Contents
スポーツ、してますか?国を変える力を秘める、スポーツの可能性
日頃、忙しくてどうしても後手後手に回ってしまうスポーツをする時間。家庭や仕事に追われる毎日の中で、やりたくてもできていないという方も多いのではないでしょうか?
そんな日本人の現状に対して物申すのがアーセナルSS市川代表・幸野健一氏。【前編】に引き続き、サッカー的思考のビジネスマンを増やしていくために必要なこと、そして日本人がもっとスポーツを身近に感じるために必要なことを語っていただきました。
「ビジネスで成功したい!」「もっともっと体を動かしたい!」と思っているビジネスパーソン、必見です!
【前編】サッカーは日本人には向いていない?アーセナルSS市川幸野健一が語る”サッカー的人材育成”はこちら
自分のPDCAは自分で回せ!人生の成功者になるために必要なこと
―前回、日本人が欠如している“自ら考えて行動する働き”を持った人材をサッカーによって育成していくというお話をして頂きました。反対に、これまでそういった教育を受けずに社会に出てきたビジネスパーソンは、具体的にどうやって自ら考える力を養っていけばいいのでしょうか?
幸野:人の生き方や考え方に共感して「自分もそうしてみよう、やってみよう」と、すぐに行動できるかどうかがとても重要です。
人間は、頭の中で何かを思い描くことは誰にでもできます。しかし、そこから行動に移せるかどうか。ただそれだけで人は人生を変えることができるんです。行動してみても、それでも80%の確率で失敗すると思います。でも、それが必ず次の行動への糧になります。
人生の中で取り返しのつかない失敗なんてほとんどありませんし、色んな失敗を知っていかないと成功者には決してなれません。どうか、リスクを取ることを諦めないで欲しいですね。
―成功を収めている方々は、その失敗をどのようにして結果に結び付けているのでしょうか?
あるマーケティング用語で「パレートの法則」という理論があります。2割のリソースが全体の8割を生み出しているという法則があるのですが、これはイタリアの経済学者のパレート氏がイタリアのすべての納税金額の8割を上位2割のお金持ちが払っているという現象から導き出したものなんです。
社会に当てはめれば、上位2割の成功者に入りたいのなら、誰も行ったことのない道を選び、一つひとつ計画して行動し、成功させるまで検証を重ねることが必要です。つまり、常にPDCAサイクルを回せる人間になるということです。
逆に、成功していない8割に属しているのは、PDCAのPである計画までは立てるのですが、Dの行動に移せない人が多いです。
自分が上位の2割に行くためには、周りの人より多く行動に移してみればいいんです。もし、あなたが「成功したい」「新しいことをやりたい」という志を持っているなら、とにかく行動することを心がけてみてください。
ただし、PDCAのCである自分のとった行動の検証も忘れずに。そこをAの改善していけば、より成功する確率は高まります。
スポーツを教育に取り入れてはいけない?日本の教育システムが犯した過ち
―では、幸野さん自身が2割の成功者になろうと思ったきっかけ、もしくは何か新しいことを成し遂げようと思ったきっかけというのはなんだったのでしょうか?
幸野:私は長年広告ビジネスをやりながら、サッカースクール運営なども同時に行っていたんです。その最中、父親が68歳で亡くなりました。その時、自分がバリバリ仕事ができる限界を68歳に設定したんですね。
そこから逆算して、自分が残りの人生で何をやりたいか、何を成し遂げたいかと思った時に、今でもずっと関わらせてもらっているサッカーに対して還元しないといけないと思ったんです。
僕自身、サッカー選手として今も試合をやらせてもらって、仕事でもサッカーで稼がせてもらって、子供もJリーガーにさせてもらっている、ある意味日本で一番幸せなサッカー関係者だと思っているんです。
そのなかで、誰かができることはその誰かがやればいい、僕は僕にしかできないことをやるべきだと思いました。なので、4年前に広告会社を弟に譲って、サッカーだけを生業としてやっていこうと決めて、最初の仕事として形にしたのがアーセナルサッカースクールなんです。
―サッカーを生業として生きて行くために、サッカースクールを作る。まさに、幸野さんの言う行動を起こしたのですね。ところでこのサッカー場の設備は、一度見ただけでプレーがしたくなるほどとても環境が整っていますよね。何故わざわざサッカー場から作ろうと思ったのでしょうか?
