ビジネス心理学者・内藤誼人が教える転職を成功させるための実践テクニック【総まとめ】

人気作家が教える失敗しない転職のコツとは?

ビジネス心理学の第一人者として実践的な心理学の応用に力を注ぎ、多数の著書を出版されている人気作家の内藤 誼人さんに「失敗しない転職のコツ」について寄稿いただいた特集記事です。このポイントさえおさえておけば転職に失敗しないというポイントが満載です。

内藤 誼人 氏 プロフィール
心理学者。有限会社アンギルド代表。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。ビジネス心理学の第一人者として、実践的な心理学の応用に力を注いでいる。自然を愛するナチュラリスト。どんな女性にもやさしいラディカル・フェミニスト。主な著書に「仕事力より“社渡り”力 会社でなぜかうまくいく「人たらし」の心理テクニック」「「不安」があなたを強くする 心配性だからこそうまくいく54の法則」「「他人に怒れない」をやめる6つの方法」「人たらしになる会話術」など。
合わせて読みたい!
ビジネス心理学者・内藤誼人が教える転職塾『キャリアダウンの原因』
ビジネス心理学者・内藤誼人が教える転職塾『不安を転職のエネルギーにする方法』

【目次】

【1】履歴書で最も重要なポイント
【2】志望動機のつくり方
【3】面接のための完璧な準備
【4】転職先の選び方
【5】転職して真っ先にするべきことは?
【6】苦手な人とのつき合い方

【1】履歴書で最も重要なポイント

採用担当者が、履歴書を判断するとき、どこにまず目が向くのでしょうか。学歴であるとか、職歴であるとか、志望動機などももちろん大切であることは言うまでもありませんが、何よりも重要な判断の決め手になるのは、応募者の「顔だち」です。

「私は、応募者を“顔”で選ぶようなことはしない!」と、たいていの採用担当者は考えています。けれども、そうはいっても、やっぱり応募者の“顔だち”によって少なからぬ影響は受けているはずです。これは心理学の常識だといえます。

たとえば、採用担当者が、2人の人物を比較しながら採用を決めるとき、職務経歴もスキルもそんなに変わらなければ、「感じのよいほう」を採用します。写真から受けるイメージがよいほうを採用するに決まっているのです。

写真にこだわれ

Young woman holding her resume
転職を考えているみなさんは、必死になって自己分析に取り組み、自分の長所であるとか、ウリになるポイントをうんうん唸りながら考えていらっしゃるかもしれませんが、それよりももっと、もっと大切なことをする必要があります。それは、ちゃんとプロの写真者さんに依頼して、最高の写真を履歴書に添付することなのです。

「ほう、ずいぶん明るい雰囲気の人だな」

「おっ、とても魅力的な人だな」

採用担当者に、このようなポジティブなイメージを写真で感じさせることができなければ、書類審査をパスして面接にこぎつけることはできません。写真は、ものすごく大事なのですから。

心理学的な裏づけ

Teacher assisting African American student during lecture in amphitheatre.

採用担当者は、基本的に「顔だち」で選びます。これについては、うんざりするほどの心理学的な裏づけがあります。
たとえば、オランダにあるフローニンゲン大学のマーク・ルクセンは、100枚の写真から、魅力的な顔だちと判断された男女の写真と、あまり魅力的ではないと判断された顔だちの写真を使って、「あなたがデパートの人事担当者なら、この人を雇いますか?」と尋ねる実験をしたことがあります。

その結果、男性にしろ、女性にしろ、魅力的な顔だちの応募者のほうが、やはり採用されやすい、ということがわかりました。しかも、びっくりするかもしれませんが、この傾向は、特に「男性に顕著」でした。

みなさんは、「女性は顔だちがよければ、採用されやすい」と思うかもしれませんが、男性だって、顔で採用されるかどうかが決まるのです。いや、むしろ男性のほうがそうなのです。

女性の場合には、あまりに美人すぎると逆に悪い評価を受けたり、敬遠されることもあったりするのですが、男性にはそういうことはありません。魅力的に見えるほうが、採用される確率は、絶対にアップします。魅力的に見えない写真を履歴書に添付してはなりません。これは、男性こそ気をつけるべき点だといえるでしょう。

