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日本のホンモノを届けるベビー・キッズブランド「和える(あえる)」
「21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなげたい」、そんな想いから誕生した「0から6歳の伝統ブランド aeru」。2014年7月にオープンした、東京の直営店「aeru meguro」に続き、11月7日には京都・五条に第2号直営店「aeru gojo」がオープンします。
今回は、株式会社和える代表の矢島里佳さん、目黒店ギフトコンシェルジュの伊東恵美さん、五条店ホストマザー(店長)の田房夏波さんの3名に「未来を描き、実現する力」をテーマに、和えるの成長の記録と、将来の姿についてお話を伺いました。
和えるのこれまでの物語

ー 和えるを起業して4年、これまで起きた変化について聴かせてください。
矢島:まず、和えるから定期的なお仕事があるので、職人さんが人を雇えるようになったり、決まったものを作り続けるという数仕事をすることで、技術が上がったというお話をよく伺うようになりました。あとは、赤ちゃんや子どもたちが使っているものを作ることで「子どもたちの役に立てて、すごく嬉しい」と言ってくれています。
ー 「aeru meguro」で、伊東さんは現在「ギフトコンシェルジュ」という肩書きで働かれていますが、「店長さん」とは違うんですね。
伊東:はい。目黒の方で新しくはじまったのが「ギフトコンシェルジュ」です。ご出産やお誕生日のお祝いなど、大切な方への贈り物を求めにいらっしゃるお客様から、事前に贈る方のご年齢や、今回のお贈りする目的などを伺い、ご来店された際、その方にあった商品をご提案いたします。
ー なるほど。お贈りする方のストーリーにあった最適な商品をセレクトしてくれるサービスなんですね。
伊東:お店にいらっしゃっても、何を送りたいかご自身の中で形になっていなかったり、どういう風に送ったらいいかなと悩まれていたりするお客様がたくさんいらっしゃるので、そのお手伝いになればと思い始めました。

左:「aeru meguro ギフトコンシェルジュ」伊東さん 右:「aeru gojo ホストマザー(店長)」田房さん
ー 今後「aeru meguro」をどういうお店にしていきたいですか?
伊東:現在地域の子ども会の方とも少しずつお話をさせていただいて、「地域に根ざしたお店」を目指しています。aeru meguroがこの目黒という地にある意味をちゃんと発揮できる、「地域の方々に愛されるお店」になれれば嬉しいなと思っています。
毎月aeru meguroでは展示会を開催しているので、その展示会を楽しみに毎月ご来店くださったり、オムツ替えや授乳のために立ち寄ってくださったり、近くまで来たからと足を運んでくださったり、お客さんとの交流も増えてきてとても楽しいです。
矢島:和えるが2011年に生まれて、すでに4歳。こうやって、語ってくれるお姉さん、お兄さんたちが出てきているということが一番の変化ですね。おかげで、私が和えるの成人する頃の未来を描く時間や、和えると対話をする時間を取れるようになってきており、まさに今、変革期にあるのかなと思います。
京都直営店『aeru gojo』の展望

ー 次に、「aeru gojo」のことを聴かせてください。
田房:「aeru meguro」が”和えるのお家”というコンセプトなのに対し、「aeru gojo」は”和えるのおじいちゃん・おばあちゃんのお家”ということで、築100年の町屋でオープンします。「昔ながらの暮らし」というのをみなさんに体感していただける場所になったらいいなと思っています。
ー いいですね、町屋。内装でこだわっているところはありますか?
田房:この間、お店のスペースに敷く畳を選びに行きました。最近の畳って、表面や中身が「い草」や「稲わら」ではなく、クッションに使われるような化学製品や樹脂を用いているのです。もちろんそうすることで安く作れるようになったのですが、実際に中がクッション材のものと、稲わらが入っているものを比べてみると、全然柔らかさが違うんです。
「稲わらの畳は、とても自然な優しいやわらかさがあって、正座しても痛くないんだ」ということを感じました。和えるでは現代的なリノベーションではなく、もともとの町家の良さを活かしているので、「aeru gojo」に敷くものは稲わらを使ったものにしました。畳表は、広島の備後畳を作っていらっしゃる職人さんのところまで、代表の矢島が訪ねて行き決めてきました。製作は、その畳表の職人さんからご紹介いただいた、京都の畳職人さんにお願いをしています。
ご来店いただいた方には「昔ながらの町屋とaeruが生み出した現代の商品の和えられた空間」を、感じていただければと思います。
ー なるほど、”座る”ということだけでも町屋の雰囲気を体験できそうですね。今後「aeru gojo」をこういうお店にしたいというビジョンはありますか?
田房:そうですね。「aeru gojo」自体に行ってみたいと思っていただけるようなお店に育てていきたいと思います。町屋を見てみたい、畳に座ってみたい。そういった商品以外の体験も、共にご提供できるようなお店づくり目指していきたいなと思いますね。
矢島:その先人たちが、”暮らし”という中で蓄積してきた”智慧”を感じられるような店というのが「aeru gojo」の位置付けですね。だからこそ、「おじいちゃん・おばあちゃんの智慧の詰まったお家」であり続けたいですね。
ー 「aeru gojo」は一種の”観光名所”のようになりそうですね。田房さんは五条店で「ホストマザー」という肩書きですが、こちらのイメージについて教えて下さい。
田房:ホストマザーは、一般的に言うと店長さんのことを示していますが、aeruでは、”そのお家のお母さんとして、皆さんが気持ちよく過ごしてもらえるようにお迎えする”というイメージですね。また、スタッフについても「ホストシスター・ホストブラザー」という位置付けをしています。
矢島:やはり店長というと、”経営”とか”切り盛り”といった側面を持ちながらも、「和えるらしい在り方」というところで「ホストマザー・ホストシスター・ホストブラザー」なんですよね。
田房:五条店では「ホストシスター・ホストブラザー」として働きたいという方を募集しています。これからオープンするお店なので、どのように商品を手に取っていただくか、どんなおもてなしができるか、0から一緒に考えてくださる”家族”を探しています。
和えるが成人するまでに実現したいこと

