『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』「コネクテッドカー」から「ロボットカー」へ

次世代型自動運転車、グーグルカーの衝撃

近年コネクテッドカーという概念が登場しています。この言葉は、自動車がインターネットに常時接続された状態、またはネット接続に対応した車のことを示します。カーナビが著しく進化し、さまざまな用途に使えるようになっているとイメージするとよいでしょう。

たとえば、音声認識技術と通信機能を組み合わせて、相手の名前をいうだけで電話をかけたり、目的地をいうだけで、その場所の天候を調べて必要な物を教えてくれたりします。

もう一つ先の時代を見据えた概念として「ロボットカー」や「自動運転」も提唱され、研究開発が進んでいます。これは、コネクテッドカーの次のステップで、運転する必要がなく、車が自動的に目的地に連れて行ってくれるということを意味しています。あのグーグルが、自動運転を行うロボットカー「グーグルドライバーレスカー」の開発を行っているのです。

天候などの目的地の状況、経路となる道路情報などを収集し、コンピュータで解析して運転開始を指示します。走行中は、GPSを使い、現在地と目的地をリアルタイムで比較しながら、コンピュータが車を制御し、走行させます。レーザーカメラやレーザースキャナーを用いて、他の車両や歩行者、信号などを識別して運転され、人は何もしなくてよいのです。

テストコースでの走行だけではなく、アメリカのいくつかの州では、すでに公道でのテスト走行が法的に許可されています。2014年4月には、自動運転車の総走行距離が、100万キロメートルを突破したと発表しました。

自動車産業の再定義

Google's_Lexus_RX_450h_Self-Driving_Car
Photo by Mariordo

これまでの自動車は、おおまかにいうと、「ガソリンエンジンにタイヤとハンドルがついた乗り物」でした。燃費がいいこと、排気ガスを少なくすること、車体の振動を抑えることなど、ガソリンエンジン車として進化をしてきました。

ロボットカーは、「OSにタイヤがついて、ネットにつながった乗り物」になりますから、ガソリンカー時代の特権は失われます。すでにアメリカでは、テスラモーターズという電気自動車専業の自動車製造会社が出現しています。

ガソリン自動車からの変換は、自動車産業に自らの役割の「再定義」を迫ります。日本の自動車会社は、さまざまな基本技術を組み合わせて設計開発する「テクノロジーデザイン」に長けているといわれています。この「テクノロジーデザイン」の高さは、「ガソリンカー」が、「ロボットカー」になっても、有益です。

そのためには、ベンチャーとの連携も重要。モノづくりの仕組みが変わったことで、ITベンチャーによる製造業参入が増えています。ユニークな発想や、機敏な行動のためには起業家精神が重要です。

2001年創業の日本のベンチャー企業「ZMP」は、優れた自動運転技術開発で、世界的に注目を集めています。二足歩行ロボット技術をベースに、自動運転中の認知について先進的な技術を持っているからです。

ロボットカーの時代は、大手企業の蓄積されたノウハウとベンチャーの革新的なアイデアを融合されることで、飛躍が起きることでしょう。

2015年2月には、一部報道機関が「アップルが2020年にも電気自動車を製造開始する」と報じました。アップルからの公式発表はありませんが、既存の技術を組み合わせて、高いデザイン性で市場ニーズに応えるというのは、Mac、iPod、iPhoneでアップルが得意としてきた手法です。

近い将来、自動車を購入する際、アップルかトヨタか、グーグルかボルボか、という選択を迫られる時代がくるでしょう。

コネクテッドカー」から「ロボットカー」へ。期待と課題

Jurvetson_Google_driverless_car_trimmed
Photo by Mariordo

100年以上の歴史を持ち、モータリゼーションで世界を席巻した自動車は、コネクテッドカーとして再定義されつつありますが、それもまだ過渡的な状態です。コネクテッドカーは、すぐその先でロボットカーによって再定義されるのです。

コネクテッドカーは、従来の自動車にネットが接続されて、より利便性が高まるというものですが、ロボットカーの登場は、社会の仕組みと自動車の役割を根本から変えることになります。
「ロボットカー」の普及で解決が期待できることはたくさんあります。

まず交通事故が大幅に減らせるでしょう。特に日本では高齢化時代をむかえ、普通免許に年齢上限を設ける議論がされていますが、そんな心配もなくなります。

また道路状況をリアルタイムに把握して、統合的に管理するので、交通渋滞も大幅に解消されると思います。現在、都市部を走っているトラックが無人化されると、物流コストの大幅削減にもつながります。ショッピングモールなどでの大型駐車場が必要なくなり、公道での違法駐車がなくなることで、都市設計の効率化も期待できるでしょう。

いいことづくしに思えるロボットカーですが、社会に大きな変化を促すことになるために、実現のための課題も山積しています。道路交通法をはじめとする法律の整備が必要です。交通法の根本の概念からつくり直す必要があるでしょう。サイバーテロの危険性や、大規既存の産業への配慮も必要になります。

一般的にユーザーは新しいものに対しては、漠然とした不安がありますので、そうした不安心理を利用したネガティブ・キャンペーンが展開されるでしょう。交通安全を大義名分として、運輸、警察官僚とその周辺が反対勢力にならないよう配慮する必要があります。

近年、ちょうど「地方創生」が叫ばれています。人口が減っている地域で、むやみに公共事業を行ってもムダ使いで、活性化にはなりません。地域の創生施策として「ロボットカー導入特区」の街づくりを提案します。

自動車産業は世界の最前線で日本を牽引している業界です。「ガソリンカー」での優位性が失われてしまう前に、日本こそが、世界に先んじて「ロボットカー」の導入を進めていくべきでしょう。

多額の研究開発費を投じ続け、テクノロジーデザインに秀でた日本の自動車産業が、「ロボットカー」についても世界をリードする立場を確保することは、日本の産業界にとっても非常に重要なのです。

「START ME UP AWARDS 2015」開催決定、受付開始!!
起業家とクリエイターのマッチング創出、新たなビジネス・価値がココから生まれる!
エンタメに特化したグローバルな IT サービスをプロが支援
ビジネスプラン応募受付期間:6 月 10(水)~8 月 24 日(月)
http://www.startmeupawards.com/

 

 

Unknown

10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。
単行本(ソフトカバー)

内容紹介
人を動かす新常識! 今を生き抜く、新バイブル登場!! 「フジテレビpresents素敵なスマートライフ」デジタルエンタメワークショップ(2015年5月24日第1回開講)の公式ガイドブックでもある本書は、音楽、映像、放送、新聞、出版、自動車、IoT、UGMなど、エンターテインメント業界を幅広く横断的に捉え、デジタル化による大きな潮流が変えようとしているエンタメ・ビジネスの最新動向をまとめたもので、エンターテインメント・ビジネスに関心を持つ学生・ビジネスパーソン必携本!!

[文]山口 哲一 [編集]サムライト編集部