イメージの重要性

Young professional college student with resume at job interview
ジョン・T・モロイの書いた『ミリオネーゼのファッションルール』(ディスカヴァー)という本には、面接で落とされた応募者のリストを作って、人事担当者に落とした理由を尋ねると、40%以上の担当者が、「イメージが悪い」を挙げたというお話が出てきます。顔が魅力的に見えるかどうかは、本当に大切なことなんです。

では、どうすれば魅力的に見えるのかというお話になるわけですが、とにかく「肌が明るく見える」ように写真者さんに注文を出しましょう。たくさん照明を当ててもらうことが大切です。芸能人などは、自分の宣材写真を撮ってもらうときに、みんなそうしています。

男性でも、薄くファンデーションを塗るとか、ハイライト化粧品を使うことで、とにかく肌を明るく見せることを考えてください。そのほうが採用担当者に絶対にウケのいい写真が撮れます。

とにかく明るくする

ジョージア大学のM・S・ハリソンという心理学者は、240名の人に「あなたなら、この人を採用しますか?」と尋ねる実験をしたことがあるのですが、応募者の肌の色だけを画像処理技術で変えてみました。すると、明るく見えれば見えるほど、採用されやすくなることを明らかにしています。

肌の色が黒くて、くすんでいると、あまりよい印象は与えません。そういう肌の人は、魅力的に見えないばかりか、健康状態が悪いことも多いので、採用担当者は避けようとします。壮健で、しっかり仕事をやってくれそうなイメージを与えるためには、肌が明るく、ツヤツヤして見えたほうがよいわけです。

履歴書を作成するときのポイントはたくさんあります。しかし、本当に大切なのは、自分の魅力がきちんと採用担当者に伝わるように、きちんとプロの写真屋さんに頼んで、最高の写真を添付することではないでしょうか。

【2】志望動機のつくり方

履歴書を書くときにも、必ず「志望動機」は書かなければなりませんし、面接でも、やはり「志望動機」を聞かれます。志望動機を聞かれることもなく、就職が決まってしまう、ということはまずありません。

採用担当者からすれば、日本には200万社とも300万社ともいわれる会社があるのに、「どうしてわざわざウチを選んだのだろう?」ということは、どうしても気になることです。その理由を知りたいと思うのです。

ただし、ここにひとつ注意があります。
志望動機というと、たいていの人は、当然のように、“自分の志望動機”を履歴書に書いたり、面接で答えたりしてしまうのです。けれども、これはよくありません。

本音は語らない

逆説的ながら、志望動機というものは、自分のことなど「書いてはならない」のです。ホンネのホンネとしていえば、たいていの人が持っている志望動機など、フタを開ければ、どうせさもしくて、卑しい動機に決まっているからです(笑)。

「今より、キャリアアップしたい!」
「今より、もっと給料がほしい!」
「今より、地位の高いポジションの肩書がほしい!」

どうでしょう?転職を希望する人の志望動機なんて、だいたいこんなものではないでしょうか。これがホンネだとしても、それをそのまま出してしまうのはよくありません。自分の事しか考えていないように思われてしまうからです。

では、どうすればいいのかというと、答えは簡単。転職しようとする人は、たいていまず会社研究をしますよね。そのときに調べたことを、そのまま志望動機としてしまえばいいのです。

それぞれの会社には、目指すべき“目標”というものがあるはず。会社研究をすれば、自然にそれがわかります。社是などに、それがよくあらわれていますし、経営者や社長が、雑誌の取材などでしゃべっていることや、ツイッターやブログで発表している意見などからも読み取ることができるでしょう。

会社研究で、自分がターゲットとする会社の目標がわかったら、それをそのまま自分の志望動機にしてしまえばいいのです。ようするに「パクる」わけですね。

志望動機はパクる

たとえば、「身体にいいものだけを使って商品を作ろう!」という目標を掲げた食品メーカーがあるとしたら、「私は、身体にいいものだけを使って仕事がしたいのです。そのために、御社への就職を希望します!」といえばいいのです。

