思想家や学者などの先生がヤバいと警告する「人口減少問題」の現実を知っている?

〝黄昏の時代〟と言われるニッポンで何が起きているのでしょうか?

「日本社会には喫緊の論件だという切迫感がありません。それが不思議です。なぜなら、日本は世界で最初に超少子化・超最高齢化のフェーズに突入する国だからです」

「未来はつねに霧の中です。霧の先にどういう風景が広がっているかについては、確定的なことを言える人は一人もいません」

「日本社会には最悪の事態に備えて『リスクヘッジ』をしておくという習慣がないということです」「いくつもの社会制度は機能不全に陥り、ある種の産業分野はまるごと消滅するでしょう」

なんだか「日本沈没」みたいな文章は、今回のテーマの着想(コンセプト)をまとめた思想家・内田樹(たつる)さんの「序論」からの抜粋です。

新刊「人口減少社会の未来学」(文藝春秋)が訴える危機感とは?

著者に「10+1人」とあるのは生物・経済など、各分野で活躍している10人の先生+編集・著の内田さんを加えたもの。

分析や主張はまさに十人十色。その中でも「これでもかぁ!」とゴリゴリ持論を披露しているのは内田さん。合気道七段だそうです。

その内田さんは(後掲する)人口減少や出生率低下などの統計を分析しながら、次のように「序論」で述べています。

「人口減によって何が起きるかについての、科学的予測を踏まえた『国のかたち』についての国民的な議論はまだ始まっておりません」

「後退戦で必要なのはクールで軽量的な知性です。まずはそれです。イデオロギーも、政治的正しさも、悲憤憤慨も、愛国心も、楽観も悲観も、後退戦では用無しです」

内田さんの主張から緊迫感が伝わります。加えてAIの導入で雇用が空っぽになり、市場が消滅し消費活動は低迷するそうです。心まで空っぽにならなければ良いのですが・・・

AKBのヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」の歌詞にある
「♪未来はそんな悪くはないよ Hey! Hey! Hey!-」とはいかないようです。

「そだねぇ!」と気軽に相づちが打てない人口減少問題

「人口減は対処を誤ると亡国的な危機を将来しかねない問題ですけれど、それについては政府も自治体もまだ何も手立てを講じていません」

「今の日本にはまだ何の合意も何のルールも存在しないということです」

内田さんは国の無策に怒っているようです。他の先生たちは何を訴えたのでしょうか。
(以下、11人の主張から私たちの身近な問題に係わる目次の一部を紹介)

・序論 文明史的スケールの問題を前にした未来予測  内田樹氏(思想家)
・日本の“人口減少”の実相と、その先の希望 藻谷浩介(地域エコノミスト)
・人口減少がもたらすモラル大転換の時代  平川克美氏(実業家・文筆業)
・縮小社会は楽しくなんかない  ブレイディみかこ氏(在英20年余 コラムニスト)
・若い女性に好まれない自治体は滅びる 平田オリザ氏(劇作家・演出家)
・都市と地方をかきまぜ、「関係人口」を創出する 高橋博之氏『東北食べる通信』編集長
・少子化をめぐる世論の背景にある「経営者目線」  小田嶋隆氏(コラムニスト)

ひと言で言えば人口減少による「縮小・縮減」をどうとらえるか。ただ人口減少って難しくてピンとこないとの声も・・そんな中、文化活動を軸に新しい共同体が紹介されたり、「下り坂をあえて上る勇気」を訴えたり・・未来のキーワードになる言葉もあり、先生たちの熱弁は熱量があり、本はヘビー級の仕上がりの感想(シンクタンク研究員)

「下り坂をあえて上る勇気」は前途多難でもくじけるなということ?

少子化が進むと、妻に先だたれた団塊世代の夫が、AI機能バッチリの妻役のロボット相手に晩酌をしてもらい、世間話をするー近い将来そんな光景も見られるのでしょうか。

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さて「10+1人」の中で、実生活をベースに説得力があった在英22年のブレイディみかこさんと平田オリザさんから紹介しましょう。

