家族と職場以外に3つのコミュニティに所属しよう

これからの時代の人間関係術とは?

人工知能やコンピュータがますます台頭し、100年先どころか10年先、20年先も読めない時代、人間関係のあり方も日々変わり続けています。

かつては実際に対面した相手としか構築できなかった関係が、今はヴァーチャル化が進んだことで「つながりすぎ」が問題視される状況にさえなっています。

そんななかで人間関係に疲れてしまい、「もう家族と職場だけでいいや」と必要最小限のコミュニティに人間関係を限定する人も多いのではないでしょうか。

しかしこれからの日本においては、そうした人間関係のあり方はリスクが高いと同時に、人として、ビジネスパーソンとしての成長を妨げる可能性があります。

ここでは人間関係の限定によって生じる問題を明らかにするとともに、今の自分とは違う「なりたい自分」になるためのコミュニティの選び方を解説します。

「職場と家の往復で毎日が過ぎる」は6割以上

毎日朝早く起きて家を出て、満員電車に揺られて会社に行き、ヘトヘトになってまた家へ帰る。ふと気づくと季節は過ぎていて、「今年も知らない間に陽が長くなったなあ」と呟く……。

このように、職場と家の往復で毎日が過ぎ去っていくという生活を送っている人は、日本のビジネスパーソンの「スタンダード」になっているかもしれません。

というのも社会人男女を対象にしたあるアンケート調査によれば、実に約7割が「毎日が職場と家の往復」で終わっており、帰ると食事を済ませて寝るだけという人も多いということがわかっているのです。

また20〜30代の未婚の女性ビジネスパーソン500人を対象としたアンケート調査でも、約6割が仕事の後は家に帰るだけという生活を送っていることが明らかになっています。

もちろんこれだけで日本のビジネスパーソン全体が「職場と家の往復で毎日が過ぎる」生活を送っているとは言えませんが、かなりの数の人がそのような生活を送っているということは間違いないでしょう。

これを読んでいる人のなかにも「自分もそうだ……」と共感している人は少なくないはずです。

「家族と職場だけ」が危険な2つの理由

しかしこのような生活を送っていると、自ずと所属するコミュニティが「家族」と「職場」だけになります。一人暮らしの人の場合は、なんと職場だけです。

「それでも毎日楽しければいいでしょ」「それが精一杯なんだよ」と思う人もいるかもしれませんが、長い目で見たときにそれでは2つの理由で危険なのです。

リスク:1つのコミュニティの「寿命」が短くなっている

2019年5月にトヨタ自動車の豊田章夫社長が「終身雇用は難しい」という発言をしたことが話題になりましたが、日本経済が縮小するにつれて解雇や倒産のリスクはますます高くなっていくでしょう。

もしそのときにコミュニティが職場しかなければ、次の仕事を探すにも時間と労力がかかります。

人間のアイデンティティには所属するコミュニティとそこでの人間関係が大いに影響するため、精神面でもダメージを受ける可能性もあります。

「家族」も例外ではありません。未婚の人の場合、両親の死亡とともに家族というコミュニティはほとんど崩壊します。たとえ結婚できても、かつての日本とは違って今の日本は女性でも一人で生活していける時代です。

経済的に自立しやすいと、それだけ離婚をためらう理由も少なくなくなるということです。このように考えれば、家族というコミュニティの寿命も短くなっているのです。これにより、経済的・精神的ダメージを受ける人は多いでしょう。

このようなリスクに対応するには、コミュニティがなくなったとき、あるいは所属できなくなったときの「保険」が必要です。投資においては資産を分散させて、ある資産の価値が暴落しても、別の資産の価値が上昇するように運用するのが基本中の基本です。

それと同じように、コミュニティにおいても「こっちがダメでも、あっちがある」という状態を作っておく必要があるのです。

成長の機会:掛け算の人間関係が成長を加速させる

経営コンサルタントの大前研一氏は『大前研一 洞察力の原点』のなかで次のような発言をされています。

人間が変わる方法は3つしかない。
1つ目は時間配分を変えること。
2つ目は住む場所を変えること。
3つ目は付き合う人を変えること。

この言葉からは、人間関係が人を形成する重要な要素であることがわかります。

家族や職場もその一部ではありますが、それだけではマンネリ化は避けられず、人として、ビジネスパーソンとしての成長につながりません。

一方で、複数のコミュニティに所属していれば人間関係にも多様性が生まれます。

するとそこから自分が学べることや真似したいことが見つかったり、自分が本当にやりたい仕事が見つかったりと、さまざまな可能性が生まれてきます。

またコミュニティのなかで大きな会社の経営者や、数千万円や数億円の稼ぎを生み出している投資家など、家や職場ではなかなか出会わないような人と接することができれば、自分の知らなかった世界を知ることができます。

こうした刺激は必ず自身の成長につながります。もちろんいろいろな人と知り合うだけではほとんど成長できませんが、出会いから行動や実践につながれば、これから訪れる「個の時代」を生き抜くための力が身につくはずです。

「なりたい自分」になるためのコミュニティの選び方

家族と職場以外のコミュニティに所属する場合、目標は「+3つ」を目指しましょう。あまり少な過ぎても前述したような危険を回避できませんし、逆に多過ぎれば人間関係を管理しきれなくなり、疲れてしまいます。だからこそ「+3つ」なのです。

しかしコミュニティと言っても、その数は無数にあります。いったいどのように選べばいいのでしょうか。以下ではそのための基準を「もっと成長したい人」のための選び方と、「劣等感を克服したい人」のための選び方を紹介します。

もっと成長したい

成長志向の強い人が、+3つのコミュニティを選ぶ際に基準になるのが、こちらの3点です。成長したいという思いが強いのであれば、その時点である程度モチベーションが高いため、ややタフなコミュニティを選ぶことをおすすめします。

特にポイントとなるのは3つ目です。なぜならこれは上表にも記述したように自分にとってのカンフル剤でもありますが、同時に「お金を支払ってまで参加しよう」という意思のある人たちが集まっているコミュニティだという証拠でもあるからです。

劣等感を克服したい

劣等感は誰しもが抱えているものですが、少ないほど人生は楽しくなります。この劣等感の克服を目的にコミュニティを選ぶのであれば、上表のような基準を設定するといいでしょう。

上表の3点に共通するのは「ポジティブな寛容さ」です。劣等感を克服するためにコミュニティに所属するというと、下手をすると同じような劣等感を抱えたメンバーばかりのコミュニティを選んでしまいがちです。しかしそれは単に劣等感(=傷)を舐め合うだけで、克服にはつながりません。

舐め合いではなく克服に至るためには、誰かと比べることをせず、それぞれが当たり前の「自分らしく」あることを認め合っているコミュニティに所属するべきです。

上表には、そうしたコミュニティが満たしているであろうポイントを挙げました。

コミュニティが自分と周りを守ってくれる

今後、職場と家の往復だけに日々を費やして人間関係を限定してしまうと、万が一の時のリスクヘッジができなかったり、人として、ビジネスパーソンとしての成長の機会を逃したりすることになります。

そうして仕事や稼ぎを失えば自分や家族の生活が危うくなりますし、体や精神を病んでしまう可能性もあります。

そのような状況を回避するために、あらかじめ複数のコミュニティに所属することで、自分やその周りの大切な人を守れる体制を築いておきましょう。

Career Supli
コミュニティから得られるものは非常に多いです。ぜひ自分にフィットするコミュニティを探しましょう。
[文・編集] サムライト編集部