる人は結果的に得するのです。
自分を過大評価する性質を抑えるために「素直である」
自己啓発本で「素直であれ」というのは鉄板と言ってもいいくらいに書かれていることです。しかし、なぜ素直でなければならないのでしょうか。
コーネル大学のダニング氏らが大学生を対象にした調査で、テストで獲得した点数が低い学生ほど「もっと自分は高得点を取ることができる」と自分の実力を過大評価している傾向にあるそうです。能力の低い人ほど自分のスキルを正しく認識できず過大評価する傾向にあることを「ダニング=クルーガー効果」と言います。
人間誰しも多かれ少なかれ自分自身の実力を過大評価する性質があるのでしょう。その性質を抑えるために素直であることが必要なのです。過大評価することを抑え、自分を客観的に見る、他人からの指摘を受け入れて自分を向上させる努力を怠らないようにすること。これは古今東西の成功者に見られる素質でもあります。
悪口を言うとさらに怒りが増す、ひと呼吸置くことが大事
「悪口を言うな」これは自己啓発本だけでなく一般的に言われている常識です。しかし、人間誰しもどうしても悪口を言いたくなることはあります。他の人を不快にさせるから、悪口を言ってるのがばれたらマズいから悪口を言うべきではないのでしょうか。実は、自分にとっても悪口を言うことは良くないことなのです。
その根拠としてアイオワ大学のブッシュマン氏の実験があります。
・被験者に怒った時にパンチング・バッグを殴ると、怒りの解消に効果的という記事を読ませました。
・被験者を怒らせてみてパンチングバッグを殴った被験者と安静にしていた被験者の様子を観察。
結果、パンチングバッグを殴った被験者の怒りはおさまることなく関係のない人にまで怒りをぶつけるなど、さらに怒りの感情を持つ傾向にあると分かったのです。一旦、怒りに駆られた行動をしてしまうと、さらに怒りが増幅されるのです。
つい悪口を言いたくなることもあるかもしれません。しかし、Twitterで悪口を書き込んだり、他の人の悪口を言っても怒りは収まりません。最悪の場合、怒りが増幅して自分の周りの大切な人に怒りをぶつけてしまうことになりかねません。
あのローマの哲学者セネカも「怒りに対する最良の対処法は遅延である」と言っています。
悪口を言うのではなくて、深呼吸してみる、運動してみる、好きな映画を観てみるなど悪口以外の怒りを鎮める方法を考えましょう。最初は怒りの感情が押し寄せてきますが、時間を経るうちに怒りは収まっていくものです。
当記事では、多くの自己啓発本で説かれていることが科学的な根拠に基づいているのだということをご紹介しました。どんどん実践していきましょう。
