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どこよりも美味いコンビニコーヒー?
最近、美味しいコーヒーを飲みましたか?「飲んだ」と答える人の中には「コンビニコーヒー」だと言う人もいるのではないでしょうか。特にコーヒーに対してこだわりのない人でも気軽に購入できる価格と、コストパフォーマンスの高さに「コーヒーを飲むならコンビニでしょ」という人もいるかもしれません。
ここではどうしてコンビニコーヒーがこんなにも美味しくなったのか、そしてどうしてチェーン店のコーヒーが「美味しくない」あるいは「マズい」と評価されることがあるのかについて解説するとともに、より美味しいコーヒーを実現するために各社が行っている取り組みについても紹介します。コーヒーフリーク必読です!
日本のコーヒー 4つのウェーブ

日本のコーヒー市場ではこれまで「4つのウェーブ」が起きてきました。ファーストウェーブは第二次世界大戦が終了し、ようやく煎り豆の輸入が再開された1950年以降を指します。実際にコーヒー市場が活性化するのは輸入が自由化され、インスタントコーヒーの輸入が始まった1960年以降のことです。19650年に163トンだった総輸入量(生豆換算)は、1965年には2万9,234トンにまで膨らんでいます。
1970年になると総輸入量(生豆換算)は8万9,456トンと爆発的な増加を見せます。これがセカンドウェーブ、喫茶店ブームです。「こだわりのコーヒー」が売りの、蝶ネクタイをつけて髭を生やしたマスターがいる専門店が乱立したのもこの時期です。
しかし大量生産大量消費経済がもてはやされる中で、こういった文化は廃れ始め、そこにバブル経済による地価高騰が重なって、コーヒー専門店はその数を激減させていきます。そうして台頭したのがチェーンコーヒー店やシアトルコーヒー店、自家焙煎ブーム。これがサードウェーブです。
いまだにこのサードウェーブの存在感は大きいものの、すでに次のムーブメントが来ています。それこそがフォースウェーブ「コンビニコーヒー」です。ほとんど日本の戦後復興と並行して成長してきた日本のコーヒー市場ですが、どうしてここに来て「コンビニコーヒー」なのでしょうか?この一見チープなコーヒーにはコンビニ各社の並々ならぬこだわりと、コーヒー業界の暗部が隠れています。
コンビニコーヒーが美味いワケ
コンビニコーヒーの特筆すべきは、「挽きたて淹れたて」である点です。缶コーヒーよりは格段に手間はかかりますが、機械にカップをセットするだけで自動で豆が挽かれ、お湯が注がれて、できたてのコーヒーがたった100円で楽しめます。コーヒーメーカーUCC上島珈琲生産責任者であり、コーヒーハンターと呼ばれる川島良彰氏に言わせれば、「ドリップしたコーヒーは、抽出後20分以内が美味しく飲める限界」。コンビニコーヒーに至っては抽出直後から飲めるので、美味くないはずがないというわけです。
コンビニコーヒーが美味しいと感じられる要因には、各社の万人受けする一杯を追求する姿勢が挙げられます。ファミリーマートやローソンのコーヒーはエスプレッソ方式で抽出していますが、抽出時間を長くするために「ルンゴ」と呼ばれる方式を採用し、適度な濃さを実現しています。濃さよりもキレのある酸味を押し出し、コンビニ大手の中で1社だけペーパードリップ方式を採用しているのはセブンイレブンです。
もちろんコストパフォーマンスもコンビニコーヒーがムーブメントを巻き起こした大きな要因です。たった100円で「そこそこ美味いコーヒー」が飲めるとあれば、人気が出るのも当然です。
「でもやっぱりコーヒーのチェーン店やホテルの方が美味しいんじゃないの?」と思う人もいるでしょう。しかし、実は一概にそうは言えないのです。
コーヒーチェーン店がマズいワケ
このようなコンビニコーヒーに対して、コーヒーチェーン店やホテルのコーヒーが必ずしも劣っているというわけではありません。しかし前述したように「コーヒーが美味しいのは抽出後20分以内」です。
にもかかわらずコーヒーチェーン店や、「おかわり自由」の場合もあるホテルのラウンジのコーヒーは保温ポットに入れてしまえばコーヒーはどんどん酸化するので、味は落ちてしまいます。こうしたコーヒーはの提供をしているお店は「煎りたて淹れたて」という点でコンビニコーヒーに大きく差をつけられているのです。
コストパフォーマンスも「コーヒーチェーン店がマズい」という認識につながる大きな要因です。カフェや喫茶店では300円から500円程度、ホテルや一流レストランであれば1,000円前後がコーヒーの相場ですが、これらの場所で飲むコーヒーと、コンビニコーヒーの味の間に価格ほどの大きな差はありません。同じ味なら、あるいはより美味しいなら、コンビニコーヒーに消費者が流れるのは必然なのです。
「本当に美味しいコーヒー」ってどんなコーヒー?
