マルチに活躍する元格闘家「須藤元気」にみる成功するキャリアデザインの秘訣

今も記憶に残る入場パフォーマンス

元格闘家の須藤元気氏。2005年の年末K-1 PREMIUM 2005 Dynamite!!の決勝では「神の子」山本”KID”徳郁選手に対して、トリッキーな技を駆使し接戦を繰り広げました。また、入場時のダンスや衣装などのパフォーマンスにも凝ったエンターテイナーなとしての側面もあり、いつも会場を沸かせていました。

2006年、須藤氏は多くのファンに惜しまれながらも格闘技界から引退しました。格闘家の引退後は解説者、トレーナー、トレーニングジムを経営する等のキャリアが一般的ですが、須藤氏は異色です。

ダンサー、そしてプロデューサーとしてマルチに活躍

画像出典:You Tube

引退後数年後の2009年、須藤氏はスーツでロボットダンスをするダンスユニットWORLD ORDERを結成し世間をワッと言わしめました。「まさか格闘家がダンサーに?」そう思った人も多いはずです。以前から須藤氏のファンだった筆者は、また面白いことやりだしたなと思ったことをよく覚えています。

また、レスリングの監督(拓殖大学、最優秀監督賞を複数回授賞)、書道家、英会話スクールを創業したりとマルチに活躍しています。なぜ須藤氏は元格闘家の範疇に収まることなく活躍できるのか?そこには須藤氏独特のキャリアデザインの視点があります。須藤氏の著書「やりたい事をすべてやる方法」(幻冬舎文庫)を参考に、須藤氏のキャリアデザインの視点をご紹介します。

ブルーオーシャンを狙う


須藤氏のキャリアを見ていると一貫してブルーオーシャン(競争の少ない市場)を狙った選択をしていることが分かります。須藤氏は高校時代、部活のレスリングと音楽に取り組んでいました。しかし、音楽では自分よりも上手な人は山ほどいるし競争が激しすぎると思い、須藤氏は競争が少ないレスリングで勝負することにしたのです。

レスリングでフリースタイルとグレコローマンスタイルという2つの競技スタイルを選択する際にも、競技人口が少なく競争が少ないグレコローマンスタイルを選択したそうです。結果的に須藤氏は、競争が少ないグレコローマンスタイルで全日本ジュニアチャンピオンになりました。

ダンスユニットWORLD ORDERも同様にブルーオーシャンで勝負しています。ダンス業界そのものは競争が激しいですが、スーツを着て街中でロボットダンスをする日本人なんていませんでした。競争が少ないところで突出したパフォーマンスをし注目を集めることで成功しました。須藤氏はこのように語っています。

「なんであれ、はじめは自分の口で頬張れるサイズの夢を選び、そこからもっと大きな夢に広げて行くのがよいと思う。」
須藤元気(2013年) やりたい事をすべてやる方法 [Kindle版] 第1章 仕事で成功する Kindle位置番号316

この言葉にはキャリアを考える上で重要な視点が隠されています。自分が確実に活躍できる競争の少ないブルーオーシャン領域で一番を獲得し、そこで実績・経験を積んでブルーオーシャンの周辺領域にも活躍する舞台を広げていくのです。

マクロ視点で市場を俯瞰する

須藤氏はこのように語っています。

「どのジャンルの世界でも、みんな最高のコーヒーを作ることを考える「職人」タイプになろうとする。もちろんこれはとても大切なことだ。しかし、そこだけしか見ていないと、可能性は全然広がっていかない。全体的、局地的な視点を意識すると世界が広がる」
須藤元気(2013年) やりたい事をすべてやる方法 [Kindle版] 第1章 仕事で成功する Kindle位置番号144

須藤氏の格闘家時代のニックネームは「変幻自在のトリックスター」です。急に対戦相手に背中を向けた予測不能な動きやバックブロー(裏拳)などのトリッキーな動きで相手を幻惑し、強者相手に勝ち星を積み上げました。そのような動きをしたのは相手を倒すため以外にもう一つ狙いがあったようです。

当時の格闘技界では、単に強いだけでなく客をたくさん呼べる業界を盛り上げられる華のある選手に対してニーズがあると須藤氏は見ていました。そこで、須藤氏は客を呼べる選手になろうと、トリッキーな動きや入場時の派手なパフォーマンスをしたのです。

このように格闘技という市場全体をマクロ視点で分析し、どのような選手(人材)にニーズがあるのか考え、そのニーズに応える選手になるマクロ視点を持っていたことが須藤氏が格闘技界で華々しく活躍できた一つの理由です。

ターゲットをずらす

須藤氏はダンスユニットWORLD ORDERを結成しました。現在ではYoutubeでも多くの視聴回数を誇り日本のみならず海外の人にも絶賛されています。実は須藤氏がダンスユニットの結成を検討し始めた時、当初は周りの人に全く相手されなかったそうです。

そこで、須藤氏はターゲットとなる視聴者を日本人ではなく海外の人にずらし、感情を押し殺したまじめで勤勉な日本人を表現するためスーツを着てロボットのようなロボットダンスをしました。結果的にこのロボットダンスが海外で高く評価され、日本でも評価されるようになったのです。

須藤氏の姿勢から学べるのは、たとえ逆境でも自分を評価してくれる人はどこにいるのか考えてターゲットをずらすことで活躍する場を見出せるということです。

未来視点を持つこと


キャリアデザインでは未来視点を持つことが何よりも大事です。未来の自分のなりたい像をイメージし、そうなると信じて疑わないこと。須藤氏はダンスユニットWORLD ORDERを結成した際、周りからは相手をしてもらえなかったのですが、絶対に成功すると信じて疑わなかったそうです。

未来の成功を信じてダンスユニットの仲間を集めYoutubeで海外にダンスを発信し続け海外で高い評価を得ました。その結果、日本で大手レコード会社から声がかかりCD・DVDをリリース、マスコミに取り上げるまでになったのです。

未来の自分のなりたい像をイメージし、絶対にそうなれると信じて疑わないこと。キャリアデザインを成功させる最大の秘訣と言えるでしょう。

参考文献:須藤元気(2013年) やりたい事をすべてやる方法 [Kindle版] (幻冬舎文庫)
Career Supli
須藤氏の次の展開が非常に楽しみです。