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「いい子」はリーダーになれない
これまでの日本では、女性に対して「誰にも嫌われない、いい子であること」「空気を読んで必要以上に目立たないこと」を過度に求めてきました。その結果、今や女性が社会で積極的に活躍している今でも「いい子に思われたい」「悪目立ちしないようにしないと」という思いに囚われている女性が少なからずいます。
しかしそれは女性の能力を抑え込み、パフォーマンスを低下させてしまっています。本来ならリーダーになるべき人材でも、いい子に思われるために目立たないようにしていれば、上層部も気づくことが難しくなります。
ここでは女性のライフスタイルに関する著書を多く持つ坂東真理子さんの著書『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』を参考にしつつ、女性がリーダーになるための4つの心得を紹介します。
「いい子」と「謙虚さ」を捨てる
リーダーになってより大きな仕事ややり甲斐のある仕事に挑戦したいという女性は、こうした「いい子であろう」「謙虚であろう」という意識をまず捨て去る必要があります。「自分は本当にそんな大した人材じゃないし」と思うかもしれません。しかし女性ほど本来の自分の能力を過小評価し、周囲から高い評価を得ると「自分は周囲を騙している」と感じやすいとされています。
これはBBCワールドニュースアメリカのワシントン支局リポーターのキャティー・ケイと、ABCニュースおよび、グッド・モーニング・アメリカの特派員であるクレア・シップマンの著書『なぜ女は男のように自信をもてないのか』でも明らかにされています。女性は自分に対する過小評価の呪いを振り切り、客観的に自分の能力を評価するべきなのです。
それでも周囲からの嫉妬や批判は怖いかもしれません。しかし女性であれ男性であれ、誰からも好かれることは本来不可能です。これを実現するためには自分を殺して、「謙虚ないい子」になるしかありません。
しかし「謙虚ないい子」は誰にも嫌われない代わりに、「都合のいい子」「使いやすい子」というレッテルを貼られてしまい、決して「頼り甲斐のあるリーダー」とは思われません。もちろんリーダーとして起用されることもないでしょう。
女性に今必要なのは、言うべきことも言わず黙っていることではなくて、言うべきことを感じよく表現すること、説得力をもって話すにはどうすべきか工夫することです。引用:『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』p17
女性は男性よりも共感能力が高いとされています。女性の友人が「うんうん、わかるよ」と話を聞いてくれるのに、男性に話した途端に「それはね」と共感もなしに頼んでもいない解決策を提示された経験が誰にもあるはずです。これは女性の共感能力の高さを示しています。
リーダーを目指す女性はこの共感能力を生かして「空気を読んで口をつぐむ」のではなく、「相手の気持ちを考えながら説得力のある伝え方をする」べきなのです。
「女性らしさ」より「信頼性」を目指す
社会(主に男性)が女性に求めすぎたために、女性の能力を過小評価させてしまっているものに「女性らしさ」があります。可愛らしいふわふわの髪型や、色っぽさを演出する深いスリットの入ったタイトスカート、バッチリ決めた濃いめのメイク……そうした女性らしさのアイコンはオシャレ好きな女性や、男性からの目線に敏感な女性ほど取り入れたくなるかもしれません。しかし女性がリーダーになり、活躍するために目指すべきは女性らしさではなく「信頼性」です。
何も全くオシャレをするなというわけではありません。これは男性にも言えることですが、全くオシャレをしないということはマナー違反です。なぜなら社会人の身だしなみとは周囲の人を不快にさせないものであり、それをしないというのは「あなたたちが不快に感じようと、一向に構わない」というメッセージだからです。
ではどうすればいいのでしょうか。坂東さんは「周囲を見回し、責任のあるポストに就いている女性の服装をチェックしましょう」と言います(前掲書p24)。もちろんそっくりそのまま真似る必要はありません。しかし何が彼女の信頼性や感じの良さを作っているのかを、メイクを含めた身だしなみから分析し、その部分は必ず真似るようにしましょう。そのうえで自分らしさを付け加える分には何の問題もありません。
坂東さんが著書の中で書いているわけではありませんが、これは仕草にも共通する考え方です。確かに男性は女性の柔らかな仕草を好むかもしれません。しかしそれは女性らしさを求めた結果です。女性らしさではなく信頼性のある仕草をするためには、ガサツにならない程度の適度な仕草を身につける必要があるのです。これも坂東さんの言うように責任のあるポストに就いている女性を参考にすると良いでしょう。
リーダーになるための「ロールモデル」との付き合い方
一昔前とは異なり、今や女性リーダーのロールモデルはたくさんいます。海外なら政治家のヒラリー・クリントンやFacebook社COOのシェリル・サンドバーグ、日本にもDeNA創業者の南場智子さんや、大塚家具社長の大塚久美子さんなどがいます。
こうした女性リーダーの中には自身がどのように今のポジションにまで上り詰めたかを発信している人もいるので、そうした人たちを自分のロールモデルとして真似してみるのも良いでしょう。しかし坂東さんは「特定のロールモデルに入れ込むのは、未熟さの表れではないでしょうか」と指摘しています(前掲書p33)。
誰か一人、特定のロールモデルを求めるのではなく、自分の能力、気質、家庭環境、置かれている立場からいろんな先輩女性のいろんな長所、うまいやり方を学ぶのがよいのではないかと思います。引用:前掲書p32
そのため有名な女性リーダーをロールモデルにするにしても、丸ごとコピーするのではなく、「自分が取り入れるべきはどこか?」という視点が必要になります。また女性に限らず、男性でもロールモデルになることはあります。男性リーダーの仕事への向き合い方、部下との距離感を観察し、そこから「女性の自分ならこういうやり方があるかも」とアレンジしていくのも手です。
自分はどんなリーダーになりたいのか、そのビジョンを多くのロールモデルに学びながら作っていきましょう。
「今の組織で頑張る」以外の選択肢
女性に対する偏見によって女性の正当な努力や実力が報われない組織は、残念ながら無数にあります。そのような組織での女性の努力が全て無駄なわけではありませんが、女性登用に積極的な組織での努力に比べて、コストパフォーマンスは圧倒的に下がってしまいます。
そこで女性が考えるべきが「今の組織で頑張る」以外の選択肢です。働き方の多様化や労働力の低下により、女性登用に積極的な会社は増え続けています。女性が経営者を務めていたり、女性リーダーの数が多い会社であれば、女性に対する偏見も比較的低く、自分の実力を正当に評価してもらえるでしょう。
「自分で組織を作ってしまう」という選択肢、つまり起業も十分アリな選択肢です。自分がイチから作った会社なら、女性偏見の企業体質を変える手間も省けます。勇気も体力も必要ですが、男性優位の企業体質を変えるよりは省エネで済むかもしれません。
大切なのは「自分にはこの会社しかない」「自分なんて転職できっこない」と諦めないこと。客観的に自分の能力を評価し、前に進む勇気を持てば、きっと道は拓けます。
「女性」という固定概念から自由になろう
社会(主に男性)が求めてきた女性像は、女性自身をもがんじがらめにしてしまい、自信を奪ってしまっています。組織のリーダーとして活躍するのであれば、まずは自分自身をこの固定概念から自由にしなくてはなりません。そうして初めて自信が生まれ、毅然とした態度で仕事に向き合えるのです。リーダーを目指す女性や正当な評価を求める女性は、ぜひここでの内容を参考に働き方を変えてみてはいかがでしょうか。
参考文献 『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』 『なぜ女は男のように自信をもてないのか』


