「本番に弱い」を克服しよう!ゴールデンメンタルの身につけ方

心を制すれば本番を制する

プレゼンや商談、転職の面接などいわゆる「本番」の場面で、緊張してしまったり、思わぬアクシデントに動揺して頭が真っ白になってしまったりと、メンタル面が原因で実力を出し切れないという人も多いのではないでしょうか。

もちろん本番で結果を出すにはそれまでの準備も重要ですが、それと同じくらいに心の問題も重要です。せっかく準備を万全にしていても、メンタル面が弱いままでは本番を乗り切れないからです。

ここではそんな人のために、平昌五輪女子スピードスケート金メダリストの高木菜那選手をはじめ、多くのスポーツ選手やビジネスパーソンのメンタルコーチを務める飯山晄朗(いいやま・じろう)さんの著書『勝者のゴールデンメンタル』を参考にしつつ、「本番に弱い」を克服するための方法を紹介します。

自分を変えたければまず自信を作れ

自信は作れる

本番でのメンタルを支えてくれるのは何よりもまず自信です。もしかすると自信が必要だと言われると「自分の実力では自信なんて持てない」と思うかもしれません。しかし自信を持つために実力は必要ありません。ちょっとしたコツを身につければ、自信は作れるのです。

もちろんコツコツ努力をしていればそれだけ自信も持ちやすくなりますが、どんなに努力をしていても自信がない人はいつまでも自信がありません。それは自信を持つためのコツを知らないがために、自信のない自分を作り出してしまっているからです。

自信がない人が自信をつけるための15の方法でも紹介しているように、目標設定の仕方や対人関係などを変えれば自信は作ることができますし、心理学などの実験により筋トレや呼吸、ポーズを取るだけでも自信がみなぎってくることもわかっています。今自信がないという自覚がある場合は、まずこうした方法を習慣化して、自信を作るコツを掴んでおきましょう。

自分との約束を守り続けよう

メンタルコーチの飯山さんが著書の中でおすすめしている自信の作り方は、「自分との約束を守る」というものです。飯山さんは「毎日メルマガやブログを書く」という自分との約束を守っているそうですが、これが筋トレやジョギングといったトレーニングでも構いませんし、家の中の掃除や読書などでも構いません。

ここで大切なのは約束の中身というよりは、自分で決めた約束を守っているという事実です。結果を出すために重要となるのは、できるかできないかではなく、できると思っているかできないと思っているかです。できると思っていれば自信に繋がってパフォーマンスが高くなりますが、できないと思っていれば自信を失いパフォーマンスを低下させてしまいます。

自分で決めた約束を守っていると、それを通じて潜在意識に「自分はできる」というイメージが積み重なっていきます。結果、約束とは関係のないことについても「自分はできる」と思えるようになり、自信を持てるようになるというわけです。

本番のパフォーマンスは「本番までの行動」で決まる

スポーツの世界では試合の勝ち負けの8割は試合前に決まっていると言われるそうです。なぜなら試合開始の合図の前から、メンタル面での勝負が始まっているからです。

試合の朝、どんな気持ちで目覚めたか。家族に会った時にどんな挨拶をしたか。チームメンバーと会った時にどんな声をかけたか。会場に入った時、会場全体を見渡す余裕があったか。そうした行動の積み重ねがメンタルに影響を及ぼし、試合本番のパフォーマンスを左右するのです。

そのため本番までの行動には、心をポジティブなモードに整える動作をルーティンとして組み込む必要があります。しかしこの言葉はときに単なるゲン担ぎと考えられていることも少なくありません。飯山さんは著書の中で、ルーティンとゲン担ぎは似て非なるものだと指摘しています。

ゲン担ぎは結果ありきのものです。「あの時この靴を履いていたから商談が上手くいった」「あの時このネクタイをして行ったからプレゼンがうまくいった」といった体験をもとに、大事な時にその靴やネクタイを身につけていくというのがゲン担ぎです。

