昨年から一気にリモートワークが当たり前の社会に切り替わりました。筆者は東京銀座にて中医学をベースにしたリラクゼーション・整体サロンを経営しておりますが、満員電車に乗るストレスがなくなった、気の進まない飲み会がなくなって嬉しい、という声を聞く一方で、今になっていつもと違う心身の不調を訴える方も激増しています。
テレワークは、「病気ではないけれども不調が続く」状態である「未病」になりやすい要素が潜んでいると感じます。
未病とは、病気に発展する前に、身体や心に出るアラートです。
薬で対処する前に……そのアラートは何を知らせるために起こっているのか、紐解いてみませんか?
中医学は自然と感性の医学
中医学は2500年~3000年前に中国で発祥したといわれています。
黄帝内経という医学書をもとに、陰陽五行や気血水などの概念で不調の原因へアプローチします。
限られた「生きるための時間」を、より自然に有意義に過ごすことができるよう、自然と感性を大切にした病と人をみる医学です。
西洋医学との考え方の違いですが、西洋医学は「胃の調子が悪い」という症状があるときに、胃カメラなどで胃の検査のみを行います。
症状に対してオペや投薬を行うため、救急の際や症状が深刻に悪化している際には大変役立つ医学です。
中医学は「胃の調子が悪い」という症状があるときに、「なぜ胃が痛むのか」を、一人ひとりの異なる体質、発病の原因と経過を問い、陰陽五行にあてはめるなどの方法で分析します。
病や痛みは「結果」であり、結果に至るまでの内的要因(食事やメンタル)と外的要因(環境)をしっかり分析する必要があると考えます。
テレワークや自粛生活といった外的要因から、今出ている症状はどんな内的要因から起因しているのか、分析とセルフケアに役立ててください。
症状別、原因と対処法

1.首肩こり・腰痛

どんなに良い姿勢で仕事をしていても、同じ姿勢でずっと動かないと腰痛や首肩こりを引き起こしやすくなります。
会社に出社していると、コビー機や会議室、お手洗いに行くだけでも離席が必要で、ずっと同じ姿勢でいることは少ないのではないのでしょうか。
テレワーク中は作業に集中できるという声を聞く半面、首肩こりや腰痛が悪化した方を大変多く見受けます。
■対策
散歩をする
通勤時間が短縮された分、散歩をすることをおすすめします。テレワーク中に腰痛や首肩こりが悪化したお客様の施術をしていると、ふくらはぎの硬直や足首の柔軟さの欠如を感じます。
ランニングよりも散歩のほうが、足首を使って蹴り上げる動作をしやすいので、首肩こりや腰痛が気になる方は、後ろ足でしっかり蹴り上げ、背後の人に足裏がしっかり見えるくらいの歩き方をしてみましょう。
定期的に離席をする
作業が終わったら、ではなく、時間を決めて離席をしましょう。
先述のように、ずっと同じ体制でいると、どんなに良い姿勢でも、肩こりや腰痛につながりやすいです。
下記のストレッチがおすすめです。
■もも裏のストレッチ

もも裏が固くなると腰痛の原因となるだけでなく、足に古い血が溜まることで、だるさを感じやすくなります。
ここを流れる経絡(ツボとツボを結んだ道)が滞ると、脳がスッキリせず、仕事の生産性もダウンしやすいです。
足を90度以上になるようにし、股関節から曲げるようなイメージで前屈
ふくらはぎやももの裏側がしっかり伸びていることを意識する
息をゆっくり吐きながら10秒キープ
■肩甲骨のストレッチ


パソコン作業をすると腕が内側に入ったまま固まりやすくなります。この状態で肩を回しても、肩甲骨までは回せず、首肩こりへのアプローチとしては弱いです。
しっかりやると、背中がぽかぽかとするくらい、血流が上がる方法をお伝えします。
肩の付け根から腕をしっかり外旋させて息を吐く
肩甲骨がしっかり下がったことを意識しながら、手を肩におき、ゆっくり回す
2.眠りが悪い
脳の過労によって、疲れを感じているのに眠れないという方が増えています。
中医学には陰と陽という概念がありますが、「陽」に転じたまま「陰」が不足している状態です。
本来陽が沈むとともに、じわじわと暗くなり、夜はゆっくりと過ごすことが人間にとっては自然でしたが、いまの私たちの生活はどうでしょうか?
夜遅くまで仕事をしたり、外に出られずテレビやスマホで動画を観ることがリラックスタイム。
これでは、ずーっと脳が稼働しており、休まる時間がありません。
パソコンも、突然電源を切らず、オフにするのに準備が必要なように、私たちの脳も、しっかり寝るためには準備が必要です。
■対策
太陽の光をあびる
一日に1回は外に出て太陽の光や外気に触れましょう。
室内にいると、温度や光を一定にできますが、中医学で『肌』は一番外側にある免疫機能です。外気に肌を触れさせることで、湿気や気温や太陽の光などで季節感を感じ取り、
季節にあわせた免疫機能を働かせることができます。
また、良質な睡眠に欠かせないメラトニンというホルモンは、太陽光を浴びてから約14時間後に分泌が促されると言われています。
寝る前に肩甲骨回りをほぐす
睡眠の調子がよくなかったり、メンタルに不調がある方は、肩甲骨から首にかけての硬直が強い方が多いです。
寝る前に簡単に、睡眠に関係する経絡を流す方法をおすすめします。

ベッドに寝転がり、肩甲骨の際にテニスボールを入れる
ボールに身体が沈み込むようなイメージをもってゆっくり呼吸をする
ボールの位置を移動させながら繰り替えす
3.気持ちがスッキリしない
気持ちがスッキリしないだけでなく、喉につかえた感じがある方は、中医学では「気滞」という体質で、「気」の巡りが悪くなっている状態です。
本当は「○○したい」のに「○○せねばならない」という気持ちを抱え込みすぎると「気」の巡りが悪くなります。
■対策
雑談をする
人にアウトプットをすることで脳の整理にもつながります。チャットやネットでの会議では、実際に顔を合わせるよりも雑談が激減し、業務効率としてはよいのかもしれませんが、モヤモヤを溜め込みやすい状況でもあります。
香りをたのしむ
都心部での一人暮らしだと、仕事用とプライベート用に部屋を分けることが難しく、起きた瞬間オフィスにいるのと同じ気がしてげんなりしてしまう……という声を聞きました。そこでおすすめなのが、香りを切り替えることです。
香りは脳への印象づけがとても得意なので、仕事中の香りとリラックスタイムの香りを使い分けることをおすすめしています。
仕事中におすすめの香りは柑橘系などのさっぱりした香り、リラックスタイムにおススメの香りはゼラニウムやラベンダーなどの香りがむいています。
不調を察して未病にストップを
コロナをきっかけに、このままテレワークを続ける企業が増えてくることでしょう。これは、自分にとってちょうどいい勤務スタイルを獲得するチャンスでもあります。
週にどのくらい出勤するのが心地いいかなど、いろいろ試して心身ともに健康に働ける環境を是非考えてみてくださいね。