経営者が「社員が楽しく仕事ができる雰囲気づくりを重視している」といった内容を雑誌で語っていたら、「私は、みんなで和気あいあいとした職場での仕事を希望しています」ということを志望動機とすればいいのです。

志望動機は、“自分自身の、ホンネの動機”などを書いてはなりません。その会社が目指していることを、そのまま自分の志望動機として書けばよいのです。その会社が目指していることを、自分の志望動機として履歴書に書いたり、面接で述べたりすると、人事担当者は安心します。

「ああ、この人なら、ウチの会社にピッタリだな」
「ウチの社風にも合わせてくれそうだな」
「社長とも気が合いそうだな」

と胸をなでおろすことができるからです。おかしな人間、すなわち、その会社にとって異分子となるような存在を採用せずにすむと思えるので、ホッとするのです。

それにまた、その会社が目指していることを、志望動機とすれば、採用されやすくもなるでしょう。なぜなら、私たちは、自分が信じていることに賛成してくれる人に対して好感を持つものだからです。

一致効果

テキサス大学のジョナサン・コーラーは、超能力について書かれたたくさんの記事を集めて、それを大学生に読ませてみました。すると、超能力を信じている人は、「超能力は存在する」という科学レポートばかりに共感し、超能力に懐疑的な人は、「超能力は嘘っぱちだ」というレポートの内容が正しいとみなす傾向があることを発見しました。これを“一致効果”といいます。

私たちは、自分の考えと一致する人のことは受け入れますが、自分の考えと反するような人は受け入れません。これが一致効果です。就職のときもそうで、会社の雰囲気であるとか、目標であるとか、社是で謳っている内容と一致するような人のことは受け入れてくれます。だから、志望動機は、なるべくみなさんが希望する会社の考えに合わせるような形に持っていくのが正解になります。

焦って答えない

蛇足ながら、もうひとつアドバイスを。面接で志望動機を聞かれたら、「しめたっ!」とばかりに、あわてて答えようとする人もいらっしゃいますが、一呼吸おいて、ゆっくりと答えるようにしてください。

質問されてすぐにパッと答えようとすると、「君はその答えを考えてきたようだから、別の質問にしようっと」と面接官に意地悪をされることがあります。即答できるときでも、考えるフリをしながら話したほうがいいのですね。

【3】面接のための完璧な準備

面接で、質問にうまく答えられないという人は、意外に多いのではないでしょうか。しかし、うまく答えられないのは、頭の回転が鈍いからでも、口下手だからでもありません。単純に「準備不足」。これに尽きます。

だいたい面接担当者から質問されることなど、だいたい予想できるはずで、あらかじめその予想に対しての「返答」を“準備”しておけばいいのです。あらかじめ予想される質問を片っぱしから書き出してみて、ひとつずつ答えのセリフを箇条書きしておくのです。次に、それを頭に叩き込みます。実際の面接では、丸暗記したセリフを答えるだけ。

もちろん、あまりスラスラと答えてしまうと、「さては、答えを丸暗記してきたな?」と担当者に疑われてしまうので、さも今思いついたように、ゆっくりと間を置きながら話すのも大切なポイントです。

完璧な想定問答集をつくる

英検などの試験では、面接もあります。当然、英語で受け答えしなければならないのですが、こういうときにも想定問答集を作っておくといいでしょう。あらかじめ質問されそうな質問を片っぱしから考えて、それに対する英語の文章を作って、それを丸暗記しておくのです。かくいう私も、大学時代に英検の準1級を受けたときには、そうやって面接を乗り切った思い出があります。

間違ってもアドリブでなど、受け答えをしてはいけません。適切な返答をアウトプットしたいのであれば、まずはしっかりとインプットすることが肝要です。私たちの頭というものは、インプットしたものしか、アウトプットできないようになっているのですから。

お笑い芸人も、落語家も、しっかりと“ネタ”を頭に叩き込んでおくからこそ、面白い話ができるのであって、決してアドリブでしゃべっているわけではありません。雄弁家として知られたイギリスのウィンストン・チャーチルは、45分のスピーチをするのに、8時間もかけて原稿を練り上げていたといわれています。それだけ準備したからこそ、うまく話せるわけですね。

