Contents
本の内容を血肉にするために
「意識して本を読んでいるけれど、いまいち身になっている気がしない」そんな悩みを抱えている読書家は少なくありません。しかしせっかくお金と時間をかけて読んでいる本ですから、できることなら内容を自分の血肉として役立てたいものです。ここではそんな悩みを解決する選択肢の一つとして「読書会」を提案します。
参考にするのは『GQ JAPAN』(2007年11月号)で「日本のトップマーケター」に選ばれたり、2012年Amazon年間ビジネス書売上ランキング第1位を獲得したりと、各方面で活躍し続ける神田昌典さんの著書『バカになるほど、本を読め!』です。
「身になる読書」と「身にならない読書」の違い
筆者は仕事柄、ビジネス書や文芸書を中心に年間100冊超の本を読みますが、恥ずかしながらそれらの本の内容全てを自分の人生に還元できているわけではありません。当然そうした「身にならない読書」に意味がないわけではありません。しかしできるならば役立てたいと思うのも事実です。では「身になる読書」とそうではない読書の違いとはどこにあるのでしょうか。筆者の読書経験から言えるのは、以下の3点です。
1.問題意識を持って購入した
2.行動に移した
3.他人に話した
問題意識を持って購入するということは、何かしら解決したい問題を抱えていて、その解決策を求めて購入した本を読みます。内容が見当違いなら別ですが、ある程度の説得力があれば2の「行動」に繋がります。特に健康系の新書や、趣味の筋トレに関連のある雑誌などは行動に移しやすい傾向にあります。
なぜならこれらの本は行動に移しやすく、また効果が現れるのも早いからです。逆に哲学系の本や、ビジネスマインド系の本などの内容は理解が難しいうえに時間をかけてじっくりと積み重ねなければ結果が出ないため、行動に移しにくい傾向があります。
2が実現できると、体験として話せるようになるため3に繋がりやすくなります。他人に話すということは、効果を実感しているか、全く実感できていないか、どちらにせよ結果が出ています。前者であれば継続し、後者であればやめてしまいます。また本の内容について知識のある人に話せば、さらに深い知識や知見を得ることができます。
こうして本の内容は身になるのです。これに対してなんとなく購入し、読みはしても行動に移さず、他人にも話さないような読書は、例外なく身になっていません。
「読書会」は読書の価値をレベルアップする

しかしどんな読書が身になり、どんな読書が身にならないのかを理解したところで、常にこの3つを実践するのは至難の技です。神田さんはこのためにこそ読書会を利用するべきだと言います。
とりわけ「他人に話した」、神田さんの著書を引用すれば「大勢の人と共に読む」(前掲書p39)に対して、読書会は大きな効果を発揮します。キーワードとなるのは「エクス・フォメーションの活性化」と「ソーシャルプレッシャー」です。
●エクス・フォメーションの活性化
「エクス・フォメーション」とは「イン・フォメーション」と対になる言葉で、知識を取り込んで自分を創るイン・フォメーションと違い、自分の思考をアウトプットして他人と交流し、相互のフィードバックにより思考を深める行為を指します。
個人で書評ブログを書いていてもエクス・フォメーションは可能ですが、「コメントの返事はまた今度書こう」といったように後回しにしたり、無視することもできてしまいます。しかし本について対面でディスカッションをする読書会なら、目の前の相手の言葉に対して即座に返事をしなくてはならないので、エクス・フォメーションが活性化されるのです。
●ソーシャルプレッシャー
一方「ソーシャルプレッシャー」とは、自分の行動を変えるきっかけになる他人からの影響のことです。読書会では本をテーマに様々な人が議論します。その中には自分より思考や行動のレベルが高い人も混じっています。
こうした人たちと同じ土俵で話すとき、読書会はある種の平等化の装置として働きます。そのため突然起業家ばかりのサロンに参加して圧倒されるようなこともなく、近所の町内会に参加して勢いが削がれることもありません。
●「理想的な読書会」は自前で開催できるか?
このように読書会という言ってみれば昔ながらの本の読み方は、一人で読んだり、インターネットを介して他人とつながるよりも、はるかに読書の価値をレベルアップしてくれるのです。しかし問題は読書会の持つ効果を最大限活用するのが難しいという点です。
自前で読書会を開催しようとしても、集められる人には限りがあるうえ、自分のネットワーク内の集まりになりがちです。読書会の価値は、そこに集まるメンバーの思考や行動のレベルが高いほど、そして年代や仕事、生き方などが多様であるほど大きくなります。このような理想的な読書会を自前で開催するのは至難の技です。
「リード・フォー・アクション」という選択肢
そこで選択肢となるのが、神山さんが発起人として2011年9月にスタートさせた「リード・フォー・アクション」です。これはインターネットを通じて全国各地の読書会に参加できる「日本最大級の、“行動するための読書会”ネットワーク」(公式HPより)です。
リード・フォー・アクションには単なる読書会の開催お知らせ掲示板に堕することなく、理想的な読書会にするための仕組みが整っています。
●「リーディング・ファシリテーター」の存在
第一に専門の養成講座を受けた「リーディング・ファシリテーター」が全国に存在し、彼らがより行動に繋がりやすい読書会にするためのファシリテーションを行います。例えば次のような具合です。
「監訳者のまえがきを三分間で読む」
「目次とまえがきと奥付を三分間で見て、全体像をつかむ」
「目次からキーワードを四分間で抜き出す」
「二○ページごとに本を開き、キーワードを抜き出す」
引用:前掲書p109
こうした指示に従って参加者は本を読み進め、時に他の参加者とディスカッションをします。また読書会の冒頭で参加の目的を明確にしたり、最後にどのような行動をするかを宣言したりする場合もあります。こうしてできるだけ多くの参加者が身になる読書をできるよう、サポートをしてくれるというわけです。
●事前に本を読む必要はなし!
第二に手軽に気軽に参加できるよう、読書会の参加費は各人2,000円〜3,000円程度、しかも事前に本を読む必要もありません。いわゆる読書会のイメージは、すでにテーマの本を読み込んだうえで、その内容をディスカッションで掘り下げていくというものです。しかしリード・フォー・アクションでは前述のような方法で本のエッセンスを短時間で掴めるように、リーディング・ファシリテーターが導いてくれます。そのため気負わずに参加できるのです。
リード・フォー・アクションで読書会の価値を実感しよう
リード・フォー・アクションで現在開催されている読書会はリード・フォー・アクションのホームページの「開催情報」から探すことができます。地域やカレンダー、地図から探せるので自分の住む地域で開催されている読書会を簡単に見つけられます。
ドイツ哲学者エマニュエル・カントの名著『実践理性批判』を読む読書会もあれば、「ジャケ買い本」や「積ん読本」を読んでディスカッションをする読書会、「健康の悩みを解決する」がテーマの読書会など、内容は実に様々です。何かを学び、自分を変えるための行動のきっかけを得たいという思いがある人は、ぜひ自分の目的や問題意識に合致した読書会に参加してみましょう。
参考文献
『バカになるほど、本を読め!』

