テレビに関するキーワード「スマートテレビ」
テレビの再定義について考える際のキーワード「スマートテレビ」は、インターネットに繋がった、次世代型のテレビという意味です。インターネットに繋げば、ユーチューブなどネット上のコンテンツを観ることができるだけではなく、さまざまな機能を付加することができます。携帯電話にPCの機 能が加わってスマートフォンと呼ばれたように、スマートテレビは、その存在自体が、テレビの未来形を示唆しています。
4K、8Kという言葉は、画質の細かさ、美しさを示しています。2014年6月から試験放送がはじまっている「4Kテレビ」とは、これまで最も美しいとされた「フルハイビジョン」(約207万画素)の4倍の約829万画素で表示できるテレビで、映像の細部までクッキリとリアルに再現できるそうです。8Kは、さらに4Kの4倍の画素数で表示するテレビです。
ただし、受信機の性能だけ上げても、撮影カメラ、編集機器なども対応しなければ、高画質のテレビ番組を楽しむことはできません。現在、映像業界では、4Kおよび8K映像制作への対応が、大きなテーマとなっています。
各都道府県のローカルTV局

2012年5月に開業し、今や東京の新名所となった東京スカイツリーは、テレビの電波塔です。600m級という高さは、他の建物に遮られることなく、電波を届けるために定められました。東京スカイツリーの大きな役割は地上波デジタル放送の送信です。
2003年12月より関東地方の地上波デジタル放送が開始されました。東京都心部に林立する200メートル級の超高層ビルの影響を電波が受ける可能性が出てきたので、東京タワーに替わる電波塔として東京スカイツリーがつくられたのです。
また全国には、各道府県にローカルテレビ局があります。多くの局は、在京の日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の5つの局の系列ですが、県によっては、複数の在京局の番組を流すクロスローカル局もあります。もちろんNHKは全国津々浦々にありますよね。こういう番組を中継する、流通の仕組みがあって、テレビの放送は成立しているのです。
僕のホームグラウンドは音楽業界ですが、BSフジのバラエティ番組『無意味良品』や音楽番組のプロデューサーを任されるなど、テレビ番組のプロデュースの経験もあります。またフジテレビ『ベストハウス123』には企画段階から関わり、マネージメントしているガールズバンドがレギュラー出演していました。
そんな経験から、テレビの持つ影響力の大きさ、番組をつくるときに関わるスタッフの多さや予算のかけ方など、そのパワーは肌感覚で知っています。日本のエンターテインメントビジネスの中心は、昔も今もテレビ局にあることは間違いありません
同時に、指摘しておきたいのは、テレビ局は、国による許認可事業であるということです。ホリエモンのライブドアも、楽天もテレビ局は買収できませんでした。どんなに潤沢にお金があっても、それだけではテレビ局は買収できません。
有限な電波を使うテレビ放送は政府が管理するものであり、だからこそテレビ局には高い公共性が求められるのです。欧米では、コンテンツ制作と電波の管理には線が引かれています。日本のように放送局がコンテンツの権利と電波の使い方を決める編成権の両方を持っているというのは特殊なケースです。
テレビ局の事業範囲