しっかりと準備をしておくからこそ、機転の利いた受け答えもできるのであって、「アドリブで適当に受け答えすればいいや」と考えるのは、まことに甘い考えだと言わざるを得ません。セリフを丸暗記して、リハーサルしておけば面接など、恐れることはありません。

自己主張はトレーニングで強化できる

米国ウィスコンシン大学のリチャード・マクフォールは、気が弱い人たち42名を集めて、「チケットを買うために列に並んでいるとき、もし割り込みしてくる人がいたら、どうする?」といった状況を16場面ほど想定し、それに対する自分なりの拒絶のやり方を考えさせるというトレーニングをしてみました。

こういう訓練をしておくと、62.94%の人が、その後はきちんと適切な形で自己主張できるようになったそうです(訓練をしていないグループでは46.16%しか言いたいことが言えませんでした)。

面接も同じで、きちんとセリフを覚えておけば、実際の面接場面でもそれなりに答えられるようになるはずです。面接を受けるときには、自分がまず面接官の立場になってみてください。そして面接官の立場で、みなさんの履歴書を眺めてみてください。

面接官になってみる

もし「職歴」の欄に、やたらに転職回数が多いようなら、面接官としてはそれが気になるのではないでしょうか。当然、面接においても、「どうしてこんなに転職が多いの?」という質問をしてくるに決まっています。

こういう質問が予想されるわけですから、それに対してどう答えればよいのかを箇条書きしていくのです。この作業は、頭の中でやるのではなく、しっかりと紙に書きだすようにしてください。

紙に書きだしてみると、日本語としておかしいところや、論理の破たんなどもすぐに見つけることができるでしょう。それにまた、頭の中がクリアにもなります。

「ここ2年間で、たしかに何度か仕事を変えました。その理由は、親の介護をどうしても私がするしかなかったからです」といったセリフを書きだします。それを口に出して読んでみて、ひっかかる部分はどんどん削って、セリフを練り上げましょう。

「もし、面接官がまったく予想もしてこなかった、とんでもない質問をしてきた場合には、どうするんですか?」
とご心配なされる方もいらっしゃるでしょう。

けれども、そういう質問をされた場合についても受け答えのセリフも、ちゃんと考えておけばいいではありませんか。

「すみません。○○について、まったく考えたことがございませんでした。しばらく時間をいただかないと、とてもお答えできそうにありません」

このようなセリフも考えておけば、たとえ予想外の質問をされても、しどろもどろになることはありません。念には念を入れたいのであれば、意地悪な質問なども想定しておけば万全でしょう。

【4】転職先の選び方

転職をしようかどうかで悩むとき、みなさんはどのような基準で次の仕事先を選ぶであろうか。おそらくは、給料や福利厚生、新しい役職、通勤時間、社会的な知名度などを基準にして選ぼうとするのではないかと思われる。

しかし、転職選びで本当に重要なのは、違うのだ。 失敗しない転職選びのコツは何か。それは、人間関係。新しい仕事先の人間関係をしっかりと調べるのである。

自分と肌は合いそうか。職場の雰囲気がとげとげしくなく、みんなにこやかに仕事をしているのか。そういう点をしっかりとチェックしよう。面接に出かけるのなら、職場の雰囲気が和気あいあいとしているかを見逃さないようにするのである。そうやって選べば、転職選びで失敗することは、まずない。

転職後の満足度

Design is creativity with strategy

南カリフォルニア大学経営学部のダニエル・フェルドマンは、転職して平均8か月が経過している517名のシニアマネジャー(平均46歳)を対象に、転職後の満足度を調べてみた。

その結果、たとえ大企業からより小さな規模の企業へと転職しても、給料が減ったとしても、新しい職場がフレンドリーであれば、本人の満足度はとても高かったのだ。フェルドマンは、職場選びでは、上司やチームの雰囲気が非常に重要だと述べている。

仕事をするうえで最大のストレス

もしかりに地位が下がったり、権限が小さくなったとしても、職場の雰囲気さえよければ、気持ちよく仕事ができるのである。

仕事をするうえで最大のストレスをもたらすものは、人間関係。
勤務内容がどれだけハードであろうが、人間関係が円満であれば、けっこう楽しく仕事もできる。ところが、職場の人間関係が最悪なら、どんな仕事だって、イヤになってしまう。

