アメリカの世論調査やコンサルティングを手がけるギャラップ社が開発した「ストレングスファインダー 」。これは177個の質問に回答することで、膨大なデータから抽出された34の資質の中から個人の強みの源泉となる資質トップ5を分析してくれる自己分析ツールの一つです。
34の資質一覧

自分を客観視するツールとして非常に効果の高いストレングスファインダーですが、ただ受けて強みを知るだけで終わらせている人もいると思います。
そこで今回は、ギャラップ社の認定ストレングスコーチであり、国際コーチ連盟(ICF)の資格もお持ちである齋藤綾治(さいとう りょうじ)さんにご協力いただき、仕事や転職でのストレングスファインダーの有効な活用方法について、お話を聞いてきました。
コーチをしているとクライアントの顔が上がってくる
−ストレングスファインダーのコーチをしていて感じる、このツールを使うことの意味はどこにあると思いますか?
齋藤:「客観的な視点から、自分の強みを知ることができる」に尽きますね。いわゆる「自己分析」というのは、自己流で、主観に基づいてやっている人が多いと思います。
一方でストレングスファインダーを使った自己分析は、ギャラップ社が長年に渡る調査を通じて集めた膨大なデータに基づいています。だからより納得感のある分析結果が出せます。
実際、コーチをしているとクライアントの顔が上がってくるのをたびたび目にします。「自分にはこんな強みがあったんだ」「この強みを活かせば、もっとラクに成果が出せるんだ」という希望が自然と顔を前にむかせるんでしょうね。
多くの人は自分の強みを客観視できていません。なぜなら強みというのは、呼吸のようなもので、意識しなくてもできることだからです。例えばストレングスファインダーが分析した僕の資質トップ5には「収集心」があります。
これは好奇心が旺盛で物や情報を集めることを楽しめたり、集めた情報をストックしたりできる資質ですが、「自分にそんな性質、あったかな?」という感じで、正直最初はピンと来ませんでした。
でもストレングスファインダーを受けたあとに、自分のいままでの仕事や私生活を振り返ってみると、思い当たる節がたくさんありました。当たり前すぎて気づけなかったんです。
日本人の特徴かもしれませんが、私のクライアント様にも自己肯定感の低い人は少なくありません。そういう人たちにとって、ストレングスファインダーは自己肯定感を高める意味でも効果的なツールだと思います。
単なる性格診断で終わらせない「使い方」
−でも逆に落ち込む人もいるんじゃないですか?
齋藤:そうですね。「自分にはこういう資質がないんだ」と落ち込む人はいますし、考えることや自分自身との対話が得意な「内省」という資質に長けているのに、「だから自分はうじうじと考え込んでしまうのか」と欠点として見てしまう人もいます。
これはいずれにしても、もったいないことです。第一に、ないものにこだわる必要はありません。例えば「慎重さ」の資質がなかったからと言って、どう頑張ってもミスのない仕事ができないという話にはなりません。
例えば慎重さが上位にない一方で、いまある人間関係を大切に深めようとする「親密性」の資質さに長けているのなら、自分のミスをカバーできる人に仕事のチェックを頼むようなやり方も考えられます。
ストレングスファインダーは「自分の良いところ、ダメなところがわかる性格診断」などではなくて、求める結果に対して自分がどんな武器を持っていて、どう戦うべきかを示してくれるツールです。だからないものにこだわって落ち込む必要はなくて、ある武器で戦えばいいんです。
第二に、もし自分の強みが現状はむしろマイナス面に働いてしまっているのであれば、使い方を正してやればいいだけのことです。
一般に「過去」「他人の感情」「規模の大きすぎる問題」は考えても仕方がない場合が多いですが、そこに内省の力を向けてしまっているのであれば、より建設的な問題に思考を向けるようにすればいいんです。
ストレングスファインダーでわかる資質の順位は、その人が持つパワーの順位です。トップ5の資質に関しては、パワーが常に溢れかえっている状態です。
スターウォーズで例えるなら、あなたの中にフォースがあるイメージです。建設的に使えば世のため人のため、自分のためにも大きなパワーになりますが、ダークサイドに陥ってしまったら大変なことになる。溢れかえる自分のパワーをどう使うかが大事なんですよ。
資質×エピソードで説得力のある自己PRを
−そういう考え方って、転職を検討するときにも役立ちそうですよね。
齋藤:そうですね。例えば「活発性」は、人を巻き込みながら次々に新しいことをスタートさせていくことに長けた資質です。これを前提としてキャリアを振り返ってみると、きっと新規プロジェクトの立ち上げであったり、チーム内での新しいアクションの実践であったり、自分の資質と相性の良かった実績や記憶が見つかるはずです。
そこまできたら「ストレングスファインダーで『活発性』がトップ5に入っているので、前職ではこのような場面で自分の強みを発揮していました」と、自己PRに役立てることができます。
資質の内容について簡単に説明する必要はあると思いますが、資質とエピソードを組み合わせて説明されたら、採用側の納得感が高まるでしょう。
−「この資質にはこの仕事が向いてる!」みたいなこともあるんでしょうか?
齋藤:うーん……実はストレングスファインダーの資質と職業が直接的にリンクするわけじゃないんですよ。このツールでわかる資質というのは、その人と仕事との相性というよりも、与えられた状況の中で、どうやって自分らしく成果を出していくか、自分なりの得意なやり方を見つけていくツールなんです。
だから「こういう資質の人は弁護士になってください!」みたいな言い方はできません。たださっきいったパワーをどこに向ければ成果につながりやすいのかという「方向性」を決めるときの指針にはなると思います。
―方向性ですか?
齋藤:はい。例えば「達成欲」や「責任感」といった実行系に分類される資質(資質一覧表01〜09)は、「一人でもやりきる資質」です。自分に任せてもらった方が生き生きとしますし、発生した問題も放り出すことなく、自分で解決していくことができるんですよ。
だからこういう人は、個人にある程度裁量権が与えられるような仕事の方が、自分の資質を発揮しやすいわけです。
あるいは「共感性」や「調和性」といった人間関係系に属する資質(資質一覧表18〜26)を持っているということは、人と支えあったり、人を助けたり、チームで何かをやることに長けているということです。
なので、この人はチームでの仕事が評価されるような職場の方が向いているという言い方ができます。
■自分の武器を知るために活用して欲しい

−最後に、まだストレングスファインダーを使っていない人に向けて、メッセージをお願いします。
齋藤:ストレングスファインダーでわかる資質トップ5が他の人と全く同じ結果になる確率は、3,300万分の1とされています。それだけ人には一人一人に強みと違いがあって、そのバランスのうえで組織や社会が成り立っているってことです。
これがわかるだけでも、自分の武器をどう活かすか考えるきっかけにもなるし、周囲の人との接し方も変わると思うんです。
それにいまは個人が情報を発信できる時代です。だからストレングスファインダーで見出した自分の武器をSNSなどで発信すれば、誰かにきっと届きます。
それは新しい人間関係につながるかもしれないし、自分が好きだったり得意だったりする仕事を得ることもできるかもしれません。
だからストレングスファインダーはこれからますます役立つツールになると考えています。34の資質の中にはもしかしたら「これってどういう資質?」みたいなものもあると思うんですけど、そういうときはストレングスコーチに頼ってくれれば嬉しいですね。
そういう疑問に答えて、仕事や生活の中でどう使っていくかを説明するのが私みたいなコーチの仕事ですから。
−多くの人に活用してしてもらえるといいですね!今日はありがとうございました。