日本サッカーの成長を妨げている根底として、ハードがないことが問題としてあるんです。なのでハードを作ること、つまり設備の良いサッカー場を作ることから始めたんです。
日本では戦後から体育館やグラウンドなど、スポーツ施設を学校内に作ることが当たり前になっています。しかしヨーロッパでは、スポーツは外部のクラブでやるものなので、教育の一環としてスポーツを取り入れることはあまりないんです。
日本は、スポーツに教育を取り入れて「体育」にしてしまった。それによって、先輩後輩の上下関係を作ってしまったり、球拾いをさせられたり、先生が監督を務めることで成績と進路を人質にされてしまったりなど、スポーツ自体にネガティブな要素がたくさん入ってきてしまったんです。
だから、スポーツや部活も「つまんない」と思ってしまい、学校の卒業と同時に離れてしまうんですよ。
意外に思われるかもしれませんが、教育とスポーツは本来合わないんです。なぜならスポーツは「遊び」だから。遊びである以上、やりたくなければやらなくていいんです。やる義務なんてないんだから。逆にやりたければやればいい。スポーツは本来、やりたいからやるものなのです。
しかし現在は学校の”教育”として、半ば強制的に先生にやらされてしまう形になってしまう。まずここからボタンの掛け違いが発生しているんです。
―”教育”の名のもとに、無理やりやらされるという形のスポーツを、アーセナルSS市川というクラブで変えていこうと思ったのですか?
そうです。僕自身50歳を過ぎた今でも、年間50試合サッカーをやっていますし、その中には若い人もたくさんいますが全く違和感はありません。スポーツをすることによって、いい年したおじさんでも楽しく、時には大会で負けて思い切り泣いて悔しがる場面がある。
家庭、仕事以外の第3の人生という世界が、スポーツにはあるんです。会社や家にいるだけでは味わえない、そんな世界がすぐそばにあるのに。
でも不思議な事に、みんな大人になってからスポーツをやらなくなってしまうんです。理由は先程も申し上げた教育の問題もそうですが、お金も時間もかかってしまうことが挙げられると思っています。
だから、お金や時間なんて気にせず、気軽にいつでもスポーツができる場所・環境が身近にあることを普通にしたいんです。
いつでもどこでも誰でもスポーツができる社会、「生涯スポーツ立国」を実現するために、スポーツに対するハードルを下げる努力をもっともっとしていきたいです。
アーセナルSS市川での事業もそのひとつですが、行政とも協力して、もっともっとその理想が実現できるような仕組みを作っていきたいと思っています。
「日本を幸せに!」“生涯スポーツ立国”へ導く第一歩
―「生涯スポーツ立国」素晴らしいですね!!ただ、そこまで幸野さんを突き動かすものって一体何なのでしょうか?
幸野:今まで、自然に人の幸せのために働くという気持ちでやっていたのですが、最近それを強く実感することを学んだんです。あるアメリカの文献に載っていた学問の話で、「オキシトシン」という“幸せホルモン”があるんです。
人が幸せを感じるのは心で感じてるのではなく、実際にオキシトシンというホルモンが脳内に分泌されることによって幸せを感じるんです。
そのオキシトシンが分泌される場面は大きく3つあって、1つ目は、美味しいものを食べた時。2つ目は、好きなスポーツをしている時。3つ目は、性欲を満たした時。だけど、この3つ以上に幸せホルモンが分泌する時があるんです。それは、人のために自分が何かをして、その人が幸せを感じてくれた時なんですよ。
これを読んだとき「今まで自分が自然にやってきたことは間違いじゃない」「人のために尽くすことは自分のためにもなるんだな」と、改めて確信しました。
それに、どうせやるんだったら、10人よりも1000人幸せにした方がいいじゃないですか?なので、みんなと自分の幸せのために、スポーツ界へ貢献し続けていこうと思っています。
―なるほど。サッカーを還元することは、自分の幸せにも繋がるということですね。ありがとうございます。では、最後に今後の日本を「生涯スポーツ立国」へと導いていくために、何か今描いている目標や具体的な施策があれば教えてください。
幸野:はい。実は今、アーセナルSS市川のホームグラウンドとしているグラウンドを、拡充しています。今のサッカー場だけで1万平米なんですけど、これから更に3万平米広げる予定です。

画像出典:北市川スポーツクラブ
※2017年4月オープン予定の北市川運動公園 鳥瞰図
―3万平米!?全部サッカー場なんですか?
いえ、サッカー場を増やすのではなくて、テニスコート11面に多目的広場、巨大なクラブハウスなど、様々なスポーツ施設を入れ、超大型の総合スポーツ施設になる予定です。この部分に関しては市川市が拡充してくれるんです。
これはもうすでに工事が着工しているので、来年の6月には全て完成予定となっています。それに加えて、今後は隣接してアリーナも建設が計画されていて、さらに大規模なスポーツタウンになっていく予定です。
そのためにここを拠点とする北市川スポーツクラブという総合型地域スポーツクラブが設立される予定で、私も設立委員として準備をスタートしています。
サッカーだけでなく、様々なスポーツできるハードを作って、他種目多世代の人たちが日常的にスポーツをすることによって、長高齢化社会を解決する一つのソリューションにもなると思っています。
何よりもみんなが大好きなスポーツをやり続けることで、健康にもなり、ストレスも解消できて、人々を幸せにすることができる「生涯スポーツ立国」の実現をライフワークにしていきたいと思っています。