どんなに楽しい仕事だって、人間関係がうまくいかなければ、仕事を楽しめるわけがない。逆に、どんなにつまらない仕事だって、人間関係が満足のいくものなら、けっこう楽しくこなせるものである。

気の合う仲間に会うところ

Business team

それはちょうど学校の勉強など、これっぽっちも興味は湧かないが、気の合う友達がたくさんいるのなら、学校に行くのもそれなりに楽しいのと一緒である。学校というところは、「勉強するところ」ではなく、「友達に会うところ」なのである。

職場も同じだ。 職場というのは、「仕事をするところ」ではなく、「気の合う仲間に会うところ」なのである。気の合う仲間と、一緒の目標に向かって仕事をするのが楽しいのである。

お金で選ぶと失敗する

iStock_000034224586_Small

「もっとお金がほしいから、今の職場を辞めよう」もしそういう気持ちで転職を考えるのなら、やめたほうがいい。

たしかに、探せば、今の会社よりも、高い給料を保証してくれる会社があるかもしれない。だが、もしその会社の人間関係が自分に合わなかったら、どうするのか。

少しくらい給料が増えても、ギスギスした冷たい雰囲気の職場で、ずっと我慢することなどできるのだろうか。おそらくはできないであろう。

徹底的に調べよう

間違いのない転職をしたいのなら、とにかく転職先の人間関係を徹底的に調べてみることである。徹底的に調べたうえで、「自分と仲良くやっていけそうだ」と思うのなら、転職すればいい。

給料やら福利厚生のような条件は、あまり考える必要はない。それらは二の次、三の次の問題でしかないからである。人間関係が苦痛なら、どんな仕事だって、楽しくやれるわけがない。

逆に、人間関係が満足のいくものなら、たとえどんな仕事をやらされるにしても、楽しくこなせるものである。私は、長らく出版業界で仕事をしているが(今もしている)、5年前から大学の先生もすることになった。

私の場合は、転職とは違って、ひとつ仕事先を増やしたわけであるが、大学での仕事も満足している。それはなぜかというと、勤務先の先生たちが、ものすごくフレンドリーだからである。

どの私に先生も気さくに話しかけてくれるし、相談に乗ってくれる。私の場合は、大学での仕事を増やしたことも大成功だったわけである。もちろん、事前に、そういう先生ばかりがいるということを調べておいたわけであるが。

楽しく仕事ができる場所が一番

大学の先生というのは、特に非常勤の場合だと、雀の涙ほどの給料しか出ない。講義の準備をするのは意外に大変で、実際の講義はもっと気を遣う。

そのため、給料という点だけでいえば、コンビニのアルバイトをするよりも時給は安い。しかし、気の合う仲間が職場にいると思えば、そんなことはまったく気にならず、楽しく仕事ができる。

転職を考えているみなさん。転職選びのコツは、人間関係である。このことを肝に銘じて、勤務先を選んでほしい。

【5】転職して真っ先にするべきことは?

転職を成功させるコツは、とにかく新しい職場に自分を受け入れてもらうことである。新しくやってきたみなさんは、すでに元からいる社員からすると、得体のしれない人物であり、異端者である。

元からいる社員は、みなさんが何者なのかをよくわかっていない。どんな性格なのか、どんなスキルを持っているのか、そういうことがわからない。そして、人間というものは、よくわからない人に対しては、どうしても不信感や警戒心、嫌悪感を抱きやすいものである。

まずは職場になじむこと

iStock_000059894120_Small

米国ミシガン州にあるウェイン州立大学のキャロリン・シャンツによると、ある人物が、すでにあるグループに入ろうとするとき、54%はいったん拒否的な対応を受けるという。

そんなにすぐに仲間に入れてもらえるわけではないのだ。また、シャンツによると、自分から話しかけずにグループの周りをうろちょろしても81%は無視されるという。

転職してすぐにやるべきは、新しい仕事を覚えることではなく、職場になじむことだ。そして、新しい職場になじむためには、どんどん自分から積極的に他の人たちに話しかけることが絶対に必要である。こちらから声をかけず、相手から声をかけてもらうのを待っていたら、いつまでも無視され続けるだけである。