音楽ビジネスにおいてもテレビ局の影響力はとても大きいのです。ドラマの主題歌や挿入歌というのは、楽曲を宣伝するために効果的な方法ですが、番組とのタイアップでリリースされる楽曲の著作権は放送局の子会社(音楽出版社といいます)が権利を持つという業界の慣習ができあがっています。
音楽業界の中だけでみれば、その音楽出版社が、新人開発などに投資をしたり、生態系として機能している側面もあるのですが、テレビ局が放送する番組で付随するコンテンツの権利を独占する現状は、社会の公正性という観点では、疑問が残ります。
特に最近は、テレビ局が、自社の敷地を使ってイベントを開催したり、映画などのコンテンツへ出資したり、音楽フェスを企画したり、「放送外収入」の拡大に熱心になっています。
許認可に守られて大きな力を持っているテレビ局が、業域を広げていくのは、郵便局が金融業を行ってきたのと同じような構図で、問題があるのではないかと思います。特権を持つテレビ局の事業範囲は透明性が高くなければならないでしょう(NHKは、受信料を元に経営が行われていますが、放送外事業については、法律で規制をされています)。
変わるテレビ、 変わらないテレビ
僕たちが「テレビ」と呼んでいるモノの正体は、番組制作者によって企画・制作され、テレビ局によって編成され、電波塔などの流通システムを通じて届けられ、自宅のリビングルームの受信機で再生する、このトータルな現象全体のことのようです。
受信機としてのテレビは進化して、スマートテレビとなり、受信機、再生機として進化しています。インターネットの普及で電波を使った流通が唯一の方法ではなくなりました。
また、多チャンネル化や録画機能の向上によって、視聴者が自分で視聴時間を選べるようになったことで、編成の意味も変わってきています。けれども、ユーザーにとっては、信頼できる「社会の窓」は相変わらずテレビでしょう。たとえば、テレビでゲームをして遊んでいても、大きな地震を感じたらチャンネルをNHKに合わせませんか?
ユーチューブなどの動画共有サイトで、時にはテレビ局よりも早く、リアルな動画を観ることができますが、その情報の真偽については、誰も担保してくれません。視聴者自身が判断するしかありません。
テレビ局だって間違えることはありますし、情報操作をするのではないかという心配もあるでしょう。もちろん、テレビが常に真実を伝えるわけではありません。
ただし、間違いを放送したことがわかった時点で訂正・謝罪し、ときには責任者が更迭されるなど、一定の責任を持って放送されているという意味では、ネットの情報とは種類が違います。エンターテインメントの鑑賞という観点では、テレビは「リビングルームにおけるホームメディア」と定義づけられます。
ここでいうメディアは、自室などで観るパーソナルメディア、移動中に観るモバイルメディアと3種類に分けられますが、映像再生機としての「テレビ」の主な役割は、ハイビジョンや来るべき4K、8Kテレビ放送などのリッチなコンテンツに最適化することです。家族や友人達と一緒に楽しむメディアです。
ただし、デジタル化の進化で、映像コンテンツの流通の現状は、とても複雑になっています。これまでのように、「テレビ」と「ネット」、メジャーとマイナーという風に二元論的に分けることはできず、相互に影響を及ぼし合う、ひとつの生態系を形成します。
多様化するコンテンツの経路

ユーザーがペットを撮った動画も、超大作映画も、同じ画面でみることができるように、スマートテレビという受信機には、色々な経路でコンテンツが届きます。
一方でタブレットやスマートフォンなど、視聴のシチュエーションも多様になっていく中、テレビ局は、太い幹の役割を担う責任があります。そのためにも幅広くコンテンツ制作が広がるように根を広げ、枝葉の隅々まで養分を届けることが必要です。
そもそも日本は、公共放送と民間放送と両方のテレビ局が発展した、世界で唯一の国です。秀逸な仕組みでしたが、賞味期限が切れました。時代に合わせた変革が必要になっています。
国土が広く、人口が多いアメリカでもテレビ局は3つのネットワークになっています。番組制作と流通の仕組みをテレビ局がセットで担うというこれまでのやり方には、無理が生じています。テレビ番組を電波で届ける送出機能は、社会インフラとして1つか2つあれば十分でしょう。
特に各県ごとに系列の地方テレビ局があるのは無駄になりはじめています。現在クロス局と呼ばれている、複数の系列の番組を流す地方局が増えていくのが自然な流れですし、従来の新聞社など、企業系列にとらわれない企業合併も必要になっています。
番組制作機能としての放送局という意味では、九州全域で観光促進に特化した局や、東北地方の農業振興にフォーカスした局、ドキュメンタリーを得意とする局など、さまざまな可能性が考えられます。個性とアイデンティティを持ったテレビ局が増えることを期待しています。(第4回に続く・・・・)
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