ー 最後に、和えるが成人するまでに実現したいことを聴かせてください。
矢島:そうですね、成人するまでに和えるでは「aeru room」や「aeru oatsurae」といった新たな事業を進めていこうと思っています。
ー 「aeru room」事業とはどういったものですか?
矢島:「aeru room」事業は、全国にあるホテルのお部屋の中を、その地域の産業を生かした伝統産業品に置き換え、その地域の魅力がぎゅっと詰まったようなお部屋を和えるがプロデュースしていくという事業です。現在1社お声がけいただいた会社の社長さんと、プロジェクトが始まっています。早ければ来年には、「aeru room」が一つ出来上がる予定です。
ー なるほど。現在は「Airbnb」を使っての民泊が流行っていますが、これとはまた違った軸から日本を盛り上げられそうですね。
矢島:恐らく2020年以降、このままいくとホテルの部屋は余りはじめると思います。その時に「aeru room」は、”ただ泊まる場所”ではなく、先人の智慧や伝統を”伝え・つなぎ・体感できる部屋”として、その存在意義を発揮するようになると思うのです。だからこそ今から準備しておくことが大事だと考えています。
ー 「aeru room」に泊まることで、地域の魅力や伝統を体感できるようになるわけですね。「aeru oatsurae」事業についても教えてください。
矢島:「aeru oatsurae」はその名の通り”誂える”。つまりオーダーメイドですね。和えるがつながっている、全国の職人さんにご協力いただきながら、本当にお客様が必要としているものをオリジナルで作ります。できるだけ、若い職人さんに優先的にお仕事をお願いしていきたいと思っています。
ー ほう、若い職人さんに任せたい理由はなんですか?
矢島:職人さんが普段ご自身で作ってるものとは違うので、オーダーの仕事はやはり難しいんですよね。難題に挑戦することで、職人さんの技術力の向上にもつながると考えています。ですから「aeru oatsurae」事業は、世界に1つだけの物を生み出すことで、実は、”職人さんの育成”にもつながる。それを共に喜んでくださる、そういう気持ちを持ってご依頼いただけるお客様と、これから共に始めていきます。
ー お客様・職人さん・和えるにとって、まさに「三方良しの関係」になっているんですね。
矢島:はい。ですから、「お金出せばなんでも買える」という感覚を変えていきたというのも、この「aeru oatsurae」事業の目標の一つですね。やはり物を作ってくれる人たちがいてくれるからこそ、私たちはお金で交換することができる。お金に価値を持たせたのは人間であり、実は真にお金には価値はないともいえるのです。
だから、和えるの”お誂え”は一方的な「お金を払うんだから作ってよ」という心持ちではなく、職人さんたちの力を借りて自分の本当に欲しいものを作る。それが結果的には、職人さんたちの技術の向上にもつながる”心の通ったお誂え”を目指しています。
ー なるほど。物で溢れる現代だからこその”おあつらえ”なんですね。
矢島:既製品を買うのが当たり前ではなくて、生活・暮らしの中で”本当に必要な物を自分で生み出す力”を、昔は多くの人々が持ち合わせていたのだと思います。そういう自分の感性で物を生み出す。その面白さを「aeru oatsurae」事業を通じて、もう一度伝えていけたらいいなと思っています。
ー 素敵なお話、ありがとうございました!
[インタビュー] 吉野 庫之介 [編集] サムライト編集部株式会社和える代表取締役。1988年東京都生まれ。2011年慶応義塾大学法学部政治学科卒業、13年同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学4年生の時に「株式会社和える」(http://a-eru.co.jp)を設立。子どもたちのための日用品を全国各地の職人とともにつくる「0から6歳の伝統ブランドaeru」を12年3月に立ち上げる。『和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家』(早川書房)を14年7月に刊行。
矢島 里佳氏の最新講演情報
2015年11月23日 (月)13:10~14:10
『六本木アートカレッジ 再生 ~日本の伝統に、スイッチを入れる~』