最近は、どの会社もそうなのだが、人の入れ替わりが激しくなり、いちいち新しく入ってきた人に対して、親切な対応をしてくれる人が少なくなってきた。だから、自分から相手の懐に飛び込んでいかないと、口もきいてもらえなくなってしまうのである。

まず「人の名前」を覚える

iStock_000084223057_Small

転職したときには、とにかくまず「人の名前」を覚えよう。いいかげんな自己紹介をするのではなく、しっかりと相手の名前を自分の脳みそに叩き込んでいこう。お互いの紹介が終わったら、必ず、相手の名前を自分のメモに書き入れておき、絶対に忘れないようにしよう。

初日の勤務をするときに他の社員と自己紹介をする。しかし、たいていの場合、いっぺんに大勢の人と次から次へと自己紹介していく。ひどいときには、上司が職場の人を集めて、「右から、渡辺君、石川さん、服部君、新井さん、田中さんです、よろしくね」と代わりに紹介してしまうこともある。これでは、まったく相手の名前が頭に残らない。

相手の名前を覚えられなければ、相手を呼びかけることもできない。私なら、いっぺんに自己紹介されそうなときにも、「ちょっ、ちょっと、待ってください。お一人ずつ、しっかりお名前を覚えたいので、メモを取らせてください」と上司を遮るであろう。そして、一人ずつに自己紹介をし、相手の名前を教えてもらいながら、メモをとっていくであろう。

会話に名前を加える

iStock_000064794755_Small

翌日からは、もちろん、すべての人を「名前で呼ぶ」ようにする。単純に、「おはようございます」と言われるよりも、「おはようございます、渡辺さん」といわれたほうが、相手だって嬉しいに決まっているからである。

「この書類は、どこの棚にしまえばよろしいのですか?」と質問するときにも、「吉田さん、この書類は、どこの棚ですか?」と相手の名前をちょっと挿入するようにするのである。

こうやって、職場の人の名前を覚えて、名前で呼びかけるようにすると、みなさんは早く職場になじむことができるであろう。米国アラスカ大学のクリス・クラインクの実験によると、会話をするときに、ちょこちょこと相手の名前を呼びかける人のほうが、一度も名前を呼ばない人よりも、好印象を与えることが確認されたという。

「ありがとう」ではなく、「ありがとう、佐藤さん」というように、いちいち相手の名前を挿入しながら会話をするのが、好かれるコツである。

下の人にも自分から謙虚に接する

元から職場にいる人たちからすれば、新しくやってきたみなさんは異端者以外の何者でもない。

だから、自分からどんどん話しかけ、しかも、相手の名前をたくさん呼びかけるようにするのが、新しい職場に自分を受け入れてもらうための効果的な作戦である。

たとえ高い地位や役職が与えられる職場へと転職したのだとしても、それでも自分から下の人たちに声をかけ、相手の名前を呼びかけることは重要である。

「俺のほうが、役職が上なんだから、むこうから挨拶してくるのが筋だろう」などと思ってはならない。みなさんは、元からの人たちからすれば異端者なのであるし、新参者なのである。だから、謙虚に、自分から声をかけるのが正解だ。

自分からどんどん話しかけるようにすると、元からいる人から、「なんだか、カワイイ人だな」と思ってもらえる。

ちょうど、ご主人さまが帰ってくるなり、尻尾を振りながら駆け寄ってくるワンちゃんのようなイメージを相手に与えるであろう。そういう可愛らしい人物であることをアピールしよう。これが失敗しない転職先での振る舞い方である。

今の職場で実践しよう

ちなみに、相手の名前をしっかりと覚えて、その名前をどんどん呼びかけていく、というテクニックは、別に転職した人だけに有効なのではなく、だれがやっても効果的である。

もちろん、今の職場の人たち、あるいはクライアントを相手に、このテクニックを使っていただいてもかまわない。ぜひ実践していただきたい。

【6】苦手な人とのつき合い方

晴れて転職をしたのはいいものの、転職先にどうしても自分とは肌が合わない人がいるとしよう。理由はわからないが、なぜかとても自分に対して敵対的な態度、嫌悪的な態度をむき出しにしてくるような人がいた、としよう。

