転職のタイミングは誰に何をいつ相談するのが正解か

転職時は「宙ぶらりん」状態

人は人生で何度かトランジション(転機)を経験します。例えば学生から社会人になるとき、子どもが産まれ親になるとき、初めて管理職(マネジャー)に昇進するときなどです。

トランジションは「何かが終わり」そして「何かが始まる」までの移行期を指し、このとき人は「宙ぶらりん」な状態になります。「宙ぶらりん」状態のときは心が虚ろになったり、何かと不安定になったりします。

転職も人生の大きなトランジションです。このような移行期には、1人で何もかもやり抜こうとするのではなく誰かに相談することをおすすめします。

とはいえ、デリケートな話題ですから、闇雲に人に話すわけにはいきません。「誰に」「何を」「いつ」相談するのか整理してみましょう。

シュロスバーグの4Sで乗り越える

転職に限らず人の悩みは千差万別で個別具体的です。悩みを解決するために「これが正解だ」という回答はありません。ですので、何らかの切り口を用いて観点の整理を試みます。そこで参考になるのがシュロスバーグの4Sの切り口です。シュロスバーグは転機を乗り越えるために4つのSに着目すると良いと説いています。

Situation(状況)
Self(自己)
Supports(支援)
Strategies(戦略)

この中にSupports(支援)が含まれているように、シュロスバーグも転機の際には支援を得る、すなわち誰かに相談したりすることを観点に含めています。

では、「誰に」「何を」相談するのかを残りの3つのSで整理します。

Situation(状況)を整理するために社内で相談できる人を探す


まず、あなたは今どのような状況にいるのかを整理しましょう。仕事はうまくいっているのか。社内での今後のキャリアとしてどのような可能性があるのか。社内の人間関係、ポジティブな条件で転職するのか、それともその逆なのか。転職を考え始めたきっかけは何なのか。

これらのことは、第三者に相談するよりもより事情や文脈を理解している社内の人に相談すると一層整理が進みます。ただし、相談するにしても直接利害関係のある人は避けた方が良いでしょう。昔の上司、社内の同期、前のプロジェクトでお世話になった人などは周りにいませんか?思い切って声をかけてみましょう。

Self(自己)を整理するためにあなたの身近な人を頼る

Situation(状況)の整理と前後して、あなた自身のことも整理を試みましょう。自己の整理として基本的な枠組みである「できること」「やりたいこと」「やるべきこと(意味や価値を感じられること)」を用いるのが良いです。

キャリアデザインとして一般的にはこの3つの重なり合うところを探そうと言われていますが、最初から重なり合うところが見つかる人はいません。そのようなときは、まだキャリアの山登りの期間であると捉え、「できること」を増やすことから始めましょう。

なぜなら、「できること」は経験を通じて意図的に変容させることができるし、「できること」を増やす過程で「やりたいこと」の輪郭がぼんやりと浮かび上がってくることもあるからです。

では、現時点のあなたの「できること」「やりたいこと」「やるべきこと」は誰に相談するのが良いでしょうか。Selfは、かなり内面に踏み込む話です。この手の話は、やはりあなたのことをよく知っている人が適任です。

身近な友人、恋人、家族など、あなたが自己開示できる相手に話してみてください。また、Selfは今すぐに何もかも腹落ちするような整理ができることはなかなかありません。また、常々変化するものでもあるので、経験やそのときの感情などはタイミングを見て振り返る癖をつけておくと良いでしょう。

Strategies(戦略)を探るために第三者を活用する


状況や自己の整理ができれば、どのような転職先があるのか、また実際に自分はその転職先の選考に合格できそうなのかを探る番です。マーケットの状況や求人情報について知り、今後の戦略を練る必要があります。

そのためには、やはりエージェントに相談することが1番です。個人レベルでは知り得ないマーケットの状況や求人情報などを提供してくれます。第三者に客観的に相談することもメリットになるでしょう。

ただし個人的には、Situation(状況)やSelf(自己)について一切の整理をしないままエージェントに相談するのは尚早だと思います。もちろんエージェントもそれらの整理を手伝ってくれますが、第三者では汲み取りきれない事情や状況などもあります。

エージェントを効果的に(良い意味で)活用するためにも、Situation(状況)やSelf(自己)について適切な相手に相談し、整理してから戦略を整えましょう。

「誰に」「何を」相談するのか

ここまでの話を整理します。

Situation(状況)について、社内の利害関係のない人に相談する
Self(自己)について、身近な人に相談する
Strategies(戦略)について、エージェントに相談する

また、当然のことながら相談相手は信頼できる人(秘密を漏らさない人)に限定すべきです。転職の話は酒の肴になりやすく、下手をすればあっという間に広まってしまい相談したつもりがかえってデメリットを被ってしまう可能性もあります。相談する際は最大限の注意を払うに越したことはないでしょう。

「いつ」相談するのか

それではこれらの相談を「いつ」するのが良いでしょうか。

筆者なりの回答は「日が暮れる前に」です。

すなわち、今すぐにでも相談するのが良いと思います。「相談」にタイミングも何もありません。タイミングを探っているとしたら、それは「相談」ではなくて「報告」をしたいと思っているからではないでしょうか。

あくまで「相談」であり、「決断」ではありません。日が暮れる前にアクションを起こすことをおすすめします。

最後に決めるのは、自分

転職相談をしようと思っているあなたに最後に私からアドバイスです。

いくら相談をしても、最後に決断するのは自分です。「誰かに言われたから」「おすすめされたから」という理由で決断をしてもろくなことがありません。あくまでアドバイスはアドバイスです。「自分がこうしたいから」という意志を持って決断してください。

著者プロフィール:鈴木洋平(すずきようへい)‬
‪2002年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。システムエンジニアとして入社後、同社内で人事に転身。同社を退社後、「株式会社採用と育成研究社」を設立、同副代表。 企業の採用活動・社員育成の設計、プログラム作成、講師などを手掛けている。‬
‪・米国CCE,Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー‬
‪・LEGO® SERIOUS PLAY® 認定ファシリテーター‬
‪http://rdi.jp/about-rdi‬

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[文]鈴木洋平 [編集] サムライト編集部