オウンドメディアは資産になる!リノべるCMO渡会雄一氏

急成長する企業のCMOの役割とは?

前編では、いままでの経歴やリスティング広告の有効性についてお話いただきました。後編ではいま担当されているリノべるのマーケティングに関してのお話を伺っていきます。

– CMO(Chief Marketing Officer=最高マーケティング責任者)というのはまだあまり一般的ではありませんがどのような役割なのでしょうか?

渡会:日本の企業では営業企画部長みたいなポジションの人たちがやってきた業務と近い部分もありますが、厳密に言うと日本にはあまりないと思います。日本の企業は縦割りの組織が多いと思いますが、CMOは組織を横断していくようなイメージですかね。

最初マーケティング担当は1人だったのですが、今は8人になり、各部署と連携して動いています。外部のチームもうまく活用しながらすすめていくのが良いと考えています。

例えばリスティングはある程度の規模感に行ったら自社で専門チームはつくるべきだと思いますが、それでも常に外部の代理店ともお付き合いはした方がよいですね。自分たちだけでやっていると他社の事例やトレンドがどうしても入りづらくなるので、コアの部分は社内で考えるチームも持ちつつ外部のパートナーをうまく活用するのがいいと思います。

-リノベるは非常に順調に成長していますが渡会さんが入社されてからどんなことを実施してきたのでしょうか?

渡会:入社した時はマーケティングとウェブ開発の内製化っていうミッションでオファーをもらってジョインすることになりました。マーケティングはすぐリクルーティングをかけていって半年くらいである程度ちゃんと形ができるところまでチーム形成ができていて、ウェブ開発のほうの内製化はいったんペンディングしてその他のマーケティングに注力している状況ですね。

僕がジョインして最初にコンテンツチームに言ったのが4ヶ月でABテストを200本、回そうということです。その時はOptimizelyを使用して外部にもサポートしてもらいながら実施しました。当初はWEB系の会社ではないので、ABテストっていう概念が全く通じませんでした。

プロダクトアウトで見ため重視というか、感覚的にやっていた部分が大きかったのですが、コンバージョンのミッションも与えられていたので、ABテストで正解はユーザーに聞くという感覚を身につけてもらうために200本という数字を設定しました。実際にやってみると自分が立てた仮説と逆の結果がでることが多く、いかに感覚があてにならないかを実感します。

オウンドメディアの役割とは

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– ABテストの中でここを変えたら一番効果があったというのは?

渡会:1番効果があったというのは難しいですが、1番苦労したのはイベントの一覧ページですね。家の買い方やリノベーションについてのセミナーにご参加いただくのが重要なのですが、そのセミナーの一覧ページがずっとテキストの羅列だったんですよ。全国のイベント一覧があって超見づらいんですね。だけど、それをいろいろとかっこよくデザインして見やすくしてもABテストでテキストページに全部負けちゃうんですよ。

最近ようやく、テキストページの数値を上回るページがつくれました。これはまた引き続きテストしていきますが。面白かったですね。集客はリスティングもありますが、やはり中心は検索エンジンです。オーガニックも含めて検索エンジンからが中心になっています。

– シビアにABテストを繰り返すリスティングの専門家から見て、オウンドメディアというのはどういった位置づけになるのでしょうか?

渡会:それはすごく面白いと思っています。リスティングは一番効率が良いのですが、ユーザーの検索回数自体は増やせないのですぐに頭打ちになります。たとえばリノベーションっていう、単語も検索する人を増やすのはリスティングでは難しいです。

その点オウンドメディアであればリノベーションに関心を持つであろうユーザー自体を増やしていくことが可能です。そしてオウンドメディアは資産になるところも優れています。リスティングはいつも掛け捨てなので、例えば今期500万使いました、コンバージョン何件でした、終わりましたとなります。

しかしオウンドメディアであれば、毎月の更新費用はかかりますが、最終的に10万PVくらいのメディアになれば、もし更新をストップしたとしてもある程度ユーザーが流入し続けます。そう考えると、たぶんトータルで見れば、セッション単価は高くないと思います。

広告費が出せない時の保険になるというイメージですかね。最悪全部の広告費を止める必要が発生した場合も、こっちのアクセスがあるんで何とかなりますよね。

– 広告の予算配分はどう考えますか?