しかし結果が出ている時はいいものの、一度結果が出なくなるとまた別の靴やネクタイに変えなければなりません。これでは結局「今回はうまくいくだろうか」という不安につながり、パフォーマンスが低下してしまいます。

ルーティンの目的はあくまで心をポジティブなモードに整えることです。それがイチロー選手がバッターボックスで行うようなものであっても構いませんし、ラグビーの「五郎丸ポーズ」のようなものでも構いません。ストレッチや深呼吸といったシンプルなものでもOKです。

本番前の高揚した気分を落ち着かせ、ポジティブな気持ちになれる自分だけのルーティンを試行錯誤してみましょう。

動じない心の作り方とは?

動じない心は「最悪の想定」で作る

ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手は、本拠地初登板初先発で12奪三振、完全試合まであと一歩という結果を出した際、完全試合をすることよりもヒットが出た時に気持ちをどう整理するかを考えていたそうです。

リオデジャネイロ五輪の卓球女子団体3位決定戦の際、福原愛選手のあとに控えていた石川佳純選手はもし福原選手が負けても、自分が必ず勝つんだと考えていたそうです。実際に福原選手は負けてしまいましたが、石川選手はそこで集中力を切らさず、見事勝利を勝ち取ってチームを銅メダルに導きました。

飯山さんは「最悪を想定して、最善をイメージできる」メンタルのことを、真のプラス思考と呼んでいます。考えうる最悪の事態を想定していれば、それよりもマシな事態には冷静に対応できますし、実際に最悪の事態に直面しても何をすればいいかを瞬時に判断し、最善に向かって行動できます。最悪を想定して対策を立てていれば、動じる必要がなくなるのです。

ただしこの最悪の想定は、ぼんやりとイメージするだけでは不十分です。人は知らないもの、未経験のものに恐怖や不安を感じます。それを払拭するためには、「知っている」「経験したことがある」と感じるくらいにイメージしておかなければなりません。そのため本番のアクシデントに動じないためには、できるだけ具体的に最悪の事態とその際の対応をイメージする必要があるのです。

目に映るもの、手の感触、におい、音、口の中の感触、アクシデントが起きた時の嫌な感じ……全てを鮮明にイメージしたあと、いったん深呼吸をして次の対応も一つずつ具体的に思い描いておきましょう。そうして一度最悪の事態を経験しておけば、本番でどんなアクシデントが起きても落ち着いて対応できるはずです。

動揺した時に平静を取り戻す技術

しかしどんなに最悪の事態とその対応を鮮明に思い描いていても、本番で動揺してしまうこともあります。そんな時に平静を取り戻すために効果的な技術が、アイコントロールと呼ばれるものです。

やり方は非常に簡単です。自分が集中するべきものに対して、視点を一点に絞り込み、それだけのことを考えるのです。野球のピッチャーならボールの縫い目、社内コンペのプレゼンならば手元の資料やプロジェクター、読書ならば今呼んでいる文の文字一つ一つといった具合です。

そうして余計な情報を視界からシャットダウンしてやると、散漫になっていた集中力が戻ってくるのを感じるはずです。そうすれば動揺していた心は平静を取り戻し、本来の実力を発揮できるようになります。

強靭なメンタルを手に入れよう

本番になった途端に実力が発揮できないのは「何が起きるかわからない」「どうしたらいいかわからない」といった不安や恐怖にメンタルが負けてしまうからです。しかしメンタルは、普段からしっかり鍛えておけば筋肉のように自分を守ってくれます。

本番の弱さが原因で結果を出せなかった経験がある人は、ぜひここで紹介した方法を参考にメンタルを鍛えていきましょう。また飯山さんの『勝者のゴールデンメンタル』には、飯山さんのこれまでの仕事に基づいた心を強くする技法が紹介されています。その技法をより深く知りたいという人は、飯山さんの著書にも手を伸ばしてみてください。

参考文献
『勝者のゴールデンメンタル あらゆる仕事に効く「心を強くする」技法』

Career Supli
実用的ないい本なので、ぜひ読んでみてください!
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部