ブレイディみかこさんは託児所が緊縮財政でつぶれることを経験。英国の緊縮財政のしんどさを振り返り、「楽しい縮小経済などない」とストレートなもの言いです。

「わたしは日本に必要なのは、末法思想のような店じまい論ではなく、『下り坂をあえて上る』勇気と知恵だろうと思っている」

「いたずらに人心を委縮させる言説を広めることは、有害どころかスーサイダル(自滅的、注・筆者)に映る」「縮小社会が楽しいなどと言ってはいけない」

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「若い女性に好まれない自治体は滅びる」と訴えた平田さんは新たな共同体を提案。

利益共同体や地縁血縁共同の間に「『関心共同体』とも呼ぶべき、文化的要素でつながる穏やかな共同体を用意しておく必要があるのではないか」

平田さんはヨーロッパと比較して、「日本は、世界の先進国の中で最も人間が孤立しやすい社会になっている」と「無縁社会」の現実を嘆いています。

無縁社会の広がりに、幸せに暮らす生活の流儀が変わる!

著書に「移行期的混乱」などがある平川克美さん。新しい共生や社会デザインをこう説明。

「シェアハウスやコーボラティブハウスといった半共同生活の住人たちは、その生活の中で思わぬ恩恵を受けることになるのかもしれない」

「人口減少社会における社会デザインとは、無縁の世界に有縁の場を設営してゆくこと以外にはないだろう」

果たして家族に代わる「共生」の場所を作りだすことは出来るでしょうか。平川さんは新しい社会デザインには、「人類史的な相互扶助のモラルを再構築してゆくこと」が大事としています。
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ユ二―クだったのは「女性は産むマシンか」―と女性が統計上の数値として扱われることに激怒している小田嶋隆さん。

「将来の人口を労働力ないし消費主体として想定する議論はすべて、女性を『産むマシン』として参入する前提として話をすすめられている」「産む産まないを他人に強要されるべき存在ではない」

少子化を憂慮する世論を背景に、上からの「経営者目線」で女性叩きはけしからんと怒ったり…十人十色の考えや分析が〝まぜご飯〟のようで面白い(シンクタンク研究員)

避けては通れない「2025年問題」と「2042問題」のWパンチ

これらは人口減少に深刻な影を落とすと見られ、主役は団塊の世代とそのジュニアです。

「団塊の世代」が2025年には全員75歳以上になり、2042年には「団塊の世代ジュニア」も全員75歳以上になって様々な事が想定されます。医療費などの経費増が問題になり、人口減少とともにに「2042年問題」の深刻さは予測がつきません(経済ジャーナリスト)

さらに黄昏ニッポンを象徴しているのが下記の統計結果。出生数は発表されたばかりです。

■厚労省が1日に発表した人口動態統計によると、2017年に生まれた子どもの数(出生数)は前年よりも3万人余少ない94.6万人で、過去最少を更新。

一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.43と2年連続で低下。全国で最も出生率が低い東京都は、さらに下げており、仕事と育児の両立に課題があることが浮き彫りになっています。

国勢調査(2015年)では前回10年の調査に比べ94万余り減少、同調査で初めて人口減少を確認。15年10月時点で外国人を含む日本の総人口は1億2700万余。減少率は0.7%。

急激に人口が減るのは過去に例がなく、40年後には9千万人を割るとの予測もあります。とくに「2025年問題」→「2042年問題」は最大の危機とも言われます。

「わたしやあなた日本人」はどう生きればいいのでしょうか・・・

私たちは長い歴史上、特異な時代を生きているのでしょうか。嘆きが聞こえるようです。
「人口減少」によるマイナスの事態はすでに進行中で、著者の分析に悲観論が目立ちます。内田さんはこう言い切っています。

「私たちが迎えようとしているのは前代未聞の時代ですから、『このような問題について私はどうすればいいか正解を知っている』という人間はどこにもいません」

「悲観的な見通しを持つことは必ずしも思考停止を意味しません。むしろ活発な想像力と推進力を要求すると僕は思います」

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悲観論を乗り越えようとか、「下り坂をあえて上る勇気と知恵」の言葉に、未来を生きることはサバイバルか、との感想すら抱きます。

「序論」の最後で「これからのきびしい時代を生き延びなければならない若い人たちの健闘を祈って」のエールに、ふとAKBの
♪人生捨てたもんじゃないよね―の主張、いや歌詞を思い出しました。

人口減少社会で,未来に生きる処方箋を見つけるのは、タイヘンなことのようです・・・

[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸 陽三 [編集] サムライト編集部

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わらっちゃうぐらい課題満載ですね。前を向いていきましょう!!!