渡会:ケースバイケースですが、個人的には年間の広告予算の10〜20%をチャレンジ予算にするべきだと考えています。すぐにコンバージョンは取れなくていいという施策に振り分けるべきで、この中でコンテンツマーケティングやオウンドメディアをやるのがいいかなと。

リスティング広告以上に良いコンバージョンなんて絶対出ないんですよ。絶対出ないんですが、そこで獲得できるユーザーには限りがあるので、それ以外の方法で獲得するために違うことにも予算を割いてナレッジを貯めていく必要があるのではないでしょうか

地味なマーケティングが売上をのばす

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– ベンチャー企業のマーケティングにおいて大切なことはなんでしょうか?

渡会:地味なことを着実にやることが最も大事だと思います。自分で会社をやっていた時に、スタートアップやベンチャー系の人から相談受ける事もあったんですけど、大体そういう社長ってみんな派手なことが好きなんですよ。

なのでリスティングはお金かかるから止めておくよとか言って、よくわかんないブログ広告ボーンってやっちゃったりとか。よくわかんないフェイスブック広告をボーンとやっちゃったりして平気で100万くらい使って、コンバージョン出ないんだよねって。でるわけないよ!そもそも認知広告だよそれ!みたいな。

全然地味なことのほうがマーケティングって本当は売り上げを上げるのに近いはずなのに、みんなそこを面倒臭がって見ないんです。それならアウトソースするなり、自分でちょっと試すでもいいので、面倒臭いことをまずやったほうがいいんですよ。

それがたぶん1番効率のいいマーケティングやる秘訣だと思います。だから、営業マンの話がつまんないタイプの広告を真剣に検討した方がいいですね(笑)

コンテンツマーケティングをするにしても、リスティングで反応の良かったキーワードを中心にストーリーを考えたり、ランディングページをつくったりできますよね。こういうキーワードで入ってきたお客様に対してはこういう営業しようといったCRM的な概念も自然と出てくるので、絶対やった方がいいと思います。やらない理由はないですね。

そもそも、リスティング広告でリノベーションというワードで入ってきた人がコンバージョンしないということは、サービスに問題ありません?みたいな話になりますよね。だってリノベーションで探してるんですから。マーケ担当は自分のプロダクトを一番客観的に見なければいけない人たちだと思うので、そういう疑いをもつためのヒントがリスティング広告にはあります。

– Facebook広告も併用されていますか?

渡会:もちろん使ってます。リノべるのフェーズでいくと、ある程度検索で顕在化されたユーザーはほぼリーチできているという感覚があるので、もっとリノベーションの検索数を増やす必要があるし、さらに一歩進んで家を買いたい人をどうやってリノベーションに転換できるかという課題でやっているので、そのためのアプローチに活用しています。そこでもっとも効果的なのはなにかっていったらオウンドメディアかなと。

リノべるの視点でこういう家の買い方がいいよとか、家を買うときにはこういう注意をした方がいいよとか、住宅ローンのちょっと面白ネタとかをやることによって、住宅に対してのリテラシーが上がり、そうなった時に賢い選択肢の1つとしてリノベーションが入ってくるという仮説でやっています。

Facebookで全然家を買う気のない人がたまたま写真みていいなって入ってきて、めっちゃ営業されたら気分よくないので、だったらeA[イーエ]というオウンドメディアの方でいろんな記事に触れてもらった方がいいかなと。

そういう意味では広告をどっちにランディングさせるかっていうのは常にディスカッションしてます。リノベーションの最新の一次情報を集め続けられるポジションにいるので、それはメディアとして絶対活用すべきだなというのは常に考えていますよね。

-ありがとうございます。今日は非常に有益なマーケティングのお話をご紹介いただき感謝します!最後に仕事をする上で一番大切にしていることを教えていただけますか?

渡会:自分が面白いと思える選択肢をとるというのはずっと決めてますね。生き方も仕事もそうですね。面白いって概念の中に損得もあると思ってるんですよ。めちゃめちゃ面白いことやったけど、大赤字出したら絶対面白いとは思えないじゃないですか。

ビジネスにおいて総合的に面白いなこのプロジェクトと思えるためには、やっぱり利益も残しながら自分たちの価値観というか、面白いと思えるものを追求できるのが一番いいと思っているので、そこの判断だけは、つまらない選択肢をとらないようにはしてます。

もしもつまらない選択肢を取らなきゃいけない時には、どうやったら面白くなるかを常に考えています。

[インタビュー・執筆] 頼母木 俊輔  [編集] サムライト編集部