このような場合、みなさんはどういう対応をとるであろうか。おそらくは、「あなたがそういう態度をとるなら、こっちだって敵対的な態度をとってやるからな!」と思うであろう。これでは、まさに売り言葉に買い言葉で、お互いの関係がギスギスしたものになりかねない。

では、自分に対して、あからさまな敵意をむき出しにしてくるような相手にはどのような対応をとるのが正しいのか。実を言うと、肌のあわない人にこそ、すり寄っていくのがよい。拒否的な対応をするのではなくて、その反対のことをするのである。ことあるごとに相手を頼りにし、相手に相談やお願いに出向こう。

フランクリン効果

BenFranklinDuplessis 2
画像出典:Wikipedia

私たちは、自分に近寄ってきてくれる人に対して、悪い感情は持ちにくいものである。かりに悪感情を持っていても、グイグイと近寄ってこられると、その悪感情が次第に弱まってきて、ついには消失してしまうのだ。「ウソだろう」と思うかもしれないが、これは本当の話なのである。心理学には、「フランクリン効果」という、よく知られた原理がある。

フランクリンとは、18世紀のアメリカの政治家ベンジャミン・フランクリンのことである。フランクリンは、名うての“人たらし”であり、植民地時代のアメリカがフランスからの援助を必要としたとき、アメリカ代表としてフランスに出向いたのもフランクリンだった。

フランクリンは、だれに対しても愛想がよく、人当たりのよさを見せたが、それでも彼のことを嫌う人はいた。しかし、フランクリンは、自分を嫌っている人間のところには、自分からどんどん近づいて、いろいろとお願いや相談をするのが常であった。

たとえば、自分に冷たい態度をとる議員がいたりすると、「あなたは大変珍しい本をお持ちだそうですが、数日だけ貸してくれませんか?」と頭を下げたりしたのである。インチキな理由をデッチあげては、どんどん相手に近づいていくのがフランクリンのやり方であった。

不思議なもので、そうやって近寄ってこられると、相手もまんざらではない気持ちになる。「本を貸してくれてありがとう」などと感謝されれば、たとえ嫌いな相手からでも、悪い気はしないものだ。

そういうやりとりが何度か続けば、「嫌い」という気持ちが減っていくばかりか、むしろ「好意」へとつながっていく。これを心理学では「フランクリン効果」と呼ぶのである。

肌が合わない人がいるのは、しかたがない。人間なのだから、どうしても虫が好かないとか、相性が悪い、ということはあるであろう。それ自体は、どうしようもないことである。

自分から近づく

iStock_000057441602_Small 2

ところが、たいていの人はそういう場合には、相手から距離をとろうとしてしまう。これではよくない。距離をとっていたら、いつまでもお互いの嫌悪感が減ることはないし、むしろ強化されてしまう。

だからこそ、「どうしてもこいつとはウマが合わないんだよな…」というときには、その相手を避けるのではなく、むしろ近づいていく口実を作るのである。

転職先であれば、書式のフォーマットが以前の会社と違うので教えてほしいとか、ランチを食べるときには、どのお店がおススメなのかを教えてほしいとか、いろいろな理由をデッチあげては、相手を頼りにするのである。そういうやりとりをくり返せば、そのうち相手のほうからにこやかに近づいてくるようになるだろう。

好意は返ってくる

Design is creativity with strategy

自分に好意を寄せて近づいてきてくれる人のことを、私たちはいつまでも嫌いであり続けることなど、できないのだ。

相手がみなさんを嫌っているからといって、こちらも拒否的な態度をとるのは大人げない。むしろ、こちらが好意を示すようにすれば、相手からも好意が返ってくるはずだ。

Career Supli
人間関係で選ぶとストレスが少ないのは間違いありません。ただし給料ある程度ないと同じくらいストレスになります。優先順位は人からで良いと思いますが、給料もある程度は意識した方が良いと思います。
[文]内藤 誼人 [編集] サムライト編集部