では「本当に美味しいコーヒー」とはどのようにして作られるのでしょうか?最も分かりやすい例に「欠点豆」があります。文字通り欠点のあるコーヒー豆のことで、変色して黒くなった豆、未成熟の豆、虫食い豆や割れた豆など、色々な欠点がありますが、どれも最上のコーヒーにするためには邪魔なものです。
自分でコーヒーを淹れる人は市販の豆を購入したら、まずはこの欠点豆を取り除くだけでもコーヒーの味に安定感が出ます。豆の品種とその産地も、コーヒーの味に大きな影響を与えます。例えば「ゲイシャ」と呼ばれる品種の本来の風味を実現するには、雨が多く、風の強くない土地で育てる必要があります。
しかし雨の少ない、風の強い土地で育てた「ゲイシャ」もあるのです。これでは完全に別物の豆。「ゲイシャ」の美味しさを知ることはできません。
コーヒーは水によって大きく味を変えます。アメリカや北欧の「サードウェーブコーヒー」で使う超浅煎りの豆に対して、日本の軟水を使ってしまうと酸味が前面に出てしまいますが、現地で使われている硬水を利用すれば酸味が緩和され、香りが前面に出るのです。このように様々な要因が絡み合って1杯のコーヒーは出来上がっています。
MUJIや東大で飲めるタイ少数民族が作ったコーヒー
コーヒー豆は国際的な商品でもあります。「FAIRTRADE JAPAN」によればコーヒー生産国のほとんどがいわゆる「開発途上国」で構成されており、コーヒーがそれらの国々の産業として育てば、WINWINのビジネスモデルが構築できるのです。
良品計画が運営する「Cafe&Meal MUJI」や東京大学コミュニケーションセンターなどで飲めるブレンドコーヒーは、タイの少数民族が長い年月をかけて完成させた高品質な「ドイトゥン」という豆とグアテマラの「サン ミゲル」をブレンドしたもの。この「ドイトゥン」は前述の川島良彰氏が、タイ王室からの要請を受けて「ドイトゥン開発プロジェクト」のコーヒーアドバイザーとして手がけた豆です。
この豆は、「より美味しいコーヒーを日本の消費者に」という目的と、「タイの少数民族への経済的メリット」という目的を両立させています。
コーヒーはもっと面白い!
豆、生産地、水、抽出方法、温度に湿度……美味しいコーヒーを飲むには実に様々な要素が絡み合っています。しかしこれらの要素はまだまだ一般に広く知れ渡っているというものではありません。自分自身で情報を集め、自分だけの1杯を追求していくのは、コーヒーフリークとしてはこの上ない楽しみです。また「国際商品」としてのコーヒーを考えても、ビジネスとして面白いトピックになるでしょう。自分なりに情報を掘り下げて、コーヒーをもっと楽しんでみませんか?
参考『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』
